短編・本文

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ピザとコーラと白昼夢

 キリストが生まれて死んで、それから二千数百年が経った頃。今ではもはや|A.D.《西暦》なんて表現はもう陳腐で、日本国に於ける元号よりもその存在価値を失っていた。誰もA.D.XXXX、などという表現をすることはない。ただ、古典を紐解くのには...
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光の瀑布

 海の音は静かに繰り返す。風が蹴立てた痕が白く浮かぶ。岸に叩きつけられた波が砂の凹凸に毛羽立っては、たまらず逃げていく。そんな真夏の昼下がり、海から寄せる大気は何故かとても冷たく、笠矢律子は白い外套の襟にそっと手をやった。裸の手の甲がかじか...
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ブライトワルト

 ほら見てみて――言われて、僕は空を|仰《あお》ぎ見る。僕たちがいるのは、闇の中に沈む森。|鬱蒼《うっそう》たる夏の樹葉が藍色の空を翳らせている。湿り気を帯びた大気の向こうに、|燦然《さんぜん》たる巨大な輝きがちらちらと揺れていた。「あれは...
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