現代ファンタジー

ロストサイクル・本文

LC-99-999:エピローグ

 二〇一九年四月。 僕らは晴れてH大学の大学生となった。 何事もなかったかのように。 だけど、そう――僕らの記憶は完全には消えなかった。 あの夜の記憶は、《《写真のように》》僕らの頭に焼き付いている。僕とルリカは互いのその脳内写真が、僕らそ...
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LC-06-002:バレットストーム

 真っ先に爆炎を上げたのは96式装輪装甲車だった。分厚い装甲を持つはずの車両が、まるで紙を引き裂くように破壊された。その爆風に飲まれ、タケコさんも宝生も大きく吹き飛ばされた。タケコさんは愛車のWRXのボディに人形のように撥ね上げられ、宝生は...
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LC-06-001:デュエリスト&インターセプタ

 タケコさんの強さは鬼神のようだった。十名を超える敵を前に、一歩も退かないどころか、圧倒していた。剣道四段とかそういうのでは到底計り知れない、圧倒的な実戦経験……だろうか。ともかくその動きはあまりにも洗練されていてハリウッドのアクション映画...
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LC-05-005:未来と運命と

 僕らの行く先に一つの影があった。「還屋……」 僕はそのツインテールの姿をすぐにそうだと同定する。この場に現れ得る人物といえば、さっきの白衣の男と、この還屋未来以外にはないと思っていた。「ようこそ、宇宙の|狭間《はざま》へ」「宇宙の狭間?」...
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LC-05-004:開示

 潜伏期間というのはな――男は律義に説明を始めた。「C的存在のネットワークに組み込まれるための準備期間。つまり、記憶の主体をこの世界の物から俺たちの概念へと組み替えるための並行運用期間のようなものだ」「やっぱり支配体制を変えるってことじゃな...
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LC-05-003:美味兎屋

 |美味兎屋《みみとや》ってどういう意味なんだろう。 男の後ろをついて玄関に入り、靴を脱がぬままに中に入っていく。そこは外観からは想像もつかない程に広く、長い廊下を歩く必要があった。内装はシンプルだったが、金色の間接照明が絶妙にアンニュイな...
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LC-05-002:可能な限り完璧なる立方体

 僕は走った。涙が出るほど肩が痛んだが、それでも。 僕を追ってきたのは二人。どんな服装かまで見る余裕はなかったけど、とにかく黒い服を着ていた。その手には鉄パイプのような棒がある。銃でないのは幸いだったが、持っていないとも限らない。 タケコさ...
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LC-05-001:待ち伏せ

 六月に入った頃になってようやく、僕は退院した。六月四日――久しぶりの学校である。その間、タケコさんも夏山ルリカも、もちろん母さんも見舞いに来てくれた。僕の傷は思いのほか重傷だったようで、一歩間違えば死んでいてもおかしくはなかったのだそうだ...
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LC-04-003:消された記憶

 何が起きたのかはわからない。 だが、何かは起きたはずだ。 僕は錯雑とした記憶の破片を拾い集めて、その夜に何が起きたのかを思い出そうとする。タケコさんとの面会の後から、突然記憶が途切れてしまっている。まるで眠りこけて夢でも見たのではないかと...
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LC-04-002:未来を決める

 彼らの狙いは――。 その声は暫く止まった。嗤い声と共に。「誰なの」 僕は左手で握りっぱなしになっていたナースコールのボタンを押し込もうとした。しかし、指が動かない。まるで凍り付いてしまったかのように、ピリピリとした痛みと共に、僕は身動きが...
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