物語

腰痛剣士と肩凝り魔女・本文

#08-03: カルヴィン伯爵の姿

←previous 火の精霊がいなければ、俺たちはこの真っ暗な城の中で途方に暮れていたかもしれない。念のためにランタンは持ってきていたが、それだけではこの圧力のある暗闇に心を|捻《ねじ》り折られていたかもしれない。「ウ、ウチ、正直震えが止ま...
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#08-02: 暗雲の生まれる場所

←previous 翌朝早く、俺たちは大袈裟な雨音で叩き起こされた。氷雨が幌をしつこく刺している。「いやぁ、濡れますなぁ」 外套を|纏《まと》ったタガート隊長が、うんざりした口調で挨拶にやって来る。「さすがの我々もこの季節の雨は苦手ですなぁ...
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#08-01: 地獄の入口

←previous それ以降、特にこれといった襲撃もなく、俺たちは進んだ。小さな村を三つばかり通過したのだが、人影も人の気配も感じられなかった。皆、家の中で息を潜めているのか、あるいは――。 幸いにして食料や水の余裕はまだまだあったから、俺...
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#07-06: 恐怖と不安

←previous それから一週間、俺たちはひたすら西に向かって進み続けた。幸いにして街道は整備されていて、馬車から伝わる振動も、まぁ、そこそこに良心的だった。タナさんの灸と湿布とマッサージの力で、腰痛もどうにかごまかせた。 途中途中、散発...
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#07-05: エリザからの刺客

←previous 翌朝、未だ|朝靄《あさもや》が|烟《けぶ》る時分、俺たちはすでに馬車の人となっていた。「パパ、ママ、眠そうやなぁ?」 ウェラが眠っているのを確認してから、リヴィがニヤニヤしながら言った。俺とタナさんはなんだか気恥ずかしく...
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#07-04: 求婚の言葉

←previous そんな幸せな時間は長くは続かなかった。 腰が――死んだのだ。 食事を終えて部屋に戻った瞬間に、そりゃもう俺自身がビックリするほどの激痛が|奔《はし》り、全身の力が抜けた。リヴィと腕を組んでなければ顔面強打間違いなしだった...
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#07-03: いろはもみじの葉の下で

←previous それから三日後の昼過ぎに、俺たちは人口数万を数える大きな街に入った。位置づけ的にはあの城塞都市の出島のような街らしい。全体に規模は小ぶりながらも、数々の店が軒を連ねていた。 都市の周辺部に植えられた木々はすっかり紅葉して...
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#07-02: 勇者

←previous 出発して程なくして、リヴィとウェラは眠ってしまった。タナさんも疲労が出たのか、俺の膝を枕にして横になっている。俺はというと、このムーディな振動による腰への蓄積ダメージを心配しているところだ。  タガート隊長によれば、途中...
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#07-01: 異端審問官の決意

←previous 広場の俺たちのところに、カディル審問官がウェラとリヴィを連れてやって来た。王国騎士たちも六人、全員無事だったようだ。「よかったよ……」 タナさんはウェラとリヴィを順番に抱きしめて呟いた。そんな三人を|見遣《みや》りながら...
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#06-07: 向こう百年黙ってな!

←previous 白銀の翼を持つ白い悪魔は咆哮した。それは俺の頭の中で跳ね回り、やがて意味を持ってくる。「なんだこれ」「圧縮言語」 タナさんが早口で応じてくる。「今の一声で、こいつはありとあらゆる会話パターンをアタシたちの中にぶち込んでき...
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