<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?><rss version="2.0"
	xmlns:content="http://purl.org/rss/1.0/modules/content/"
	xmlns:wfw="http://wellformedweb.org/CommentAPI/"
	xmlns:dc="http://purl.org/dc/elements/1.1/"
	xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom"
	xmlns:sy="http://purl.org/rss/1.0/modules/syndication/"
	xmlns:slash="http://purl.org/rss/1.0/modules/slash/"
	>

<channel>
	<title>ホラー - -創発領域-</title>
	<atom:link href="https://ken1shiki.com/category/stories/%E3%83%9B%E3%83%A9%E3%83%BC/feed/" rel="self" type="application/rss+xml" />
	<link>https://ken1shiki.com</link>
	<description>Life&#039;s but a walking shadow...</description>
	<lastBuildDate>Wed, 16 Feb 2022 07:42:50 +0000</lastBuildDate>
	<language>ja</language>
	<sy:updatePeriod>
	hourly	</sy:updatePeriod>
	<sy:updateFrequency>
	1	</sy:updateFrequency>
	<generator>https://wordpress.org/?v=6.9.4</generator>

<image>
	<url>https://i0.wp.com/ken1shiki.com/wp-content/uploads/2021/12/icon-1.png?fit=32%2C32&#038;ssl=1</url>
	<title>ホラー - -創発領域-</title>
	<link>https://ken1shiki.com</link>
	<width>32</width>
	<height>32</height>
</image> 
<site xmlns="com-wordpress:feed-additions:1">200696190</site>	<item>
		<title>濡レ雑巾ノマス秤　第肆話</title>
		<link>https://ken1shiki.com/mimitoya-07-04/?utm_source=rss&#038;utm_medium=rss&#038;utm_campaign=mimitoya-07-04</link>
					<comments>https://ken1shiki.com/mimitoya-07-04/#respond</comments>
		
		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 16 Feb 2022 07:40:51 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[美味兎屋・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://ken1shiki.com/?p=2019</guid>

					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0承前 「悔しいか？」 　男は目を細め、口を歪めた。 「悔しいだろうな。枠組みだけは一人前、そのくせ中身は風船のような自尊心が突付（つつ）かれたのだからな」 　赤い布は、くぅん、と鳴いた。顔無しのマネキンの肩 [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-07-04/">濡レ雑巾ノマス秤　第肆話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="2019" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<p><strong><a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-07-03/" title="承前">承前</a></strong></p>



<p>「悔しいか？」</p>



<p>　男は目を細め、口を歪めた。</p>



<p>「悔しいだろうな。枠組みだけは一人前、そのくせ中身は風船のような自尊心が<ruby data-rt="つつ">突付<rp>（</rp><rt>つつ</rt><rp>）</rp></ruby>かれたのだからな」</p>



<p>　赤い布は、くぅん、と鳴いた。顔無しのマネキンの肩が、クルンと痙攣した気がした。</p>



<p>「根拠のない自己評価だけを標榜して、皆はそれを認めろと叫び。しかしながら、何故他人がそれを首肯しないのか、追及することさえしない――そもそもできない。自分の頭で考えない。考えられない。それがお前の頭の中に詰まっているのは、思考回路に見せかけた単なる条件反射だけだ。そら、お前は差し詰め、そこの頭の開いた人形のようなモノだ」</p>



<p>　がたり。</p>



<p>　別の大きな人形が倒れた。開いた頭の中には、何本かのカラフルなコードが乱雑に詰め込まれていた。</p>



<p>「お前は自分の姿を鏡で見られるか？　自分の顔を直視できるのか？　もしかしたら、お前の顔はそこのマネキンのようなものかもしれないぞ？」</p>



<p>　顔ナシの――焼けた顔の――マネキンがこっちをじっと見ていた。窪んだ眼窩の奥に、この男と同じ深い淵のようなものを見た気がした。ただの人形とは、到底思えない。もはや奥歯が鳴るのを止められない。</p>



<p>「そんな程度のお前の姿など、誰が直視しようとするなんて思っている。お前の独り<ruby data-rt="よ">善<rp>（</rp><rt>よ</rt><rp>）</rp></ruby>がりな演説などに、誰が耳を貸すものか。実のない武勇伝――傍から見ればたかだかほんのちっぽけな武勇伝ほど聞く価値のないものはないだろうし、お前だってそう言ってきたはずだ」</p>



<p>　指から力が抜けた。コンビニの袋が床に落ちた。びしゃりと音がした。</p>



<p>　びしゃり？</p>



<p>　ペットボトルが割れたのか？</p>



<p>　私は恐る恐る足元を見た。</p>



<p>　お茶はペットボトルの中でじっとしていた。ペットボトルは床の上をごろごろと行ったり来たりしていた。半透明のビニール袋から、透明な液体が流れていた。私の右手の指先から、ぽとりぽとりと水滴が落ちていく。それは足元に大きな水溜りを作っていた。その中に、部屋の明かりと私の姿がぼんやりと浮かんでいる。</p>



<p>「お前は結局、他人から評価されていないと妄想し、そのくせ他人を評価しようとも、自己の再評価をしようともしなかった。今現在の自分のテイタラクを社会や他人のせいにするばかりで、そこから這い上がろうとさえしなかった。口先でそれらを相対的に<ruby data-rt="おとし">貶<rp>（</rp><rt>おとし</rt><rp>）</rp></ruby>めようという<ruby data-rt="ひろう">卑陋<rp>（</rp><rt>ひろう</rt><rp>）</rp></ruby>な努力はしていたようだがな」</p>



<p>　私の指先から、とめどなく液体が流れ落ちていく。</p>



<p>「一つ教えてやろうじゃないか」</p>



<p>　男は私の足元を見ながら脚を組み替えた。</p>



<p>「世界は何も間違えてはいない。社会も他人も。そこでお前が認められないのは、彼らが間違えているからじゃない。お前が所詮はその程度でしかないということの実証だ。お前の存在など、そんなものに過ぎない」</p>



<p>　ぴちょん、ぴちょん、とイヤに甲高い音が部屋に反響している。視界の端で、赤い布が飛び跳ねていた。もぞもぞと軽快に、私の足元に這って来る。赤い布が私の足元の水に浸る。水が赤く染まっていく。そこに映る私もまた赤黒くなっていく。</p>



<p>　ぽたり、ぴたん、という音と共に水面が揺れ、私の赤黒い姿もゆらゆらと歪む。</p>



<p>「上と下と、どっちが本当のお前に近いのかな？」</p>



<p>　男は立ち上がり、動けないでいる私の隣に立った。</p>



<p>「自分らしくありたいと叫ぶのならそうすればいい。だがな」</p>



<p>　沈黙。</p>



<p>　水が爆ぜる音と、濡れた雑巾が弾んでいるような音が響き渡っている中で。</p>



<p>「お前には、世界がお前に合わせなければならないほどの価値はないのだ」</p>



<p>　残念だったな――。</p>



<p>　男はそう言うと、部屋から出て行った。</p>



<p>　私は紅く染まった空間の中で、まるで人形のように固まっていた。</p>



<p>　右足に、布がもぞりとじゃれついた。</p>



<p class="has-text-align-center"><strong>濡レ雑巾ノマス秤・完</strong></p>



<p class="has-text-align-center"><strong>次話</strong></p>
<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="2019" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button><p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-07-04/">濡レ雑巾ノマス秤　第肆話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></content:encoded>
					
					<wfw:commentRss>https://ken1shiki.com/mimitoya-07-04/feed/</wfw:commentRss>
			<slash:comments>0</slash:comments>
		
		
		<post-id xmlns="com-wordpress:feed-additions:1">2019</post-id>	</item>
		<item>
		<title>濡レ雑巾ノマス秤　第参話</title>
		<link>https://ken1shiki.com/mimitoya-07-03/?utm_source=rss&#038;utm_medium=rss&#038;utm_campaign=mimitoya-07-03</link>
					<comments>https://ken1shiki.com/mimitoya-07-03/#respond</comments>
		
		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Tue, 15 Feb 2022 08:04:27 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[美味兎屋・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://ken1shiki.com/?p=1998</guid>

					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 承前 　人間の一部――！？ 　ゾクッとした。背筋が粟立った。そんな私を見ている男は、退屈そうに眼を細める。 「別に有機体ではない。死体ではない。お前たちの定義に拠ればな」 　そして、面白くなさそうに言った [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-07-03/">濡レ雑巾ノマス秤　第参話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1998" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<p><a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-07-02/"><strong>承前</strong></a></p>



<p>　人間の一部――！？</p>



<p>　ゾクッとした。背筋が粟立った。そんな私を見ている男は、退屈そうに眼を細める。</p>



<p>「別に有機体ではない。死体ではない。お前たちの定義に拠ればな」</p>



<p>　そして、面白くなさそうに言った。私は膝が硬直している事に気がついた。</p>



<p>「それで、随分と不満たらたらな様子だったが、お前はいったい何に対してそんなに不満なんだ」</p>



<p>　男の目が私を直視する。</p>



<p>「当ててやろうか」</p>



<p>　私は目を逸らした。</p>



<p>「自分が<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">正</span><span class="boten">当</span><span class="boten">に</span></span>評価されてない。これだろう？」<br>「な……」</p>



<p>　まるで心を読まれたかのような気がした。総毛立つとは、まさにこのことか。</p>



<p>「自分はこんなに一所懸命に仕事をし、汗水たらして何年もこの業界に身をおき、経験も実績もそれなりにあるのに。それなのになぜ、大学を出て数年の奴らの方が評価されて、ましてや自分を追い越していくんだ。これでは自分はただの当て馬じゃないか。自分は踏み台にされたくないし、踏み台以上の仕事は少なくともしているつもりだ――というのが、お前の主張だ。違うか」</p>



<p>　思わずあとずさ――れなかった。足が竦んでいた。</p>



<p>「学歴なんて関係ない」</p>



<p>　男は立ち上がった。そして傍に置いてあった分厚い本を手に取った。が、すぐに置いた。手に取ることだけが目的だったかのようだ。</p>



<p>「そんな言葉を<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">真</span><span class="boten">に</span><span class="boten">受</span><span class="boten">け</span><span class="boten">て</span></span>いるんじゃないだろうな」</p>



<p>　私は奥歯の震えをこらえた。</p>



<p>「そんな文字列はな、上位の連中が下位の連中に言うことを聞かせるために吐き出す稚拙な<ruby data-rt="ソフィストリ">詭弁<rp>（</rp><rt>ソフィストリ</rt><rp>）</rp></ruby>だ。そして、下位の連中が上位の連中を<ruby data-rt="おとし">貶<rp>（</rp><rt>おとし</rt><rp>）</rp></ruby>めるために用いたがる姑息な洗脳工作だ。民主主義を構成する<ruby data-rt="マジョリティ">多数派<rp>（</rp><rt>マジョリティ</rt><rp>）</rp></ruby>というのは、概して下位に属するからな。蠢く亡者のごとし、だ。そんな屑ほども価値のない亡者であっても、ぐちゃぐちゃと寄り集まって大声でがなり立てれば、それは効果があるだろうよ。<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">こ</span><span class="boten">こ</span></span>は幸いにも<ruby data-rt="みんしゅてき">多数決<rp>（</rp><rt>みんしゅてき</rt><rp>）</rp></ruby>社会だからな。バカほど声が大きいし、<ruby data-rt="いせいしゃ">為政者<rp>（</rp><rt>いせいしゃ</rt><rp>）</rp></ruby>たちには大きな声しか聞こえない」</p>



<p>　だがな、と男は続ける。</p>



<p>「学歴云々の本当の意味は、上位から下位への工作手段だ。とりあえず自分たちを下位の連中と同列にいると錯覚させておけば、圧倒的多数のバカな連中はおとなしくなる。下位の連中が押しなべてバカというわけではないが、バカが多数を占めているのはバカにでもわかることだろう？　上位の連中にしてみれば、幸いにしてここは多数決の社会だからな。バカさえ黙らせておけばそれ以外の多数派の中の少数派などどうとでもなるし、何なら無視したって構いはしないのだ。もっとも、この学歴なんて関係ない――こういった表現には彼らの優越感の顕示という意味も含まれているのだがな」</p>



<p>　男は何やら怪しげな形のグラスを手に取ると、ソファの横に置かれていたボトルを手に取った。ワインだろうか。</p>



<p>「そんなことにさえ気づかずに、そんな<ruby data-rt="ソフィストリ">詭弁<rp>（</rp><rt>ソフィストリ</rt><rp>）</rp></ruby>を<ruby data-rt="ま">真<rp>（</rp><rt>ま</rt><rp>）</rp></ruby>に受けていたのだとすれば、それはお前の知恵が足りていないとしか言えないだろう。評価されないのは実に、実によく分かる。お前は多数派の中の多数派、つまり、バカだ」</p>



<p>　それに、と男は液体をグラスに注いだ。琥珀色の液体にも見えたが、単なる水のようにも思えた。色は周囲の品々の反射でよくわからないのだ。</p>



<p>「学歴云々が評価にどうこうなど、お前の自意識過剰には恐れ入る」</p>



<p>　どういうことだろう。</p>



<p>「お前の言うところの評価されている連中が、お前のようなその他大勢の履歴書に興味があるわけがないだろう。お前のちっぽけな経歴ごときなんざ、五分以内に記憶から追い出されるだろうさ。それとも何か、お前は会社で自分の学歴を掲げて回ってでもいるのか？」</p>



<p>　辛辣だった。頭に血が上りかけたが、それだけだった。</p>



<p>「お前と彼らでは根本が違う。お前が呑気に遊んでいた時に、彼らは少なからず勉強し、努力し、耐えていた。人間性の追いつかないヤツがいることは否定しないが、考え方、いや世界が違う。彼らの大部分は、お前なんかとは違う次元で物を考えている」</p>



<p>　男の眼鏡の奥の視線が鋭くなった。</p>



<p>「お前のようにその時その時の苦労を避けられるだけ避け、いい年になってそれが出来なくなったら途端に全てを現在形に<ruby data-rt="コンバージェンス">収束<rp>（</rp><rt>コンバージェンス</rt><rp>）</rp></ruby>させたがるヤツが大勢いる。<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">現</span><span class="boten">在</span><span class="boten">完</span><span class="boten">了</span></span>にするだけに足る過去を持っていないから、そんなことをそうするのは簡単だからな。だから彼らは言うのさ。学歴なんて関係ないとね」<br>「それだって、今はこんなに努力しているじゃないか」<br>「結果も出しているか？　少なくとも周囲に満足されているような結果ではないだろう。お前は自分の出しているその<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">結</span><span class="boten">果</span></span>とやらを及第点だと思っているかもしれんが、それはお前の生ぬるい自己評価基準の賜物に過ぎんよ」</p>



<p>　掌に汗が浮かんでいた。右手のコンビニの袋がイヤに重く感じられた。</p>



<p>　男はもぞもぞ動くどことなく湿った感じの赤い布を手に取った。それは、にゃぁ、と鳴いた。ゾッとした。ひどく、ゾッとした。</p>



<p class="has-text-align-center"><strong><a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-07-04/">次話</a></strong></p>
<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1998" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button><p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-07-03/">濡レ雑巾ノマス秤　第参話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></content:encoded>
					
					<wfw:commentRss>https://ken1shiki.com/mimitoya-07-03/feed/</wfw:commentRss>
			<slash:comments>0</slash:comments>
		
		
		<post-id xmlns="com-wordpress:feed-additions:1">1998</post-id>	</item>
		<item>
		<title>濡レ雑巾ノマス秤　第弐話</title>
		<link>https://ken1shiki.com/mimitoya-07-02/?utm_source=rss&#038;utm_medium=rss&#038;utm_campaign=mimitoya-07-02</link>
					<comments>https://ken1shiki.com/mimitoya-07-02/#respond</comments>
		
		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 14 Feb 2022 14:02:34 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[美味兎屋・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://ken1shiki.com/?p=1988</guid>

					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 承前 　男は私を誘い入れようとしたが、こんな時間に見知らぬ男の家にホイホイと入ってしまえるほど、私は判断力の低い人間ではない。 「いや、こんな夜中に」「夜中だから何かあるのか？」 　まさかの問いかけだ。私 [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-07-02/">濡レ雑巾ノマス秤　第弐話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1988" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<p><a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-07-01/"><strong>承前</strong></a></p>



<p>　男は私を誘い入れようとしたが、こんな時間に見知らぬ男の家にホイホイと入ってしまえるほど、私は判断力の低い人間ではない。</p>



<p>「いや、こんな夜中に」<br>「夜中だから何かあるのか？」</p>



<p>　まさかの問いかけだ。私は答えに窮する。男は私の方へ一歩近付きつつ、淡々と言い募る。</p>



<p>「お前は夜中にここにいた。そして人の家を覗いていた。俺はここでお前を見つけた。そしてこれらは全て夜中に起きたことだ」</p>



<p>　変な男だ――今の時点の率直な感想だ。</p>



<p>　私は結局、男の迫力に押されるように、その立方体の中に入った。恫喝されたわけでもないというのに、なぜか入ってしまっていた。</p>



<p>　その立方体の中は、外観で受けた印象よりも随分と広かった。思ったより奥行きがあったのかもしれない。しかし、置いてあるものはまさに<ruby data-rt="カオス">混沌<rp>（</rp><rt>カオス</rt><rp>）</rp></ruby>だった。全く脈絡のない品々が、一切の脈絡もなく配置されている。一見するとアンティークショップのように見えたが、二秒もしないうちにコンビニのようにも見えてくる。かと思えば子ども用品売り場のようだし、掃除道具置き場であるようにも思えてくる。</p>



<p>「<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">こ</span><span class="boten">こ</span></span>は<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">何</span></span>なんだ……？」</p>



<p>　当然のように私は問うた。男は間髪を入れずに応える。</p>



<p>「<ruby data-rt="ソフィスト">哲学者<rp>（</rp><rt>ソフィスト</rt><rp>）</rp></ruby>だな」</p>



<p>　一番奥のソファにどっかりと腰を下ろした男は、脚を組み、頬杖をつきながら私を見上げていた。私が座れそうな椅子はなかったし、男にもそんな気遣いはなさそうだった。これではまるで何かの裁判のようだ。</p>



<p>「<ruby data-rt="ソフィスト">哲学者<rp>（</rp><rt>ソフィスト</rt><rp>）</rp></ruby> とか……意味が分からない。そもそもだ、ここは何の店なんだ」</p>



<p>　私の問いに、男は小さく首を傾げる。その芝居がかった動作に、私はイラついた。だが、私には、この感情を表には出せなかった。</p>



<p>　立ち尽くす私に、男はおちょくるような口調で言った。</p>



<p>「店？　店か。――店かもしれんな」<br>「だから何の」<br>「<ruby data-rt="ソフィスト">哲学者<rp>（</rp><rt>ソフィスト</rt><rp>）</rp></ruby> だな」</p>



<p>　ますますイライラする。この男は何をしたいのだ。何を言いたいのだ。私にはさっぱり理解できない。</p>



<p>　私は目についた品を指さした。</p>



<p>「例えばそこの不気味な顔無しのマネキンとか、あそこのモゾモゾしてる布きれとか」<br>「ああ、あれか」</p>



<p>　男は眼鏡の位置を直した。</p>



<p>「あれはお前たち<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">人</span><span class="boten">間</span><span class="boten">の</span><span class="boten">一</span><span class="boten">部</span></span>だ」</p>



<p>　男は全く平坦なトーンでそう言ってのけた。</p>



<p class="has-text-align-center"><strong><a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-07-03/">次話</a></strong></p>
<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1988" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button><p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-07-02/">濡レ雑巾ノマス秤　第弐話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></content:encoded>
					
					<wfw:commentRss>https://ken1shiki.com/mimitoya-07-02/feed/</wfw:commentRss>
			<slash:comments>0</slash:comments>
		
		
		<post-id xmlns="com-wordpress:feed-additions:1">1988</post-id>	</item>
		<item>
		<title>濡レ雑巾ノマス秤　第壱話</title>
		<link>https://ken1shiki.com/mimitoya-07-01/?utm_source=rss&#038;utm_medium=rss&#038;utm_campaign=mimitoya-07-01</link>
					<comments>https://ken1shiki.com/mimitoya-07-01/#respond</comments>
		
		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 13 Feb 2022 02:08:28 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[美味兎屋・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://ken1shiki.com/?p=1974</guid>

					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　また深夜残業だよ。月の半分以上は終電を逃がす。 　いい加減うんざりだ。世の中は不景気だ。ボーナスだって貰えない。そのくせ公務員様は、普通の企業の三倍も四倍ももらっていやがる。赤字を抱えたって誰一人クビに [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-07-01/">濡レ雑巾ノマス秤　第壱話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1974" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<p>　また深夜残業だよ。月の半分以上は終電を逃がす。</p>



<p>　いい加減うんざりだ。世の中は不景気だ。ボーナスだって貰えない。そのくせ公務員様は、普通の企業の三倍も四倍ももらっていやがる。赤字を抱えたって誰一人クビにならないし、我々庶民に何を言われたって下っ端は無視するわけだし、上の連中はそれこそ神様気取りで<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">公</span><span class="boten">務</span><span class="boten">員</span><span class="boten">様</span></span>の椅子にふんぞりかえっている。</p>



<p>　一方で私たちは、どんなに頑張ったって評価されない。言葉で何と言われようと給料は上がらない、ボーナスは貰えない。そのくせ、意味のわからない人事で他の連中は昇進していく。私より五年も遅く入社したチャラ男が、いまや上司だ。私は毎日遅くまで仕事してるのに、<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">課</span><span class="boten">長</span><span class="boten">様</span></span>のあいつは定時でいなくなる。炎天下の中這い回るように営業したって、この不景気じゃ契約なんて取れやしない。そのくせあの課長様は成績が悪いと突き上げては、あてつけのように大口の契約を取ってくる。コネがあるからできるのだ、そんなこと。</p>



<p>　窓の外を足早に遠ざかっていく夜景を眺めつつ、ラブホテルの横を通り過ぎながら、私は溜息をつく。あの中では<ruby data-rt="のんき">暢気<rp>（</rp><rt>のんき</rt><rp>）</rp></ruby>にイチャついてる奴らがいるんだろうな。このご時世に本当に危機感のない奴らだ。</p>



<p>「あ、そこのコンビニで止めてくれ」</p>



<p>　<ruby data-rt="うやうや">恭<rp>（</rp><rt>うやうや</rt><rp>）</rp></ruby>しく差し出された二十円のお釣りを無言で受け取って、私はコンビニに入る。成人誌を立ち読みしているガキが目障りだった。んなもん、買って家で読めよ。舌打ちでもしてやりたい気分だったが、物騒なこの世の中だ。そんな事をして絡まれても面倒だ。無関心を装うのが一番賢い。君子危うきになんとやら、だ。</p>



<p>　特に買いたいものなどなかったのだが、いつの間にかペットボトルのお茶を手に取っていた。どうせ帰ったらすぐに寝るのに。</p>



<p>　こうして無駄遣いが増えるんだよなぁ。</p>



<p>　無愛想な店員に無愛想に応じて、私は今度こそ家へと向かう。</p>



<p>　どうせ誰も待っていない真っ暗に冷めた家だ。敷きっぱなしの布団だけが道具本来の役割を果している。冷蔵庫さえ、まともに使っちゃいない。</p>



<p>　歯を磨くのもだるいなぁと思いながら歩いていると、いつもの帰り道に阿呆なガキどもがたむろしているのが見えた。勉強もしないでチャラチャラ遊んでいる阿呆だ。高校さえ卒業できないか、していないだろう。いや、あんな高卒がいたらいたで迷惑だ。実際に今もそれで迷惑を被っている。</p>



<p>　私は高卒だ。大学は経済的事情で諦めた。社会経験は長い。長いのに、高卒であるというだけで昇進さえできない。社会も会社も、学歴なんて関係ないとはよく言う。しかし、だったらこの差別待遇は何だ。たいした能力もない大卒の連中の方が、明らかに優遇されているじゃないか。</p>



<p>　私はそんなことを考えながら、仕方なく別の道を通ることにした。あんなのに絡んで刺されでもしたら死にきれない。</p>



<p>　一本違う通りに出ると、なんだか違和感を覚えた。視界の隅に立方体の建物が見えた。どこか薄汚れた印象の玄関フードの中に、赤い看板のようなものが立てかけられている。神経質に明滅する玄関燈が、赤い看板をじれったく照らしている。</p>



<p>　通りを渡って近付いてみると、黒々と踊る『美味兎屋』という四文字が見えた。</p>



<p>「びみ……うさぎや？」<br>「ミミトヤだ」</p>



<p>　突如耳元で聞えた男の声に、私は飛び上がらんばかりに驚いた。心拍数が数倍に跳ね上がったかのようだ。</p>



<p>「なんだ、あんた、いつのまに」<br>「WHAT、WHO、WHEN、お前、どれから訊きたい」</p>



<p>　痩身で背の高い、眼鏡をかけた男が私の真後ろに立っていた。男はこんな夜中に何故か白衣を着ていた。手には何も持っておらず、コンビニ帰りというわけでもなさそうである。かといってこのあたりに何らかの研究機関のようなものがあるはずもなく……。</p>



<p>「ど、どれでもいい。こんな夜中に驚かすな」<br>「他人の<ruby data-rt="ドメイン">領域<rp>（</rp><rt>ドメイン</rt><rp>）</rp></ruby>をじろじろと覗き込んでおいてよく言う」</p>



<p>　男は無表情に言った。ここは……こいつの家なのか。奇妙で不気味な立方体。</p>



<p>「まぁいい。興味があるなら入れ」</p>



<p>　男は全くトーンを変えずに、半ば強制的な口調でそう言った。</p>



<p class="has-text-align-center"><strong><a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-07-02/">次話</a></strong></p>
<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1974" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button><p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-07-01/">濡レ雑巾ノマス秤　第壱話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></content:encoded>
					
					<wfw:commentRss>https://ken1shiki.com/mimitoya-07-01/feed/</wfw:commentRss>
			<slash:comments>0</slash:comments>
		
		
		<post-id xmlns="com-wordpress:feed-additions:1">1974</post-id>	</item>
		<item>
		<title>匣カラ出タ星　第参話</title>
		<link>https://ken1shiki.com/mimitoya-06-03/?utm_source=rss&#038;utm_medium=rss&#038;utm_campaign=mimitoya-06-03</link>
					<comments>https://ken1shiki.com/mimitoya-06-03/#respond</comments>
		
		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Fri, 04 Feb 2022 08:15:40 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[美味兎屋・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://ken1shiki.com/?p=1852</guid>

					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 承前 　中は思った以上に広かったが、雑然ともしていた。所狭しと様々なジャンルの物体が並んでいる。アンティーク、電気製品（電卓から洗濯機まで！）、文房具に絆創膏、妙にリアルな人形から某社のマスコットたちまで [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-06-03/">匣カラ出タ星　第参話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1852" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<p><strong><a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-06-02/">承前</a></strong></p>



<p>　中は思った以上に広かったが、雑然ともしていた。所狭しと様々なジャンルの物体が並んでいる。アンティーク、電気製品（電卓から洗濯機まで！）、文房具に絆創膏、妙にリアルな人形から某社のマスコットたちまで。しかし、どれにも言える事だが、可愛いとか綺麗とか、そういう印象は微塵もない。どこかセピアがかったような、いや、というよりむしろ埃っぽいような。まるで廃墟となった美術館にでも迷い込んだかのようだった。一言でいえば、気味が悪い。</p>



<p>　娘はと言えば、文鳥の<ruby data-rt="なきがら">亡骸<rp>（</rp><rt>なきがら</rt><rp>）</rp></ruby>の入った<ruby data-rt="はこ">匣<rp>（</rp><rt>はこ</rt><rp>）</rp></ruby>を大事に抱えたまま、興味津々で品々を見ていた。この空間を不気味とも感じてしまうのは、大人の汚れた視界のせいなのかもしれない。娘を見ていてそう思った。</p>



<p>　白衣の男は、部屋の奥にあるソファにどっかりと腰をおろし、これ見よがしに長い足を組んでいた。男は退屈そうに私たちを眺めており、なんとなく居心地が悪い。</p>



<p>「ここは……いったいどういう店なんだ」<br>「ミミトヤだ」<br>「ん？」</p>



<p>　意味がわからない、と言おうとして気がついた。入り口にあった看板にあったのは『美味兎屋』という文字だ。</p>



<p>「そう、それでミミトヤだ」<br>「はぁ……」</p>



<p>　あ、いや、そうじゃない。それを<ruby data-rt="き">訊<rp>（</rp><rt>き</rt><rp>）</rp></ruby>きたかったわけじゃなくて。</p>



<p>「そうだな、そう。ここは何でも屋、雑貨屋だ。……商売するつもりなんてないがな」</p>



<p>　それでどうやって生活してるんだろう。</p>



<p>　現実的な疑問が湧いてくる。</p>



<p>「おじさん、どうぶつはいないの？」<br>「ペットショップじゃないからな」</p>



<p>　男は答え、娘の手の<ruby data-rt="はこ">匣<rp>（</rp><rt>はこ</rt><rp>）</rp></ruby>に視線をやった。</p>



<p>「それは、お前の<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">動</span><span class="boten">物</span></span>か？」<br>「……きょうね、おそらにかえるの」</p>



<p>　娘は<ruby data-rt="はこ">匣<rp>（</rp><rt>はこ</rt><rp>）</rp></ruby>を大事そうに抱えなおし、私を見上げた。私は頷く。</p>



<p>　ところが、男はこんなことを口走った。</p>



<p>「<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">そ</span><span class="boten">れ</span><span class="boten">は</span><span class="boten">よ</span><span class="boten">か</span><span class="boten">っ</span><span class="boten">た</span></span>」</p>



<p>　よかった？</p>



<p>　その言葉に、私は微かに怒りを覚えた。娘はあれだけ泣いたのだ。あんなに悲しんだのに、それを<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">よ</span><span class="boten">か</span><span class="boten">っ</span><span class="boten">た</span></span>だって？</p>



<p>　しかし、「うん」と娘は頷いていた。私は驚いて視線を二人の間で行き来させた。</p>



<p>「小鳥だろう」<br>「うん」</p>



<p>　娘は早足で男に近付いた。そして、大事そうにそっと<ruby data-rt="はこ">匣<rp>（</rp><rt>はこ</rt><rp>）</rp></ruby>の蓋を開けた。ティシュペーパーの布団の上に、桜文鳥が眠っていた。<ruby data-rt="はこ">匣<rp>（</rp><rt>はこ</rt><rp>）</rp></ruby>とティシュの隙間に、娘が書いた絵手紙が挟まっている。男はその<ruby data-rt="はこ">匣<rp>（</rp><rt>はこ</rt><rp>）</rp></ruby>と中のものを<ruby data-rt="ひとしき">一頻<rp>（</rp><rt>ひとしき</rt><rp>）</rp></ruby>り眺めてから、満足げに頷いた。</p>



<p>「この子は、やっと飛ぶための羽を手に入れた、ということだ」<br>「うん……でも、おじさん」</p>



<p>　二人のやり取りを聞いている私は棒立ちだ。</p>



<p>「この子は、かなしくなかったのかな」</p>



<p>　そう言う娘は、また哀しくなったのか、前触れもなくぽろぽろと泣き出した。白衣の男は動揺を微塵も見せずに、<ruby data-rt="はこ">匣<rp>（</rp><rt>はこ</rt><rp>）</rp></ruby>を手に持ったまま、ソファに座りなおした。</p>



<p>「お前はこの子にどう生きていて欲しかったんだ」<br>「あのね」</p>



<p>　娘は両手で一生懸命に自分の顔をこすっていた。</p>



<p>「げんきに、たのしく」</p>



<p>　それは私が娘にいつも言っている言葉だ。男は頷いた。</p>



<p>「そうか」</p>



<p>　男は匣の蓋を閉めて、娘に返した。</p>



<p>「それなら、この子はそう思っていただろう」<br>「しあわせだった？」<br>「しあわせだったらいいな、とお前が思っていたなら」<br>「おもってたよ」<br>「なら、そうだったんだろう」</p>



<p>　娘は時々しゃくりあげながら、何度も頷いた。私は棒立ちのまま、戻ってきた娘の手を握った。私はこの場を早く去りたかったのかもしれない。</p>



<p>「そろそろ、行こうか」<br>「うん」</p>



<p>　娘は頷いて、<ruby data-rt="はこ">匣<rp>（</rp><rt>はこ</rt><rp>）</rp></ruby>を大事そうに持ち直した。</p>



<p>　私と娘は玄関へ向かい、ドアを開けた。しんと静まり返った見慣れた町が私たちを出迎える。</p>



<p>「自由に飛べたとしても」</p>



<p>　背中から声がかけられる。</p>



<p>「必ずしも飛び去ってしまうわけではない。覚えておけ」</p>



<p>　私は振り返らず、娘は振り返って手を振って、この<ruby data-rt="はこ">立方体<rp>（</rp><rt>はこ</rt><rp>）</rp></ruby>を後にした。</p>



<p>　この現実感のない体験は何だったのだろう。</p>



<p>　いったい、あの男は何だったのだろう。</p>



<p>　ゾッとするものを感じた私は、思わず隣を歩いていた娘の手を握りなおした。</p>



<p>　娘は<ruby data-rt="はこ">匣<rp>（</rp><rt>はこ</rt><rp>）</rp></ruby>を大事そうに抱えて、ニコニコと私を見上げていた。</p>



<p class="has-text-align-center"><strong>匣カラ出タ星・完</strong></p>



<p class="has-text-align-center"><strong><a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-07-01/">次話</a></strong></p>
<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1852" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button><p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-06-03/">匣カラ出タ星　第参話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></content:encoded>
					
					<wfw:commentRss>https://ken1shiki.com/mimitoya-06-03/feed/</wfw:commentRss>
			<slash:comments>0</slash:comments>
		
		
		<post-id xmlns="com-wordpress:feed-additions:1">1852</post-id>	</item>
		<item>
		<title>匣カラ出タ星　第弐話</title>
		<link>https://ken1shiki.com/mimitoya-06-02/?utm_source=rss&#038;utm_medium=rss&#038;utm_campaign=mimitoya-06-02</link>
					<comments>https://ken1shiki.com/mimitoya-06-02/#respond</comments>
		
		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Thu, 03 Feb 2022 08:46:08 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[美味兎屋・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://ken1shiki.com/?p=1840</guid>

					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 承前 　私はどこから見ても、決して格好の良い父親ではない。気の利いたことも言えない。娘の悲しみを理解しきれていない気がする、どうしようもなく無感動な父親だ。感情よりも、理性とやらの皮を被った理屈のほうが先 [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-06-02/">匣カラ出タ星　第弐話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1840" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<p><strong><a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-06-01/">承前</a></strong></p>



<p>　私はどこから見ても、決して格好の良い父親ではない。気の利いたことも言えない。娘の悲しみを理解しきれていない気がする、どうしようもなく無感動な父親だ。感情よりも、理性とやらの皮を被った理屈のほうが先に行ってしまう。</p>



<p>「コンビニで何か買っていこうか」<br>「ううん、いらない」</p>



<p>　いつもなら喜ぶこの提案にも乗ってこない。私は「うん」と頷いて、目的地へ向き直る。その時、不意に街灯が点灯した――今はもうそんな時間なのだ。通り過ぎる車のヘッドライトがいつも以上に眩しかった。</p>



<p>「ん？」</p>



<p>　あんなところに、あんな建物あったっけ？</p>



<p>　二車線の道路をまたぐ横断歩道のある角地に、立方体の建物があった。きっちりした立方体だ。確かここは先日まで建て替えか何かの工事をしていたはず。だとすれば、新築の家という事になって、記憶にあんまりないのも納得なのだが、それにしては薄汚れているような印象がある。何より、その奇怪な程に几帳面な立方体が、ありえない形の建築物であるとも言えるにも関わらず、あまりにも風景に溶け込みすぎていた。まるで私たちがここで暮らし始める何年も、あるいは、何十年も<ruby data-rt="まえ">以前<rp>（</rp><rt>まえ</rt><rp>）</rp></ruby>からそこにあったかのように思えてならなかった。</p>



<p>「なぁ、ここって工事してたよな」<br>「こうじ？」</p>



<p>　娘もうーんと唸っていた。彼女も何かの違和感を覚えるらしい。</p>



<p>「こうじしたら、そのあとにはおっきなおうちができるんだよね」<br>「……とも限らないけど、もうちょっとキレイな建物が」<br>「小さいだの汚いだのとは失礼な」</p>



<p>　えっ……？</p>



<p>　その刃の立った声に、私と娘は思わず硬直した。二人でギギギと振り返る。</p>



<p>　白衣の男が立っていた。細いフレームの眼鏡をかけた、三十代半ばの痩せた男だ。白衣のポケットに両手を突っ込み、やや不機嫌な表情で私を見ていた。その時、ふと、男の後ろにある玄関フードに視線が行った。薄汚れた赤い看板がじわっと目に入る。</p>



<p>「うさぎや？」</p>



<p>　上にまだ文字があったが、玄関フード内の電気が消えかけていてよく見えない。</p>



<p>「そこまで省略された上に読み間違えられたのは初めてだな」<br>「うさぎやさん？」</p>



<p>　娘がおずおずと尋ねる。白衣の男は肩を竦めた。</p>



<p>「間違ってもペットショップじゃない」<br>「店なのか？」<br>「店だ――多分」<br>「おみせ？」</p>



<p>　娘の声を聞いて、男は顎をしゃくった。着いて来いということか。私は娘と顔を見合わせた。娘は興味があるようだが、「知らない人にはついていってはいけない」という教えがあるために、対応に困っていた。だが、好奇心はあるようだった。</p>



<p>　私は数秒間考えて、娘と視線を合わせた。</p>



<p>「行ってみようか」<br>「うん」</p>



<p>　不安げに、だが、どこか弾んだ様子で、彼女は頷いた。</p>



<p class="has-text-align-center"><strong><a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-06-03/">次話</a></strong></p>
<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1840" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button><p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-06-02/">匣カラ出タ星　第弐話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></content:encoded>
					
					<wfw:commentRss>https://ken1shiki.com/mimitoya-06-02/feed/</wfw:commentRss>
			<slash:comments>0</slash:comments>
		
		
		<post-id xmlns="com-wordpress:feed-additions:1">1840</post-id>	</item>
		<item>
		<title>匣カラ出タ星　第壱話</title>
		<link>https://ken1shiki.com/mimitoya-06-01/?utm_source=rss&#038;utm_medium=rss&#038;utm_campaign=mimitoya-06-01</link>
					<comments>https://ken1shiki.com/mimitoya-06-01/#respond</comments>
		
		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 02 Feb 2022 11:07:47 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[美味兎屋・本文]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://ken1shiki.com/?p=1815</guid>

					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　私は本気で弱っていた。私の右手を小さな手で握り締めて、泣きながら歩いている娘を見て、私もまた泣きたい気分だった。娘は小さな匣（はこ）を手に持っていた。 「なあ、もう泣きやもうよ」 　私が言っても、聞く様 [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-06-01/">匣カラ出タ星　第壱話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1815" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<p>　私は本気で弱っていた。私の右手を小さな手で握り締めて、泣きながら歩いている娘を見て、私もまた泣きたい気分だった。娘は小さな<ruby data-rt="はこ">匣<rp>（</rp><rt>はこ</rt><rp>）</rp></ruby>を手に持っていた。</p>



<p>「なあ、もう泣きやもうよ」</p>



<p>　私が言っても、聞く様子は無い。確かに、聞ける気分じゃないだろう。母親が死んで以来、この子はよくできた子だった。弟の世話は幼いなりによくするし、小学校直前にしては大人だった。そうならなきゃならなかったのは、父親たる私の不甲斐なさでもある。</p>



<p>「だって、ランドセル、もっとはやく、きめてれば」</p>



<p>　泣きじゃくる娘。母親がいた頃から一緒に生きてきた文鳥が、さっき死んだのだ。息子を義母に預け、二人でランドセルを買って帰った時には、眠るようにして死んでいた。二ヶ月程前から元気が無く、心配していた。獣医は「高齢だからだ」と言っていたし、実際そうだったのだろう。だから、ランドセルの調達がこんなに遅くなってしまったのだ。この子なりに、文鳥の最期を悟って、その瞬間に一緒にいてやりたかったんだろうと思う。</p>



<p>　だけど。</p>



<p>　よりによって何で今日、このタイミングで死ぬのかと、私は密かに文鳥を恨んだ。</p>



<p>「おとうさん、この子はおほしさまになるの？　おつきさまになるの？」<br>「ううん……」</p>



<p>　我ながら頼りない父親だ。ドラマの父親役のような気の利いた台詞は思いつくが、口には出せない。ばかばかしい、実にばかげた理性の仕業だ。</p>



<p>「くるしかったかな」</p>



<p>　大きくしゃくりあげる娘。</p>



<p>「おかあさんみたいに、くるしかったかな」</p>



<p>　母親――つまり私の妻――は交通事故にあって、ひどい有様だった。病院に着いた時はまだ息があったが、それだけだった。全身を包帯に覆われ、人工呼吸器を付けられた姿は、当時まだ三歳だったこの子にも相当な衝撃だったようだ。私も義母も呆然としてしまっていて、そのあたりの配慮が出来なかった。その時の事を思い出すと、今でも自分の不甲斐なさに涙が出てくる。</p>



<p>　その記憶を思い出してしまった結果……私は娘の問いには答えられなかった。</p>



<p>　薄暗くなってきた道を、娘と私と小さな|匣（はこ）が歩く。「夜になれば星が出て、月も出て、お空に帰りやすくなる」だろうと、娘が言ったからだ。だから近所の公園まで一緒に行こうと言ってきたのだ。</p>



<p class="has-text-align-center"><strong><a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-06-02/">次話</a></strong></p>
<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1815" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button><p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-06-01/">匣カラ出タ星　第壱話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></content:encoded>
					
					<wfw:commentRss>https://ken1shiki.com/mimitoya-06-01/feed/</wfw:commentRss>
			<slash:comments>0</slash:comments>
		
		
		<post-id xmlns="com-wordpress:feed-additions:1">1815</post-id>	</item>
		<item>
		<title>寝癖ナオシ帽子　第漆話</title>
		<link>https://ken1shiki.com/mimitoya-05-07/?utm_source=rss&#038;utm_medium=rss&#038;utm_campaign=mimitoya-05-07</link>
					<comments>https://ken1shiki.com/mimitoya-05-07/#respond</comments>
		
		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Tue, 01 Feb 2022 09:51:14 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[美味兎屋・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://ken1shiki.com/?p=1793</guid>

					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 承前 　――何でだろう。 　どうやって持っても、ショルダーバッグを引きずってしまう。持ち上げても、持ち上げても、バッグ本体が持ち上がらない。 　――なぜだろう。 　私はバッグの中にある薄汚れた野球帽を見な [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-05-07/">寝癖ナオシ帽子　第漆話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1793" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<p><a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-05-06/"><strong>承前</strong></a></p>



<p>　――何でだろう。</p>



<p>　どうやって持っても、ショルダーバッグを引きずってしまう。持ち上げても、持ち上げても、バッグ本体が持ち上がらない。</p>



<p>　――なぜだろう。</p>



<p>　私はバッグの中にある薄汚れた野球帽を見ながら、赤い看板を見上げていた。そこには読めない漢字が四つ、書いてあった。</p>



<p class="has-text-align-center"><strong>寝癖ナオシ帽子・完</strong></p>
<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1793" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button><p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-05-07/">寝癖ナオシ帽子　第漆話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></content:encoded>
					
					<wfw:commentRss>https://ken1shiki.com/mimitoya-05-07/feed/</wfw:commentRss>
			<slash:comments>0</slash:comments>
		
		
		<post-id xmlns="com-wordpress:feed-additions:1">1793</post-id>	</item>
		<item>
		<title>寝癖ナオシ帽子　第陸話</title>
		<link>https://ken1shiki.com/mimitoya-05-06/?utm_source=rss&#038;utm_medium=rss&#038;utm_campaign=mimitoya-05-06</link>
					<comments>https://ken1shiki.com/mimitoya-05-06/#respond</comments>
		
		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Tue, 01 Feb 2022 09:47:48 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[美味兎屋・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://ken1shiki.com/?p=1790</guid>

					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 承前 　その声が、「おかお」という文字がキンキンと響き、私の脳の中で音の形象崩壊を起こす。 「こ、この子は、な、な、なな、何なの！」「この子？ ああ、そこにいるらしいヤツのことか」 　男は私の腕を掴んでい [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-05-06/">寝癖ナオシ帽子　第陸話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1790" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<p><a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-05-05/"><strong>承前</strong></a></p>



<p>　その声が、「おかお」という文字がキンキンと響き、私の脳の中で音の形象崩壊を起こす。</p>



<p>「こ、この子は、な、な、なな、何なの！」<br>「この子？ ああ、そこにいる<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">ら</span><span class="boten">し</span><span class="boten">い</span></span>ヤツのことか」</p>



<p>　男は私の腕を掴んでいる小さなものを指差した。が、少しその指先がずれている。</p>



<p>「ねえ、おかお、おかお！」<br>「因果律というヤツじゃないか」<br>「おかお、おかお、おかお！」<br>「よくわからんが」<br>「おかお！　おかお！　おかお！」<br>「自責の念とか罪滅ぼしとかいう皮を被ったエゴイズム――言い換えればお前そのものじゃないのか？」<br>「ねぇ、おかおをちょうだい！」</p>



<p>　ばりっ。</p>



<p>「あなたのおかおをちょうだい！」</p>



<p>　めりめりっ。</p>



<p>　顔が熱い。皮も肉も筋肉も根こそぎ剥がされる。</p>



<p>　激痛に私は泣き叫んだ。それすら表情筋がちぎれ飛んだせいで不可能になっていく。口も開けられない。目蓋はもぎ取られたから目を閉じることもできない。顔から流れた血が全身を几帳面に覆っていく。床もどろりと濡れ果てる。</p>



<p>　私にはそんな私が見えていた。なぜか、私のそばに私が立っていた。</p>



<p class="has-text-align-center"><strong><a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-05-07/">次話</a></strong></p>
<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1790" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button><p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-05-06/">寝癖ナオシ帽子　第陸話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></content:encoded>
					
					<wfw:commentRss>https://ken1shiki.com/mimitoya-05-06/feed/</wfw:commentRss>
			<slash:comments>0</slash:comments>
		
		
		<post-id xmlns="com-wordpress:feed-additions:1">1790</post-id>	</item>
		<item>
		<title>寝癖ナオシ帽子　第伍話</title>
		<link>https://ken1shiki.com/mimitoya-05-05/?utm_source=rss&#038;utm_medium=rss&#038;utm_campaign=mimitoya-05-05</link>
					<comments>https://ken1shiki.com/mimitoya-05-05/#respond</comments>
		
		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Tue, 01 Feb 2022 09:41:04 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[美味兎屋・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://ken1shiki.com/?p=1787</guid>

					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 承前 「ねぇ、おかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおか [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-05-05/">寝癖ナオシ帽子　第伍話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1787" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<p><a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-05-04/"><strong>承前</strong></a></p>



<p>「ねぇ、おかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかおおかお！　ねぇねぇ！」</p>



<p class="has-text-align-center"><strong><a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-05-06/">次話</a></strong></p>
<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="1787" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button><p>The post <a href="https://ken1shiki.com/mimitoya-05-05/">寝癖ナオシ帽子　第伍話</a> first appeared on <a href="https://ken1shiki.com">-創発領域-</a>.</p>]]></content:encoded>
					
					<wfw:commentRss>https://ken1shiki.com/mimitoya-05-05/feed/</wfw:commentRss>
			<slash:comments>0</slash:comments>
		
		
		<post-id xmlns="com-wordpress:feed-additions:1">1787</post-id>	</item>
	</channel>
</rss>
