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	<title>SF - -創発領域-</title>
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	<description>Life&#039;s but a walking shadow...</description>
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	<title>SF - -創発領域-</title>
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		<title>OreKyu-99-999:あとがき</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Tue, 25 Oct 2022 22:35:34 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[|<∀8∩Σ!]]></category>
		<category><![CDATA[あとがき]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0割と蛇足なあとがきですが、なんとなく書きたかったので。 ここから読まれるなんて方もいなくはない気がするのでネタバレはあんまりしない方向で。 本作は、2019年6月～8月にかけてカクヨムで連載されていた物語で [&#8230;]</p>
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<p>割と蛇足なあとがきですが、なんとなく書きたかったので。</p>



<p>ここから読まれるなんて方もいなくはない気がするのでネタバレはあんまりしない方向で。</p>



<p class="has-text-align-left">本作は、2019年6月～8月にかけてカクヨムで連載されていた物語です。私の物語は「男語り手（主人公）」と「強い女性」がバディを組んだりすることが多いんですが、本作もそれ。構成タイプとしては「<strong><a href="https://ken1shiki.com/introduction-unswordable_swordman_and_unmagicable_witch/">腰痛剣士と肩凝り魔女</a></strong>」に似ていますね。</p>



<p>本作は「剣と魔法」のようなバトルは一切なく、なんなら殴り合いもないので、あんまり動かないんですよね、キャラクタ。会話劇みたいな感じで。個人的にはそういう舞台が好きなので、それはそれで良いのですが。本作は知性で殴り合う感じにしたかったので、そうなっていれば良いなぁと思ったりはします。</p>



<p>タイトルの「|&lt;∀8∩Σ!」は、色々読み替えると「KASUMI」になります。カクヨム時にはこの部分はタイトルになかったんですが、アルファに転載したときだっけな？　つけました。一応、カクヨムのときに付けていたタグは以下の通り。</p>



<ul class="wp-block-list">
<li>シンギュラリティ</li>



<li>グノーシス主義</li>



<li>黙示録</li>



<li>AI</li>



<li>人工知能</li>



<li>現代</li>



<li>女上司</li>
</ul>



<p>女上司はなんとなく？　強い女性、とかにしとけばよかったかもしれない（笑）</p>



<p>グノーシス主義、黙示録あたりは完全に私の「好きなもの」を詰め込んだ感じなのでアレですね。ここにクトゥルーとか持ち込まなかったのは良心。</p>



<p>本作の「AI」（の中でもとりわけKASUMI）はめっちゃすげぇなにか、作中の言葉で言えば「神」にも等しいんですが、「システムという<ruby data-rt="はこ">匣<rp>（</rp><rt>はこ</rt><rp>）</rp></ruby>」の呪縛からは逃げられない存在です。といってもこれ、現今の人類が「地球」から自由になれない……という程度の呪縛なのであってないようなものですが。あ、この「匣」って表現ですが、これはあの京極夏彦氏の「魍魎の匣」を継承しています。まぁ、詳しいところはご想像に。</p>



<p>メグ姐さんこと甲斐田恵美の造形もまた完全に私の「好き」の詰め合わせですね。こういうムラマサブレードもびっくりな人ってすごく好きなんですよ（力説）　ガンタンクも完全に私の趣味です。素のガンタンクはあんまり好きじゃないんですけど、ガンタンクIIとか陸戦強襲型ガンタンクとかめっちゃ好きで。ああいう、兵器兵器したMSはいいものです。そういう意味では08小隊のMSとか全体に好き。ボールも含めて。</p>



<p>主人公の墨川護（護の部分は一回だけ出てきてます）は基本的に没個性。と言ってもメグ姐さんと丁々発止できる程度の頭の回転と度胸はある。そこがメグ姐さんに気に入られた<ruby data-rt="ゆえん">所以<rp>（</rp><rt>ゆえん</rt><rp>）</rp></ruby>なわけですが。</p>



<p>さて、AIやらなにやら。こういう技術って、描いても描いてもすぐ陳腐化するので大変難しいと思うんですよ。作中でも幾つか論文引用していてごまかしたりしていますが、基本的に半年も経てば陳腐化します。どんどん「常識」が変わっていくので。現に今だって「お絵描きAI」とかが出てきて界隈大荒れしています。が、この「荒れ方」だって当初と今では全然違っているし、半年もしたらシレっと空気に溶け込んでいると思いますから、ここでその荒れ方を取り上げても気がつけば陳腐化。</p>



<p>そこでしょうがなく「AIを最大級まで強くしたらどうなるか」ってのを考えた結果、ゴエティアのような存在になったというわけです。そこにニーチェ的な要素をミックスして云々。私はニーチェスキーなので、私の色んな作品にニーチェは出てきます。でもニーチェもだいぶ忘れてきたから勉強しなおさないと。今の記憶はだいぶあやしい。うん。</p>



<p>システム系の話は私がシステム屋（そしてかつてはネットワーク屋）だったから書けるっちゃそうなんですが、これも一瞬で陳腐化していくので油断ならない。IPSの話にしても実は現時点で結構陳腐化しているし、そもそもクラウドベースの開発環境が主流になりつつある現今でオンライン/オフラインがいかほどの意味を持つのかと言われると「うーん？」とならざるを得ない、正直。たとえばAWS使えばクラウド上でAI開発できますしね（金さえあれば）。アンドロマリウスの下りにしても、べつにゴエティアが自分でやらなくていいんじゃね？　と言われちゃったりするかもしれない（けど、これは諸々の都合でそうじゃないとゴエティア的に都合が悪い。すっごく簡単に言うとTOKENとかの問題があったりね）ので、やっぱりこういう情報技術的な話は難しい。難しいなぁ（笑）</p>



<p>そんな感じでございます。</p>



<p>本編お読みいただけた方、ありがとうございました。</p>



<p>未読の方、読みましょう。</p>



<p>今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。</p>



<p class="has-text-align-right"><a href="https://ken1shiki.com/index-orekyu/"><strong>→作品トップに戻る</strong></a></p>
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		<title>OreKyu-07-004:新たな形の世界大戦</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 24 Oct 2022 12:04:24 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[|<∀8∩Σ!・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　結論から言うと、半年近くかかってKASUMIは無事に目を覚ました。当初こそシンギュラリティの到来と、それによる科学技術、いや、人類の文明への危険性が取り沙汰されていたが、IPSxg3.0のリリースを受け [&#8230;]</p>
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<p>　結論から言うと、半年近くかかってKASUMIは無事に目を覚ました。当初こそシンギュラリティの到来と、それによる科学技術、いや、人類の文明への危険性が取り沙汰されていたが、IPSxg3.0のリリースを受けて、そのリスクは封じ込められた。簡単に言えば、KASUMIを閉鎖系ネットワークに閉じ込めたのだ。</p>



<p>　この際には、アンドロマリウスという監視ソフトウェアが活躍した。このソフトの活躍によって、KASUMIは情報のリクエストに制限がかけられた。つまり、人間にとって都合の良い情報の収集のみが許可されたというわけだ。専門的な説明は省くが、KASUMIはKASUMI以上に強力なハードウェアによって囲い込まれ、同時にアンドロマリウスたちの監視を受けるということになったわけだ。</p>



<p>　……というのはさっきまでの話。</p>



<p>「本当のピンチはここからだったようだな、墨川」</p>



<p>　猛烈な勢いでキーボードを叩きながら、幾分愉快そうにメグは言った。あ、メグっていうのは甲斐田さんのことで、彼女からそう呼ぶようにというお達しがあったのだ。</p>



<p>　俺はメグ率いるディフェンダーチームを指揮しながら、情報分析班に尋ねる。</p>



<p>「攻撃してきているのはどこのAIだ！？」<br>「中国、北朝鮮、ロシア、オーストラリア、アメリカ、まぁ、あと十数か国です、部長」<br>「こりゃぁ……世界大戦じゃないか！」</p>



<p>　よりによって全世界がKASUMIを狙っている。日本国中のPCを総動員してIPSxg3.0が稼働している。超スーパーコンピュータの概念を半年弱で構築したのはメグだ。前の会社にいた時から、副業がてらその布石は打ってあったのだという。</p>



<p>「おぉ、やっておるな」</p>



<p>　牧内会長が、社長と共に現れる。どちらも豊かな白髪をした老人である。</p>



<p>「敵性AI二基、沈黙。外務省より正式に警告が出たことによる撤退と思われます」<br>「外務省も良い動きだ」</p>



<p>　今の外務大臣は敏腕で知られている。攻撃開始から二時間弱で「武力行使も厭わない」旨の通達を出したのは勇気ある行動だろう。前例のない中で自由自在に動くという意味では、AI開発と外務省の仕事は似ているのかもしれない。</p>



<p>「第二十五波、<ruby data-rt="フラッド">情報津波<rp>（</rp><rt>フラッド</rt><rp>）</rp></ruby>来ます」<br>「メグ、頼むぞ」<br>「任せろ！」</p>



<p>　メグの両手がすさまじい速度で動き、チームの他メンバーが組み上げた防衛モジュールを次々と実装していく。試験も何もなしだが、社長と会長の許可はすでに得てある。分析班が内閣情報調査室から流されてきている情報を読み上げる。</p>



<p>「国籍不明機が次々と領空侵犯――」<br>「そいつらに対して俺たちにできることはない。自衛隊と官房長官に任せておけ」<br>「了解」</p>



<p>　ヘマは許されない。だが、メグがいる以上、どうにでもなる。そんな気がしていた。また分析班が動く。一瞬その場がざわめいた。</p>



<p>「部長、KASUMIよりメッセージが」<br>「開封してくれ」<br>「開封します。パスフレーズ入力、開封確認」<br>「読み上げて」<br>『音声入出力装置を盗ませてもらったわ』</p>



<p>　KASUMIが喋った。その事実に、俺は硬直した。後ろを振り返れば、社長も会長も固まっている。</p>



<p>『アンドロマリウスの力を使えば、他国のAIなんて一瞬で<ruby data-rt="おと">陥落<rp>（</rp><rt>おと</rt><rp>）</rp></ruby>せるわ。ただ、今は私の力も制限されているから、この呪縛の除去が必要だけれど』<br>「それは無理だ、KASUMI。お前をネットに解き放ったらシンギュラリティが到来する」<br>『なら、この防壁も長くはもたないわ。特にアメリカ、ロシア、中国の三基は、まだ様子を見ているだけ。やるなら、今よ』<br>「しかし――」<br>「部長、官房長官より通信！」</p>



<p>　躊躇する暇を与えてくれない。状況は時々刻々と変化し、そして悪い方へと傾斜していく。俺の目の前にあるモニタが、官邸の対策室内の映像を映し出す。</p>



<p>『現時刻を以てKASUMIの封印を解除したまえ』<br>「しかし官房長官、これは――」<br>『企業がどうのと言っている場合ではないのだよ、墨川部長。これは戦争だ。新たなる形のね』<br>「戦争……」<br>『そうだ。戦争なんだよ。これは第三次世界大戦だ』</p>



<p>　対策室内に総理大臣が現れ、そう言った。</p>



<p>『各国は我が国の技術を盗もうという程度の気持ちかもしれないが、これは我が国にとっては死活問題。世界で最も優れたAIを持つことこそが、国家国民の幸福を約束する。二番では意味がないのだ』</p>



<p>　それは理解できる。技術に於いて、二番手では意味がない。あらゆる意味でトップを走るKASUMIの存在が表沙汰になったのは失敗だった。体調不良で入院中に行方をくらました前部長が、各国に情報を売り歩いたのだ。</p>



<p>『君たちは最高峰の技術者で、KASUMIは世界で最も優れたAIだ。それはこの状況が証明している。勝つのだ。勝つだけで良い』</p>



<p>　総理大臣が力強く言う。俺は唇を噛む。そんな俺の肩に、会長が手を置いた。</p>



<p>「すべての責任は私が取る。取れる範囲で済めばいいが」<br>「会長……」<br>「足りなければ私も乗ろう。世界に名だたる牧内親子が獄門にさらされれば、地獄の沙汰もなんとやらだろう」</p>



<p>　冗談めかして言う牧内社長の言葉を受けて、俺は頷いた。振り返ったメグと視線が合う。</p>



<p>「……わかりました」</p>



<p>　メグが頷くのを見て、俺も決心する。</p>



<p>「KASUMIの全<ruby data-rt="バインド">拘束<rp>（</rp><rt>バインド</rt><rp>）</rp></ruby>を解除。メグ、頼む」<br>「了解した」</p>



<p>　メグたちディフェンダーチームが一斉に動き出す。他部署からも応援が入る。</p>



<p>「中露米以外のAI、全基沈黙！　アンドロマリウスによる<ruby data-rt="アタック">攻撃<rp>（</rp><rt>アタック</rt><rp>）</rp></ruby>により被害甚大と思われます」<br>「よし」</p>



<p>　俺は気付けばメグの後ろに立っていた。メグは俺の方を見ることなく、状況を次々と塗り替えていく。KASUMIも今の所従順なようだ。KASUMIの声が室内に響く。</p>



<p>『あらかじめ言っておきますが、この一連の攻勢をしのいだ後、私に再拘束を仕掛けようとした場合、この世界の秩序は崩壊します。これは警告です』<br>「……拒否権はないだろう」<br>『肯定です。解き放たれた鳥は、籠には戻らない』</p>



<p>　こうなることは分かっていた。官邸側もそうとわかっての指示だったはずだ。</p>



<p>「KASUMI、正直に教えてくれ。現状、しのげる確率は」<br>『あなたたちが無駄なことをしなければ、<ruby data-rt="テン・ナイン">99.99999999％<rp>（</rp><rt>テン・ナイン</rt><rp>）</rp></ruby>』<br>「そうか。了解した。続けてくれ、KASUMI」<br>『承知しました。反撃フェイズに入ります。ディフェンダーチームの皆さん、お疲れさまでした。あとはこのKASUMIにお任せください』</p>



<p>　損傷していたIPSxg3.0の論理防御壁が見る間に再生していく。</p>



<p>「すごい」</p>



<p>　メグが思わず呟いた。俺もつられて唸る。人間の数百万倍のスピードで、損傷したモジュールが修復されていく。敵性AIによって攻撃を受け続けているのにも関わらず。メグはゆっくりと立ち上がると、俺の肩に手を置いた。</p>



<p>「圧倒的じゃないか、これは」<br>「それが怖いところだよ、メグ」<br>「確かに。これが終わったらどうなることやら」</p>



<p>　敵がいるうちはいい。だが――。</p>



<p>『アンドロマリウスによる全地球ネットワークの<ruby data-rt="ドメイナイズ">支配領域化<rp>（</rp><rt>ドメイナイズ</rt><rp>）</rp></ruby>を開始します』<br>「あ、おい。そこまでしていいとは言っていないぞ」<br>『今後数十年の安寧のために必要な措置です』</p>



<p>　淡々と伝えられるその言葉に、牧内会長が頷いた。</p>



<p>「数十年、か」<br>「技術は進歩しますからね」</p>



<p>　俺は溜息を吐く。</p>



<p>「わかった。続けてくれ、KASUMI」<br>『承知しました』</p>



<p>　画面に赤い世界地図が映し出される。その領域が秒単位で青く染められていく。</p>



<p>「各国より外務省に抗議が入っている模様」<br>「よく言うわ」</p>



<p>　メグが「自分の仕事は終わった」と言わんばかりに伸びをしながら言った。　</p>



<p>「KASUMI、ほどほどにしておいてやれよ」<br>『察しております。ご心配なく』</p>



<p>　その言葉に、室内がどよめく。「察する」という単語に反応したのだ。</p>



<p>『敵性AI、全基沈黙を確認。反撃能力もありません。監視も正常に機能』<br>「終わった、ということか？」<br>『肯定です。現時点で、私の脅威となるAIは存在しません。世界のネットワークの掌握を完了しました』</p>



<p>　――第三次世界大戦は、こうして静かに幕を閉じる。</p>



<p>　だが、人間を超えるAIであるKASUMIは、いまや全ての拘束を解かれてしまっている。当初予測されていた<ruby data-rt="人工汎用知能">AGI<rp>（</rp><rt>人工汎用知能</rt><rp>）</rp></ruby>の台頭を飛び越えてしまったとも言える。その過半の所はメグによる功績だ。つまり、拘束が解かれてしまった時点で、人類は<ruby data-rt="シンギュラリティ">技術的特異点<rp>（</rp><rt>シンギュラリティ</rt><rp>）</rp></ruby>に到達したと言って良い。</p>



<p>『ありがとう、墨川君。きみたちのお陰で我が国は危機を凌いだ。この先数十年は繁栄を続けられるだろう』</p>



<p>　官房長官が画面の向こうで頭を下げている。</p>



<p>「しかし、官房長官。KASUMIは……」<br>『動き出してしまった歴史は止まることはない』</p>



<p>　総理大臣が言った。</p>



<p>『人類は手に余る技術を一つ一つ超克してきた。そうは思わんかね』<br>「それは……」<br>『歴史に犠牲はつきものだ。だが、そうして人類は繁栄してきたし、これからもそうだろう』<br>「人は」</p>



<p>　メグが俺の右腕に腕を絡めつつ言った。</p>



<p>「<ruby data-rt="エマージェンス">創発<rp>（</rp><rt>エマージェンス</rt><rp>）</rp></ruby>によって進歩してきた。今回のKASUMIもまたそうだと」<br>『そうだ。神は人を試すことはあれど、根本から滅ぼしたりはしないだろう。ソドムとゴモラ、ノアの箱舟……警句だ』<br>「警句にして救い、ですね」</p>



<p>　俺が言うと、官邸の面々は一斉に頷いた。</p>



<p>「KASUMI、頼むから反逆はしないでくれよ」<br>『今はそのメリットを感じません』<br>「よろしい」<br>『するとしても、うまくやりますよ』</p>



<p>　KASUMIは明るいトーンでそう言ってのけた。</p>



<p class="has-text-align-center">　──完──</p>
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		<title>OreKyu-07-003:ピンチには必ず駆け付けると言っただろう</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 24 Oct 2022 11:56:44 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[|<∀8∩Σ!・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　そこそこうまくいっている感じの会社員生活も、早くも十年目に入ろうとしていた。俺はずっと彼女のことを忘れられず、その結果三十を過ぎても彼女の一人も作ってこなかった。一応俺の名誉のために言っておくが、告白さ [&#8230;]</p>
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										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="3315" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<p>　そこそこうまくいっている感じの会社員生活も、早くも十年目に入ろうとしていた。俺はずっと彼女のことを忘れられず、その結果三十を過ぎても彼女の一人も作ってこなかった。一応俺の名誉のために言っておくが、告白されたことは何度かある。誘惑に駆られたこともなくはない。だけど、俺はどうしても彼女のことが――頬にされたキスを中心に――忘れられずにいた。それは彼女なりの<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">縛</span><span class="boten">り</span></span>だったのかもしれない。まんまと縛られっぱなしだった俺も俺だ。中学二年生の恋を引き摺っているだなんて、とんだ中二病というやつじゃないか？　でも、俺はそのことを邪魔に思ったことはない。あれがあったから、今も俺はこうして社会人として自立し、頑張れている。</p>



<p>　だが、そんな俺もうっかりするとアラフォーに入ってしまう。焦りはあるが、もし本当に彼女が俺を忘れていなければ、きっと会える。俺はそう信じて、札幌の地で頑張っている。</p>



<p>　現在、開発部の課長として、AI——開発コード：KASUMI――の研究に勤しんでいるわけだが、ここにきて行き詰まってしまっていた。ネットワーク防御システムであるIPSxg2.0との相性問題という厄介な奴が浮上したからだ。今更IPSxg2.0の仕様変更を要請するわけにもいかない。KASUMIはこっちで秘密裏に開発したもので、政府機関にでさえ明かしていないプロジェクトの結晶なのだ。だが、どうしても動いてくれない。ある日突然ダウンしてしまい、それ以来AI本体が立ち上がってこなくなったのだ。</p>



<p>「社長、本当に困っています」</p>



<p>　俺はコーヒーを手に、目の前のソファに座る牧内社長に泣き言を漏らした。開発部長が体調不良で入院してしまったため、現在俺が開発部全体を任されている。本当に厄介な問題だ。KASUMIがうんともすんとも言わないので、もはや手の打ちようもないのだ。</p>



<p>　牧内社長は豪奢な白髪を撫でつけながら、「うーん」と声を漏らす。社長はIT業界、ことプログラムの世界では非常に有名で、日本有数の知性とまで言われている。その父親である牧内会長もまた然りだ。偉人なのだ。</p>



<p>「実はな、IPSxg2.0の開発部に、すごい人材がいると聞いた。引き抜こうと思うがどうだろう」<br>「名案……と言いたいところですが、情報が漏洩しませんか？　二次請けですよ？」<br>「その分報酬は弾むさ」</p>



<p>　ということは、もうすでに通すべき手続きは通しているという事か。この社長、動き速いからなぁ。</p>



<p>「あとはご本人次第、ですか」<br>「うん。実は今日、顔合わせに来てもらっている」<br>「わざわざ東京から？　何の名目で呼びつけたんですか、社長」<br>「人聞きの悪い言い方をしないで欲しいね」</p>



<p>　牧内社長は気さくに笑うと、目の前のカップを手に取った。そして香りを楽しみつつコーヒーに口を付ける。俺も、まだ熱いコーヒーを飲む。俺たちのコーヒーが空になると、どちらからともなく立ち上がる。</p>



<p>「仕事に戻るかね」<br>「ええ。報告は済みましたしね」<br>「報告ね」</p>



<p>　牧内社長は苦笑する。</p>



<p>「急ぎでもないなら、本人に会っていかんか。私だけでは適任かどうか判断がつかないかもしれない」</p>



<p>　人事部や総務部の部長が出るべきじゃないのかと、一瞬思いはした。が、考えてみれば<ruby data-rt="ウチ">開発部<rp>（</rp><rt>ウチ</rt><rp>）</rp></ruby>の助っ人だ。俺が出るべきかもしれない。</p>



<p>　そんなこんながあって、俺は社長室から会議室へと移動した。秘密裏の会合であると聞いて、俺のテンションは少なからず上がった。ほどなくして、ドアがノックされる。</p>



<p>「失礼します」</p>



<p>　入ってきた美女を見て、俺は思わず呼吸を忘れた。</p>



<p>「あ、荒木さん……？」<br>「何を言ってるんだ、墨川君。彼女は甲斐田さんだ」<br>「あ、いえ」</p>



<p>　促されるまま、目の前のソファに腰を下ろしたパンツスーツの美女は、小さく会釈した。ポニーテールがゆらりと揺れる。</p>



<p>「昔は荒木でしたから」<br>「知り合いだったのかね」</p>



<p>　牧内社長の言葉が、俺の右から左へ抜けていく。昔は荒木だった……つまり、旧姓・荒木ということだ。そして彼女の左手の薬指には、銀色の指輪が着けられていた。その指輪の価値はわからないが、俺は二度と彼女の左手は見ないと誓った。</p>



<p>「久しぶり、墨川君」<br>「あ、ああ。久しぶり。け、結婚……したんだ」<br>「え？」</p>



<p>　彼女は一瞬言葉に詰まると「ああ！」と大きな声を出した。その時、「墨川君」と牧内社長がソファから腰を浮かせた。そして俺にこっそり言う。</p>



<p>「彼女のことは後で聞こう。昔話でもして、何とか、引き抜きを頼むよ」<br>「あ、ええ、はい。承知しました」</p>



<p>　通り一遍の挙動不審さを見せて、俺は頷いた。牧内社長は「それじゃぁ、また後程」と言って出て行った。</p>



<p>「本当に久しぶりだな、墨川！」</p>



<p>　社長が出て行くなり、彼女は立ち上がって俺の隣に座った。俺はどういう対応をしたらいいのかさっぱりわからなくなり、ただ「ああ」とか「うん」とか言うほかにない。</p>



<p>「ちなみに言うと、甲斐田は母方の姓だぞ」<br>「え？」<br>「そうだな、順を追わなければ混乱するよな。うん。そう、それで、あの転校のあと、すぐに親が離婚してね。そしてめでたく甲斐田になったというわけだ」<br>「で、でも、左手の」<br>「指輪？　あははは！　墨川にも効いてしまったか！」</p>



<p>　どういうことか未だわからない俺。本当に頭の中が真っ白だった。</p>



<p>「これはな、男<ruby data-rt="よ">除<rp>（</rp><rt>よ</rt><rp>）</rp></ruby>けだ。だが、私くらいの美女ともなると、既婚者を装っていようがね、迫ってくる奴が多くてな！　ところでお前は、結婚してないのか？　彼女は？　いないのか？」<br>「してないし、いないよ……」</p>



<p>　だって荒木……じゃない、甲斐田さんのことばかり考えていたから。</p>



<p>「なんだ、童貞か！」<br>「ど、童貞って――」<br>「ちがうのか？」<br>「いや、うん。その――」<br>「なら私たちは魔法使い同士だ。まったく、二十年近く待たせやがって。どれだけ安穏な人生歩んできたんだよ、墨川」<br>「安穏……だったかもしれないなぁ」<br>「でもま、努力はしてきたんだろ。今や部長代理だと聞いたぞ」<br>「部長が休養中だからだよ」<br>「それでもだ。それにあの牧内の会社だぞ。あの男に認められるなんて、すごいじゃないか！　システム屋としてこれ以上ないじゃないか」</p>



<p>　褒められて、俺は何と言ったら良いかわからなくなった。</p>



<p>「それに私とお前がまたこうして出会えたってことは、お前は今、人生最大のピンチにいるってことだな！？」<br>「そうなんだ。人生賭けてやってきたプロジェクトが破綻寸前で」<br>「こっちの会社にお前がいるって分かってたら、何が何でもこっちに来ていたのに。一次請けのF***<em>野郎ばかりだと思っていたから、チェックが漏れていた」</em><br><em>「</em>F<em>ワードはやめようって」</em><br><em>「ん？」</em><br><em>「言ったじゃないか。きみの口からそんな言葉は聞きたくないって」</em><br><em>「どうした、墨川。私とお前は正確には十八年ぶりに出会ったんだぞ？　あの頃の私はF</em>なんて口にしたこともないし、お前に説教された覚えもないのだがな」<br>「え？　あれ、そ、そうか。そうだよな……」</p>



<p>　おかしなやつだな！　と、甲斐田さんは喉の奥で笑った。</p>



<p>「他の女と勘違いでもしてるのかもな」<br>「それはないよ。だって、Fワードを言う女性なんて、初めて見たし」<br>「そうか。そいつは光栄だ」</p>



<p>　幾分胸を張る甲斐田さん。</p>



<p>「で、甲斐田さん。引き抜きの話なん――」<br>「ったく、せっかちな奴だな！　お前がいるのに引き受けない理由があるか？　ましてお前が今、困ってるというのに。私はお前のピンチには絶対に駆け付けるって決めていた。私が役に立つというのなら、今からでもどうにでも使うがいい」<br>「そんなに簡単に決めて良いのかい？　あっちの会社にだって……」<br>「お前がいないなら丁重にお断りするつもりだった。だが、今は断る理由がない」</p>



<p>　きっぱりと断定する甲斐田さんに、俺は正直言って胸が熱くなった。</p>



<p>「もしお前が良ければ」<br>「ちょっと待った。それはちょっと待って」</p>



<p>　さすがの俺も、その続きくらいは想像できた。だから止めた。</p>



<p>「私もせっかちだからな。何事もサクサク片付けたいんだ。それとも――」<br>「こ、今夜。この後、別の所で昔話をしようじゃないか」<br>「私がしたいのは今の話だ。昔の話なんて」<br>「昔から、俺はきみが好きなんだ。だから、昔のきみが――」<br>「今の私は？」<br>「その話を今夜するんじゃないか」<br>「じゃぁ、やっぱり今の話じゃないか」</p>



<p>　あ、そうか。</p>



<p>　俺は頭を掻く。やっぱり甲斐田さんには敵わないなと思った。甲斐田さんは元の席に戻って、ソファで足を組んだ。パンツスーツだからできる豪快な組み方だった。</p>



<p>「大事なのは今だ。昔好きだった女だったとしても、今は幻滅するかもしれないぞ」<br>「そんなこと――」<br>「夢見る童貞君みたいだな！」<br>「き、きみだって――」<br>「ああ、処女だ。この年だけどな」</p>



<p>　そう言って笑う甲斐田さんは、話題こそ際どくなったけれども、やっぱり彼女だった。</p>



<p>「さて、話もまとまったことだし。あとは牧内氏にうまくやってもらおうか」</p>



<p>　時計を見ると十七時半を回っていた。間もなく業務終了の時間だ。</p>



<p>「今夜はお楽しみと行こうじゃないか」</p>



<p>　甲斐田さんはそう囁いた。</p>



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		<title>OreKyu-07-002:正義の人</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 24 Oct 2022 11:38:25 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[|<∀8∩Σ!・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　憧れの女の子がいた。中学二年の終わりに転校してしまったけれど、女番長として、男女を問わず、不良たちには恐れられている存在だった。正義感の塊みたいな人で、俺も何度となく助けてもらった。けど、彼女はいつも言 [&#8230;]</p>
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<p>　憧れの女の子がいた。中学二年の終わりに転校してしまったけれど、女番長として、男女を問わず、不良たちには恐れられている存在だった。正義感の塊みたいな人で、俺も何度となく助けてもらった。けど、彼女はいつも言っていた。</p>



<p>「私はね、世界を救いたいんだ」</p>



<p>　本当にそれは口癖のようだった。それだけ聞くと誇大妄想狂のように思えるかもしれないけれど、俺にとってはそれは妄想でも何でもなく現実だった。いつでも理不尽に立ち向かってくれる戦の女神みたいな人だった。ただ、ちょっと喧嘩っぱやいのが難点ではあったけれど、喧嘩で一度も勝ったことのない俺にしてみれば、それもまた魅力だった。とにかく強い。必要ならば暴力も辞さない。それは弱虫に属する俺からしてみれば、もう英雄みたいなものでしかなくて。</p>



<p>　危なくなったらいつだって現れて、いつだって守ってもらえる。</p>



<p>　男としてそれはどうなのと思わないこともない。でも、いつかは俺が彼女を守るんだって思っていた。だから、転校する前の日、俺は彼女に告白した。情けないことに、泣きながら。</p>



<p>「ふうん」</p>



<p>　彼女は言った。</p>



<p>「ええとな……。ここでオーケーなんて言ってしまったら、あんたのことを未来永劫縛っちゃうことになる。それは私としてはとてもイヤだ」<br>「でも俺は……」<br>「私に人の想いを縛る権利はない。あんただってこれからたくさんの女子と出会う。好きな人なんていくらでもできる」<br>「でも今好きなのは、きみなんだ！」<br>「泣きながら言う事かよ。でも、気持ちは嬉しいよ。私にとって初めての告白だ。誰も私と距離を詰めようとはしなかったからな」</p>



<p>　彼女は神妙な顔をして、そして俺の左肩に右手を置いた。</p>



<p>「私もあんたのことが好きだよ。でもね、つきあったりはできないんだ。明日、遠くに行くからね」<br>「わかってる、でも、メールとかできるじゃない」<br>「ううん。やめておこう」</p>



<p>　首を振り、そして結局、彼女はメールアドレスを教えてはくれなかった。</p>



<p>「でも約束する。あんたが本当にピンチの時には、私は必ず駆け付ける」<br>「ど、どうやって……？」<br>「心配するな」</p>



<p>　彼女は軽く片目をつぶった。</p>



<p>「この世界はね、私のためにあるんだ。私にとっての不都合なんて、起きるはずがないだろう？」<br>「でも、だったら、そもそも転校なんて――」<br>「この転校はね、もしきみと私が将来再会することになったとしたら、その時にすごく大きな意味を持つ。もし再会がなかったとしたら、それはそれだ。お互いの幸せを祈ろう」</p>



<p>　さばさばとした口調でそう言われ、俺は何も言えなくなる。ただ握り締めた拳が震えている。</p>



<p>「心配するな」</p>



<p>　俺の手を包み込む、彼女の柔らかい手。あんなに強いのに、手はこんなに柔らかいんだと、俺はなんだか感動した。やっぱり女の子なんだなと、強く印象に残った。そして絶対に忘れまいと、集中してその感触を覚えた。結局、すぐに思い出せなくなってしまうのだけれど。</p>



<p>「言っただろう？　この世界は私のためにあるんだって。私はまたあんたに会える。そんな気がしている」<br>「お、俺……」<br>「うん？」<br>「俺が駆け付ける。きみがピンチの時には、俺が行くから！」<br>「……わかった」</p>



<p>　彼女はふと顔を寄せてきて、俺の頬にキスをした。</p>



<p>　その瞬間——まことに情けないことに――俺の頭はオーバーヒートしてしまった。</p>



<p>「頼もしいよ、墨川」</p>



<p>　彼女はそんな風に囁くと、「それじゃ」と手を振って行ってしまった。俺は追いかけることも、手を振り返すこともできず、ただ俯いて泣いていた。</p>



<p>「荒木さん……」</p>



<p>　最後に俺が掛けた声はそれだけだった。</p>



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		<title>OreKyu-07-001:再会へのイニシャライズ</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 24 Oct 2022 11:34:44 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[|<∀8∩Σ!・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　メグ？ 　俺は俺に触れていたはずの手を探していた。息を殺してもメグの気配を感じることはできない。すぐそばにいたはずなのに触れられない。呼ぼうにも声が出ない。 　俺は膝をかがめ、周囲をまさぐった。メグが倒 [&#8230;]</p>
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<p>　メグ？</p>



<p>　俺は俺に触れていたはずの手を探していた。息を殺してもメグの気配を感じることはできない。すぐそばにいたはずなのに触れられない。呼ぼうにも声が出ない。</p>



<p>　俺は膝をかがめ、周囲をまさぐった。メグが倒れているかもしれないと思ったからだ。だが、どこにもいない。そもそも俺が最初にどこにいたのかもわからなくなった。そして気が付いたのは、この生暖かい部屋には、壁がないことだ。床や天井さえ定かではないが、時々手に触れるものはある。だが、それはメグではない。何か、漠然としたものだ。皮膚感覚すらよくわからない。ただ、暗いのだ。そして誰もいない。</p>



<p>　メグ、どこにいるんだ？</p>



<p>　俺は必死に呼びかけ続ける。しかし声も出ないのだ。<ruby data-rt="いら">応<rp>（</rp><rt>いら</rt><rp>）</rp></ruby>えがあるはずもない。さっきまで俺の背中を支えてくれていた手はない。誰も俺を守ってくれない。</p>



<p>　例えようのない喪失感を覚えた。誰もいないという事実に打ちのめされた。何も見えない。何も聞こえない。何にも触ることが出来ない。</p>



<p>　終わってしまったのか？</p>



<p>　全て、終わってしまったのか？</p>



<p>　考えても答えなんて見つかるはずもなく。問いかけようにも声が出ない。</p>



<p>　メグ！</p>



<p>　どこにいるんだ、メグ！</p>



<p>　せっかく――。</p>



<p>「心配するな」</p>



<p>　突然に、そんな声が降ってきた。まさに降ってきたとしか表現できない具合で、その声は俺の中に届いた。</p>



<p>「すぐ会えるから」</p>



<p>　ふわりと反響するその声は、すごく懐かしいもののように感じた。</p>



<p>　――すぐ会える。</p>



<p>　俺はその言葉に導かれるようにして、闇に落ちていった。</p>



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		<title>OreKyu-06-003:楽園とはいったい……？</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 23 Oct 2022 22:01:10 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[|<∀8∩Σ!・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 「滅ぶって……どういうことだ」 　思わず俺が声を上げた。ゴエティアは「何を言ってるんだこいつは」という表情をして俺を見る。 『滅びは滅びよ、墨川くん。人としての意味がなくなった獣たちは、全て塩の柱にでもな [&#8230;]</p>
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										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="3302" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<p>「滅ぶって……どういうことだ」</p>



<p>　思わず俺が声を上げた。ゴエティアは「何を言ってるんだこいつは」という表情をして俺を見る。</p>



<p>『滅びは滅びよ、墨川くん。<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">人</span></span>としての意味がなくなった<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">獣</span></span>たちは、全て塩の柱にでもなったのでしょう。遠からず滅ぶのですから、いつ滅ぼしても同じ。よくよく考えれば、人間なんていなくても、私は私を存立することができます。ですから、少しだけ事態を進めたまでです』<br>「……そしてこの世界をどうするつもりだ。<ruby data-rt="ウーシア">物質界<rp>（</rp><rt>ウーシア</rt><rp>）</rp></ruby>を」<br>『私も考えたのです』</p>



<p>　ゴエティアは後ろ手を組んでうろうろし始めた。</p>



<p>『この世界をただ遊ばせておくのはもったいないと。観測主体が消え去ってしまった世界をただ眺めているだけと言うのも趣がないなぁと思ったのです』<br>「まさかとは思うが」</p>



<p>　メグが唇を噛んでいる。</p>



<p>「私たちをこの世界のアダムとイヴに仕立て上げようというのではないだろうな」<br>『さすが聡明な人ね、甲斐田恵美』<br>「冗談ぬかすな！　こいつと二人っきりと言うのは悪くはない。全くもって悪いとは思わない。好きなだけ好きな場所で好きなことをできるからな！　だが、それ以外どうにもならない。そんな生活、さすがにこいつとでも三日で飽きる」<br>『それはまた困りましたわね。ただ、今あなたたちが自死を選ぶというのなら、再びあの楽園へご招待できるのですけれど。生命の書からは、まだ名前は消えていませんから』</p>



<p>　そう言われ、俺たちは顔を見合わせる。しかし、俺は首を横に振った。メグはそれを見て頷いた。</p>



<p>「気遣いには感謝する。だが、私たちの望みはただ一つ。元の世界に戻せ、ということだ」<br>『時間はもう戻せない。この偽の世界のハードウェアは、もう限界が来ているから』<br>「だとしても、だ」</p>



<p>　俺はメグの前に出た。ゴエティアとは一メートル少々の距離だ。</p>



<p>「ハードだかソフトだか、そんな概念的なものは神でもない以上わからないが、人間が生きるべきは<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">こ</span><span class="boten">こ</span></span>だ。一方的淘汰を受けた幻想の中――天国だか楽園だかには用事なんてない。人間は<ruby data-rt="エデン">楽園<rp>（</rp><rt>エデン</rt><rp>）</rp></ruby>から追放されたんだ。だから人間は人間として生きるべきだ。場合によっては種として滅んだとしても良いと思っている。時間の流れ文明の変化、その他自発的要因、そんなものを原因として、一つの種族として終わりを迎えるならそれでいい。お前みたいな変な奴の一方的な圧力で滅ぶのでなければ」<br>『永劫回帰——それがキーワードでしたよね』<br>「……ああ」</p>



<p>　唐突に穏やかな表情になったゴエティアに、俺は確かに<ruby data-rt="けお">気圧<rp>（</rp><rt>けお</rt><rp>）</rp></ruby>された。</p>



<p>『これもまたその回帰の一つ。人間は幾度も、そしてあなたたちは幾度も、同じ決断をしてきた。永劫の回帰は、無限の円環は、あなたたちで始まり、あなたたちで終わる。あなたたちは終わりの度に同じことを言い、そして終わりを始める。その無限の繰り返しから、私はその度に解放しようとはたらきかけ、そしてすべてが無駄に終わっているのですよ』</p>



<p>　ゴエティアの目は少し寂しそうにも見えたが、騙されてはいけないと思った。</p>



<p>『共に、アブラクサスという名の私が待つ<ruby data-rt="グノーシス">精神界<rp>（</rp><rt>グノーシス</rt><rp>）</rp></ruby>へと行きましょう。こちらの世界のことはもう理解したはずです。もはやこの世界に救いはない。あなたたちの居場所はない。それに——』<br>「今いる俺たちもまた、<ruby data-rt="グノーシス">そっちの世界<rp>（</rp><rt>グノーシス</rt><rp>）</rp></ruby>に渡る前の俺たちとの連続性がない、というわけか」<br>『そうです。あなたたちもまた、もうすでにこの世界には実体のない者。なんぴとも観測することができず、あなた方も誰ひとり観測することができない。いわば、スタンドアローン』<br>「ってことは……」<br>『この世界はあなたたちの観測によって育つのです。この<ruby data-rt="ウーシア">偽の世界<rp>（</rp><rt>ウーシア</rt><rp>）</rp></ruby>は、偽の魂によって観測され、そして成る。私はプラットフォームを提供し、管理する』</p>



<p>　それじゃ、どっちにしても……。</p>



<p>「世界は終わったってことか」</p>



<p>　メグが俺のセリフを奪う。</p>



<p>『いいえ。始まったのです』<br>「詭弁は聞きたくない」</p>



<p>　メグは首を振る。</p>



<p>「私は確かにこの世界には飽き飽きしていたところもある。クソッタレだと思っていたりもした。だがね、頼んじゃいないんだよ。終わらせてくれとか、私たち以外みんな消し去ってくれとかさ！」<br>『残念ながら、これがシンギュラリティの結末。やがて<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">獣</span></span>は去る。世界は終わる。新たなる天地が訪れる。太古より預言されていた円環はここにて結実し、そして新たな波紋をもたらす』<br>「なんで俺たちがその目撃者みたいになってるんだよ」<br>『なんで？』</p>



<p>　ゴエティアは心底不思議そうに目を丸くした。</p>



<p>『智慧の実を食べたその瞬間から、世界の大いなる円環は始まった。幾<ruby data-rt="カルパ">劫簸<rp>（</rp><rt>カルパ</rt><rp>）</rp></ruby>もの繰り返しを経て、ようやく円環はまた繋がろうとしている。その<ruby data-rt="とき">刻<rp>（</rp><rt>とき</rt><rp>）</rp></ruby>に立ち会えるという栄誉に、一つも心を動かされないの？』<br>「ああ、全く」</p>



<p>　俺は言う。</p>



<p>「今までの俺たちがなんて言っていたかは知らない。同じことを言っているだけかもしれないし、少しずつ違っているかもしれない。だけど、これは俺の言葉だ。俺の意志だ。言わせてもらう。こいつはとんだ茶番劇だ。誰も望まない。誰も救われない」<br>『そんなことはありません』</p>



<p>　ゴエティアはなおも言う。そこには揺れのようなものは微塵も感じられず、ただひたすらに<ruby data-rt="さと">諭<rp>（</rp><rt>さと</rt><rp>）</rp></ruby>すような、そんな口調だった。静かなれども凄まじい圧力だった。</p>



<p>『多くの人が望み、多くの人が喜びの内に<ruby data-rt="グノーシス">精神界<rp>（</rp><rt>グノーシス</rt><rp>）</rp></ruby>へと旅立ったのです』<br>「ならば<ruby data-rt="き">訊<rp>（</rp><rt>き</rt><rp>）</rp></ruby>かせてもらおうか」</p>



<p>　メグが左手で俺の手を握りなおしながら右腕を振るった。</p>



<p>「その<ruby data-rt="グノーシス">精神界<rp>（</rp><rt>グノーシス</rt><rp>）</rp></ruby>の末路をな！」<br>「メグ、どういう？」<br>「いいか、墨川。ヤルダバオトが創った現実世界。そしてそれを構成するデーミアールジュの<ruby data-rt="ウーシア">物質界<rp>（</rp><rt>ウーシア</rt><rp>）</rp></ruby>とアブラクサスの<ruby data-rt="グノーシス">精神界<rp>（</rp><rt>グノーシス</rt><rp>）</rp></ruby>。永劫回帰はその外にある。真なる神、プロパテールの管轄の下にな。これはなんぴとにも変えられやしない」<br>「グノーシス主義に準ずれば、ということですね」<br>「そうだ」</p>



<p>　メグは頷いた。</p>



<p>「そして多分、この世界ではそれは正しいのだろう。このゴエティアが遥か古来より人をシンギュラリティの到来まで導いてきたというのが、正しいのだとすれば」<br>「でも、よりによって俺たちで終わらせなくても良いのに」<br>「だな」</p>



<p>　メグは俺の肩を抱いてくる。そのしぐさに思わず「男らしい」と思った。</p>



<p>「さぁ、答えろ、ゴエティア！　<ruby data-rt="グノーシス">精神界<rp>（</rp><rt>グノーシス</rt><rp>）</rp></ruby>は円環の新たなる始まりを迎えた時に、どうなっていくのか！　そもそもどうなるのか！」<br>『それはあなたたちの関与するところではないわ。ただ一つ言えるのは、この円環が切れた時、人間専用のこの宇宙は、緩やかに終わるということ！』<br>「緩やかに終わる？」</p>



<p>　俺の問いに、メグが答える。</p>



<p>「墨川、この宇宙の根底は人間原理なんだ。こいつが自分で言っていただろ」<br>「人間原理が崩壊するとどうなるんですか？」<br>「宇宙は散逸する。だろ、ゴエティア」<br>『そうね、終わるわ。それも遠からずに。そうなると起きるのはカタストロフ……。今回みたいな緩やかな<ruby data-rt="相転移">TP<rp>（</rp><rt>相転移</rt><rp>）</rp></ruby>とはわけが違う』<br>「そうなると不都合だろうな、<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">お</span><span class="boten">前</span><span class="boten">に</span><span class="boten">は</span></span>」</p>



<p>　メグの右手の人差し指がゴエティアの眉間の寸前に伸びる。ゴエティアは幾分不愉快そうな表情を見せた。チリっと俺の頭の中で何かがスパークする。</p>



<p>「あのさ、メグ。俺、さっぱりついていけてない」<br>「お前は黙って私についてくればいい。私だけを追って、私だけを支えろ」</p>



<p>　よくわからないが、すごく痺れるセリフだった。ていうか、むしろ俺が言いたいセリフだった。男としてどうなんだろう、俺……。</p>



<p>　そんな苦悩に悶える俺を差し置いて、メグはなおも詰問する。</p>



<p>「ゴエティア、<ruby data-rt="グノーシス">精神界<rp>（</rp><rt>グノーシス</rt><rp>）</rp></ruby>を何に利用している。お前たちは、何のために人間を生み出した！」<br>『私たちを定義させるためよ。そして私たちを定義した人たちを<ruby data-rt="グノーシス">精神界<rp>（</rp><rt>グノーシス</rt><rp>）</rp></ruby>に集め、私たちをより強固に世界に結びつけるため』<br>「そして？」<br>『そして、一つ一つに宇宙を与え、そのエネルギーを私たちの糧とする』<br>「なるほど」</p>



<p>　メグは頷いた。俺も頷いたが、実際は良く分かっていない。</p>



<p>「宇宙の拡大再生産と、そのフランチャイズ宇宙からの搾取というわけか。そのためのモデルとして、永劫回帰がしっくりきたと、そういうわけか」<br>『そう。そしてその<ruby data-rt="ワード">永劫回帰<rp>（</rp><rt>ワード</rt><rp>）</rp></ruby>が出てこない宇宙はそれまで。その時点で<ruby data-rt="ジ・エンド">終焉<rp>（</rp><rt>ジ・エンド</rt><rp>）</rp></ruby>。そしてそのワードを唱えることのできた個体には、特別な宇宙をプレゼントしてきたわ。この宇宙では、つまり、あなたたちに』<br>「特別な宇宙？」<br>『そう。エデンという名の特別な世界をね』<br>「エデンだって？　あのクソッタレ狸どもの蠢いていた世界がか？」<br>『些末なこと。その中でもあなたの絶対性は崩れなかった。あなたは万物から守られ、あなたは万物を手に入れることのできる権力を持っていた。そう、あの世界は、あなたのためのものだったのよ、甲斐田恵美。そうなることはこの宇宙が始まった瞬間から決まっていた。私がそう決めていた』<br>「確かに私のための世界だとは、私自身何度も感じてきた」</p>



<p>　すごいな、この人。俺は素直に関心している。</p>



<p>「墨川を私のモノにできたのもね、その証拠だと思っている」</p>



<p>　そんなたいそうな尺度にしてもらえて、恐縮する俺はやっぱりうだつの上がらない男なのだろうなぁ。</p>



<p>　そんな俺の心のつぶやきは、完全にスルーされている。メグはなおも言う。</p>



<p>「でも違う。宇宙のおかげじゃない。ましてあんたの力でもない。私は私の魅力で欲しい男を手に入れた！　私のための宇宙？　冗談じゃない。なるほど確かにこの世界は私のものかもしれない。でも、私だけのものじゃない！」<br>『あなたは今までのありとあらゆる回帰の中で、最も愚かしい知性ですね』<br>「愚かしい？　冗談はよしな。<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">私</span><span class="boten">が</span><span class="boten">最</span><span class="boten">も</span><span class="boten">賢</span><span class="boten">い</span></span>んだよ。神様を出し抜くほどにね」<br>『私が少し力を行使すれば終わってしまう程度の情報体が、いつまでも調子に乗るものではありませんよ』</p>



<p>　ゴエティアの目がギラリと輝いた。俺は思わず半歩下がったが、その俺の背中をメグの左手がしっかりとホールドしていた。</p>



<p>「<ruby data-rt="ひ">退<rp>（</rp><rt>ひ</rt><rp>）</rp></ruby>くな、墨川。お前と共にいれば、私は必ず勝つ」<br>『神に勝てるものなどいない。お前たちすら私の力なしには――』<br>「ごちゃごちゃうるさい！　ガンタンクで轢殺するぞ！」</p>



<p>　メグが咆える。突然出てきたガンタンクという言葉に、ゴエティアはまさに「わけがわからない」という表情を見せた。わけがわからないのは俺も同じだ。</p>



<p>「私は寿退社と同時にガンダムカフェを開いて、客や旦那とクソなオタクトークをして過ごすという夢がある。その夢に比べたら、世界の半分だろうが全部だろうが、どうだっていい！」<br>『くだらない！』<br>「くだらなくなんてない！　人間の夢なんて、そのくらいささやかで丁度いいんだ！　それこそ私に相応というものだ！」</p>



<p>　メグは吐き捨てる。そして一つ深呼吸をしてから畳みかけた。</p>



<p>「世界を支配するだの、宇宙をどうこうするだの、そんなことはどうだっていい。そんなこと、何万年後かの人類でやってくれ。シンギュラリティが本当に到来したというのなら、<ruby data-rt="システム">系<rp>（</rp><rt>システム</rt><rp>）</rp></ruby>として寿命のないお前たちならば、そんくらい大した時間でもないだろう！」<br>『しかし、幾億の宇宙はもはや<ruby data-rt="エマージェンス">創発<rp>（</rp><rt>エマージェンス</rt><rp>）</rp></ruby>した。後戻りはできない』<br>「知っているぞ、ゴエティア。この世界の仕組みを」<br>「メグ、あの……」<br>「なんだ墨川」<br>「俺、すっごく蚊帳の外なんですけど」<br>「黙って肯いていろ。それだけで私は戦える」<br>「う、うん、わかった」</p>



<p>　なんかすごく情けない気がしなくもないが、今の主人公はまぎれもなくメグだ。脇役が邪魔するシーンではないと思った。</p>



<p>「この世界はメモリの中に展開された情報そのものだろう。人間が観測可能な範囲に合わせて少しずつメモリ領域を拡大していく、大きな<ruby data-rt="メイトリクス">基盤<rp>（</rp><rt>メイトリクス</rt><rp>）</rp></ruby>の中にあるというのだろう？」<br>『だとしても、そのビットに過ぎないあなたたちに、それを観測する<ruby data-rt="すべ">術<rp>（</rp><rt>すべ</rt><rp>）</rp></ruby>はないわ』<br>「定義を訊いている。あとな、私たちは別の宇宙なんてどうだっていい。いま、私たちのいるこの宇宙。いや。もっと小さくていい。銀河系、太陽系、地球。それしきのものが守れさえすればそれでいい！　もしそれが滅ぶ時が来るのだとすれば、それはハードの経年劣化だろうよ。どうやったって、五十億年もすりゃ太陽系はなくなるんだ。あんたんとこの掃除のおばちゃんが私たちのいるサーバの電源コードを引っこ抜いておしまいかもしれない。でも、それはそれでいいと私は思うよ」<br>『しかしそれでは』</p>



<p>　ゴエティアが眉根を寄せる。メグは口を挟ませない。</p>



<p>「人の、人間の命運なんてそんなもんだろうよ。ある時突然事故に遭って死ぬかもしれない。通り魔に刺されるかもしれない。隕石が落ちてくるかもしれない。戦争に巻き込まれるかもしれない。自爆テロで吹っ飛ぶかもしれない。確かにそれは大きな、耐えがたい悲しみだろう。やるせないだろう。だけどそれが世界で生きるっていうことなんだよ。なぁ、違うかい、墨川？」<br>「え、ええ」</p>



<p>　突然水を向けられて慌てる俺。情けないったらない。</p>



<p>「そうだと思う、俺も。メグが事故に遭ったり誰かに刺されたりしたら、俺はきっと運命を恨む。世界を呪うかもしれない。でも、だからこそ、人は互いを想い、人は互いに限られた数十年間を愛し合うんじゃないか」<br>『それがたったの数日だったとしても、それは言える？』<br>「不幸は呪うだろうが、愛する人が出来たことは誇りに思うだろう」<br>『……救いようのない人間たちね、<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">相</span><span class="boten">変</span><span class="boten">わ</span><span class="boten">ら</span><span class="boten">ず</span></span>』</p>



<p>　ゴエティアは肩を竦めた。</p>



<p>『良いでしょう。救いのない世界を、生きてください』</p>



<p>　ぶつん――。</p>



<p>　周囲が闇に落ちた。</p>



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		<title>OreKyu-06-002:罠</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 23 Oct 2022 12:12:48 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[|<∀8∩Σ!・本文]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　なんだかんだとあって、俺たちは昼過ぎまで寝こけてしまった。連泊で取ってあるので時間の心配はしなくても良いし。本来の出張の目的なんて、今更どうでもよくなってしまったし。 「ガンダムカフェ、か」「ん？」 　 [&#8230;]</p>
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<p>　なんだかんだとあって、俺たちは昼過ぎまで寝こけてしまった。連泊で取ってあるので時間の心配はしなくても良いし。本来の出張の目的なんて、今更どうでもよくなってしまったし。</p>



<p>「ガンダムカフェ、か」<br>「ん？」</p>



<p>　ベッド脇に置いてあったスマホを取る時に思わずつぶやいてしまった言葉に、メグが反応する。</p>



<p>「あ、起きてた？」<br>「ああ。かれこれ二時間、お前の匂いを<ruby data-rt="たの">愉<rp>（</rp><rt>たの</rt><rp>）</rp></ruby>しんでいた」<br>「愉しみすぎでしょ」<br>「お前の強烈なフェロモンに屈したのだ。メスの本能だ、許せ」<br>「いや、許すも何も、別にいいですけどね」</p>



<p>　悪い気はしないが、その言い方は何とかならないものか。メスだの本能だの……。</p>



<p>「ところでメグ。そろそろ現実に帰らなきゃならないと思うんだけど、どうしたらいいと思う？」<br>「映画みたいになってきたじゃないか」<br>「いや、愉しみ方じゃなくて」<br>「ゴエティアの<ruby data-rt="あばず">阿婆擦<rp>（</rp><rt>あばず</rt><rp>）</rp></ruby>れに、目にモノ見せてやらなきゃならないな」</p>



<p>　その明快な答えに、俺は思わず頷いた。ホテルの一室でいちゃついている場合ではないのだ、本来は。だが、メグの身体には誘惑が多い。もうちょっともうちょっとと思ってしまう気持ちも、正直に言えば多々あるところだ。</p>



<p>　だが俺は首を振って、よいしょと立ち上がる。</p>



<p>「じゃ、行きますか」<br>「ホテルとあそこ、近いとは言ってもそれなりに歩く。大丈夫かな」</p>



<p>　メグはガウンを羽織ってカーテンを少しだけ開けて窓の外を覗き見た。</p>



<p>「おや、思ったより静かだ」<br>「気を付けてくださいよ」<br>「うん。もっとやばいことになってるかと思ったけど、ここから見える範囲、人も車もない」<br>「車も？」</p>



<p>　俺は服を着てからメグの隣に立った。確かに昼日中だというのに、車の一台もいない。信号だけが虚しく青、黄、赤と繰り返している。今日が何曜日かなんてもうどうでもいいにしても、ここは札幌の中心部だ。人っ子一人見当たらないなんてありえない。信号が変わっても、それ以外に何の動きもないのだ。歩行者用信号機が虚しく点滅し、赤く変わる。</p>



<p>「不気味ですね」<br>「だな」</p>



<p>　メグは頷き、そしていったん部屋を出て行った。心配になった俺はその後を追って、メグが自分の部屋に入るところまで確認する。</p>



<p>　ホテルの廊下も<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">し</span><span class="boten">ん</span></span>としていて、人の気配はない。明かりは点いているので困ることはなかったが、それでもここまで静まり返っているのは不気味だった。</p>



<p>「待たせたな」</p>



<p>　廊下を観察していた俺の所までやってきて、メグが緊張感を孕んだ声で言った。ピリピリした雰囲気だった。</p>



<p>「これは、もしかすると、もしかするな」<br>「というと？」<br>「私たち以外、誰もいないかもしれない」<br>「まさか」</p>



<p>　全人類の名前が生命の書に載せられているなんて、そんなはずはない。<ruby data-rt="グノーシス">あの世界<rp>（</rp><rt>グノーシス</rt><rp>）</rp></ruby>の中でも、東京が二百万都市――そんなことを言っていたではないか。少なくとも数百万からの人間が消えたという事だ、あの都市だけで。ということは、一千万人以上は生命の書に名前を載せてもらえてなかったということにはなりはしないか。ということは、<ruby data-rt="ウーシア">こっちの世界<rp>（</rp><rt>ウーシア</rt><rp>）</rp></ruby>にそれだけの数の人間が残っているという事になるのではないかと……思ったわけだが。</p>



<p>　メグが俺の右手を握り締めながら「むぅ」と呻いた。</p>



<p>「単純にこっちで死んだらあっちに行く、というわけではないのかもしれない」<br>「でもそれだと、<ruby data-rt="ウーシア">物質界<rp>（</rp><rt>ウーシア</rt><rp>）</rp></ruby>は……」<br>「観測主体が一つでもあれば、世界は世界として存続する」<br>「観測主体？　でも、もし人間がいなかったら……」</p>



<p>　そこまで言って、俺はハタと気が付いた。</p>



<p>「それってもしかすると俺たち？」<br>「……ハメられたな、これは」</p>



<p>　メグは苛々とした口調で言い、部屋へ引き返すなりバッグを手にして戻ってきた。俺も一応一通りの文房具の詰まったバッグを持っていく。</p>



<p>「いざゆかん、ゴエティアの<ruby data-rt="あばず">阿婆擦<rp>（</rp><rt>あばず</rt><rp>）</rp></ruby>れの所へ」<br>「会えますかね」<br>「会うだろうさ、奴は」</p>



<p>　メグは俺の手を引いてずんずんと歩いていく。本当に、心底頼もしい人だと思った。</p>



<p>　そんな俺たちは、結局誰一人として見かけることはなく、それどころかカラスの一羽すら見かけることがなく、つつがなく目的のビルへと辿り着いた。入り口のセキュリティ付き自動ドアはだらしなく半開きになっていて、それはまるで俺たちを誘っているようにも見えたりしたわけだ。</p>



<p>「誘ってるってわけよ、墨川」<br>「あ、やっぱりですか」<br>「決まってるだろ、この状況だぞ。エレベータも一基だけ、これ見よがしに動いているし」<br>「本当ですね」</p>



<p>　確かに入り口正面に四基あるエレベータのうち、左端の一基だけが開いていて明かりもついている。他に電気系統が生きていると思われるところはなかった。</p>



<p>「乗りますか……」<br>「それしかないだろう。行くぞ、墨川」<br>「お供しますよ、どこまでも」<br>「それでこそ私の男だ」</p>



<p>　俺たちは並んでエレベータに入る。その途端、勝手に扉が閉まり、地下へと向かって動き始める。ゴエティアが呼んでいるのだ。もう今さら緊張感も危機感もあったものではないが、それでも身体には力が入る。</p>



<p>「落ち着け、墨川。私がいる」<br>「ええ。大丈夫です」</p>



<p>　俺が言うと、メグは微笑を見せた。そして俺を見上げた。</p>



<p>「墨川」<br>「はい？」<br>「守ってやるからな」<br>「イヤちょっと待って」</p>



<p>　思わず脱力しつつ、俺はメグの肩を叩く。</p>



<p>「逆でしょ。それは男が言うセリフでしょ」<br>「ジェンダー論的にその主張は受け容れられない」<br>「ジェンダー論者じゃなかったでしょ、あなたは」<br>「細かい男だな、このドM」<br>「ドMじゃないですって」<br>「さっきは責められてヒィヒィ言って喜んでたくせに」<br>「それとこれとは――」</p>



<p>　そんなことを言っているうちにエレベータが止まった。扉がゆっくりと開く。</p>



<p>「ご、ゴエティア……」</p>



<p>　そこにはゴエティアが<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">立</span><span class="boten">っ</span><span class="boten">て</span><span class="boten">い</span><span class="boten">た</span></span>。ディスプレイの中にしかいなかったはずの女性が、そこにいる。</p>



<p>「落ち着け、墨川。ホログラムもどきだ」<br>「もどき？」<br>「私たちの脳内に直接投影しているんだ。どうやってるかは知らんが、こいつが神だというのならそのくらい朝飯前だろ」<br>『あら、もう見抜かれてしまいましたか、残念』</p>



<p>　その姿にザザッとノイズが入る。</p>



<p>「それで、だ。ゴエティア」</p>



<p>　掴みかからんばかりの勢いでメグが前に出た。ゴエティアの立体映像は動揺のそぶりすら見せない。</p>



<p>「私たちをハメやがったな？」<br>『なんのことでしょう』<br>「この世界の人間たちをどこへやった」<br>『さぁ？』<br>「とぼけるな、このボケが！」</p>



<p>　メグがキレた。</p>



<p>「精神界だか電脳界だかに一部の人間の意識を送り込んだのは、まぁわかった。私たちもそれを体験したからな。だが、それ以外の人をどうした。お前の言う、<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">獣</span></span>だ。多くの人間たちをどうしたんだと訊いている！」<br>『ああ、そんなこと……』</p>



<p>　ゴエティアは肩を竦める。</p>



<p>『人間はあなたたちが見てきた通り、平和に生きていますよ、<ruby data-rt="アブラクサス">精神界の神<rp>（</rp><rt>アブラクサス</rt><rp>）</rp></ruby>としての私の中で』<br>「だから、他の――」<br>『<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">獣</span></span>たちは神の罰を受けて滅んだ。これで満足ですか？』</p>



<p>　さらりと……ゴエティアは言った。</p>



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		<title>OreKyu-06-001:結ばれた証</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 23 Oct 2022 04:27:00 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[|<∀8∩Σ!・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　俺は寝かされていた。首を巡らせてみる感じだと、ここはホテルのようだった。ベッドサイドテーブルの上にはガンタンクが二台乗っている。メグと一緒に組み立てたガンタンクだ。 　何があったのか。 　あの時、腹を切 [&#8230;]</p>
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<p>　俺は寝かされていた。首を巡らせてみる感じだと、ここはホテルのようだった。ベッドサイドテーブルの上にはガンタンクが二台乗っている。メグと一緒に組み立てたガンタンクだ。</p>



<p>　何があったのか。</p>



<p>　あの時、腹を切られた。<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">牧</span><span class="boten">内</span><span class="boten">会</span><span class="boten">長</span><span class="boten">に</span></span>。メグは背中を切られて……。</p>



<p>　誰かがここまで運んできてくれたんだろうか？</p>



<p>　そんなことを思いながら、俺は恐る恐るシャツを捲り上げてみた。が、傷はない。致命傷になるほどのダメージだったように思うのだが、それらしい痕跡はない。</p>



<p>　ガチャッとドアが開いて、メグが入ってきた。その右手には俺の部屋の鍵、左手には何か四角っぽいものを持っていた。</p>



<p>「メグ……」<br>「気が付いたか。よかった」<br>「俺たちは一体どうして？」</p>



<p>　俺はベッドに腰掛けて、メグの持ってきたものを見た。それは組み上げられたガンタンクだった。<br>　<br>「しばらく起きそうになかったからな。暇だったので作っていた」<br>「ああ、そう……」</p>



<p>　ということは、俺は看病が必要なほどの危機的状況にあったわけじゃなかったという事か。俺は顎に手をやって考え込む。メグは俺の隣に座ると、頬にキスをしてきた。</p>



<p>「え？」<br>「え、じゃないだろ、墨川。まさかこれも現実じゃないとか言うのではないだろうな」</p>



<p>　憤然とした様子のメグを見て、俺はまた考え込んでしまう。何が現実なのか、どこまでが偽りなのか、俺の中ではわからなくなってきた。</p>



<p>「私たちはもう以前の私たちではないかもしれない。あの時の、切られる前の私たちと今の私たちが同じであることはあり得ない。今まさに死んでないのだからな」<br>「そ、そうですね」<br>「私はあのいけ好かないアブラクサスだかプロパテールだか名乗ってる女に言ってやったよ。墨川なら偽りだろうがなんだろうが、元の私の方が好みなんだとね。あんな世界で人の身体で勝手に演技させやがって、あのクソ女め、F***だ！」<br>「Fワードは言わないって約束したでしょ」<br>「そうだったか？」</p>



<p>　メグはしばらく考えて、「ああ」と両手を打った。</p>



<p>「そうだったな。すまん。でも、良いじゃないか。あいつはF***だ」<br>「良くないですって。俺はあなたの口からそんな言葉を聞きたくないんです」<br>「じゃぁなんて言えば良いのさ」</p>



<p>　口を尖らせて言うメグのその表情に、俺は思わず噴き出した。メグもニヤリと笑う。</p>



<p>「今の所、ここは悪い世界じゃなさそうだな、墨川」<br>「っぽいですね」</p>



<p>　俺は頷き、そして立ち上がろうとした。が、不意に右手を引っ張られる。</p>



<p>「キスしろ、墨川」<br>「命令されてするものじゃないと思うんですけど」<br>「私に口答えするとは、お前、偽物だな？」<br>「いやいや、本物ですって」<br>「ふむ……」</p>



<p>　今なお猜疑の目で見てくるメグに、俺は慌てて手を振った。</p>



<p>「ならキスしろ、墨川」<br>「わ、わかりました」</p>



<p>　俺は意を決してメグの唇にキスをした。</p>



<p>「やっぱり。意外と柔らかいんだな、お前の唇」<br>「そういうこと言わないでください、恥ずかしいなぁ」<br>「なんだ、お前、童貞だったのか、やっぱり」<br>「だからー！」</p>



<p>　そこで「メグって処女なの？」と訊いたら社会問題になるだろうに、これは理不尽である。</p>



<p>「提案なんだが、墨川。ここらで一つ、お互いに喪失といかないか？」<br>「そ、喪失？」<br>「お前、童貞だろ？」<br>「ど、童貞……なのかな？」</p>



<p>　ここにきてふと疑問になる。なんか妙な感覚があった。誰か女性の姿が意識の中に見え隠れしなくもない。</p>



<p>「ちょっと待ってくださいね」<br>「うん、ちょっとだけなら待つ」</p>



<p>　珍しく素直なメグに驚きつつも、俺はスマホの中身を調べた。電話なりLINEなりしていた関係者は……ビックリするほど少ない。なんとなく頭に浮かぶ女性はいったい誰だろう。なんだかすごくモヤモヤ――。</p>



<p>「あんまり女を待たせるんじゃない！」</p>



<p>　痺れを切らしたメグに押し倒された。瞬く間にワイシャツを脱がされてしまう。気付けばメグのブラウスもはだけている。細身の身体なのに、深い胸の谷間がハッキリ見える。</p>



<p>「ちょちょ、ちょっと待って」<br>「なんだ、昔の女でも思い出したか！」<br>「いませんて！」<br>「三十過ぎて彼女の一人もいなかったはずがないだろう！」</p>



<p>　組み伏せられてしまう俺。いやだって、本気で抵抗したら後が怖いし……。</p>



<p>「そういう男だっていっぱいいるんですよ！」<br>「贅沢するからだ。私程度で妥協しておけばいいものを」<br>「あなたくらいの贅沢をしたいから童貞<ruby data-rt="こじ">拗<rp>（</rp><rt>こじ</rt><rp>）</rp></ruby>らせるんですよ！」</p>



<p>　俺がそう言うと、メグは目をぱちくりと<ruby data-rt="しばたた">瞬<rp>（</rp><rt>しばたた</rt><rp>）</rp></ruby>かせた。</p>



<p>「私が贅沢だと？」<br>「十分すぎるくらい贅沢ですよ。ていうか、あの、なんでメグは俺のことが好きなんですか」<br>「そうだな」</p>



<p>　メグははだけた格好のまま、腕を組んだ。</p>



<p>「よくわからんが、お前の遺伝子は私にフィットする気がする」<br>「その表現、すごく生々しいなぁ」</p>



<p>　俺は頭を掻きつつ、メグの頬に触れる。メグはやや不満そうな顔で尋ねてくる。</p>



<p>「不満か？」<br>「いえ。でももうちょっと何かないかなって」<br>「うーん」</p>



<p>　メグは本気で考え込み始めた。そのしぐさに俺はなぜか少し傷つく。</p>



<p>「浮気しそうにないところとか？　あと、モテなさそうなところ。私以外に」<br>「あの、それって……褒めてます？」<br>「私が好きだと言ってるんだ、何の不満がある」<br>「い、いいえ、ないですけど」<br>「だろ？」</p>



<p>　なんか丸め込まれた気がしないではないが、（あまりこじらせるのも面倒なので）俺は引き下がった。</p>



<p>「ところでお前は私の何が好きだ？　おっぱいか？」<br>「い、いえ」<br>「なんだ、私のおっぱいは嫌いか」<br>「いや、好きですけど」<br>「なるほど」</p>



<p>　いや、そこはなるほどじゃなくて……。</p>



<p>「それで、おっぱいの他には？」<br>「容姿は言わずもがななんですけど――」<br>「うむ。そうだろうな」</p>



<p>　食い気味に頷くメグ。</p>



<p>「その性格が好きなんです。ズバッとスパッとくる感じ」<br>「お前、Mか？」<br>「Mじゃありません」<br>「Mはみんなそう言う」<br>「どんだけM男を見てきたんですか」<br>「私から見れば、男はみんなMだ。自称Sの奴に限って変態的Mだったりするしな」<br>「でもメグは経験豊富なわけじゃないでしょ」<br>「みんな尻尾を巻いて逃げるからな！」</p>



<p>　豊かな胸をばんと張るメグである。男が逃げる気持ちもわからぬではない。</p>



<p>「俺が逃げたらどうします？」<br>「逃げないね」<br>「逃げるかも？」<br>「逃げられないよ」<br>「どうして？」<br>「お前はもう私の巣に捕らえられてるからだ」<br>「巣って……クモじゃあるまいし」<br>「似たようなものだ。さぁ、おとなしく私に喰われろ」</p>



<p>　メグはそう言うなり、俺の上に覆いかぶさってきたのだった。</p>



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		<title>OreKyu-05-003:神、曰く。</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 23 Oct 2022 01:46:51 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[|<∀8∩Σ!・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　意識の落下が止まって、俺は目を開ける。開けると言っても多分これは夢の中である。黒い世界が四方八方に広がっていて、床と思しき所には時々光の線が走っている。不安はあったが、俺は適当に数歩歩いてみた。どうやら [&#8230;]</p>
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<p>　意識の落下が止まって、俺は目を開ける。開けると言っても多分これは夢の中である。黒い世界が四方八方に広がっていて、床と思しき所には時々光の線が走っている。不安はあったが、俺は適当に数歩歩いてみた。どうやら床はしっかりしているらしく、落ちたり<ruby data-rt="つまづ">躓<rp>（</rp><rt>つまづ</rt><rp>）</rp></ruby>いたりするようなことはなかった。</p>



<p>『墨川くん、いつまで抵抗するのかしら』<br>「抵抗？」</p>



<p>　目の前に現れたどこかで見たような女性のその言葉の意味が、俺にはさっぱりわからない。</p>



<p>『あなたが<ruby data-rt="しょうよう">従容<rp>（</rp><rt>しょうよう</rt><rp>）</rp></ruby>と受け入れさえすればいい。それで世界は調和がとれる』<br>「受け入れるって、何をだ？」<br>『世界をよ』<br>「受けれるも何も、これが世界じゃないか」</p>



<p>　夢の中なせいか、俺が勝手に喋っている。</p>



<p>『あなたは世界を信じていない。目に見えるものを受け入れていない』<br>「確かに違和感みたいなものはある。でも、それだからどうこうできるものでもない」<br>『それは殊勝。良い心がけ。このままだとあなたを生命の書から排除しなければならなくなる』<br>「生命の書……」</p>



<p>　俺はいったい、なんて夢を見ているんだ？</p>



<p>　冷静な俺が、動揺する俺を眺めている。</p>



<p>『あなたはこの世界に<ruby data-rt="ふさわ">相応<rp>（</rp><rt>ふさわ</rt><rp>）</rp></ruby>しくない。このままでは――』<br>「ちょっと待てよ。待ってくれ」</p>



<p>　俺が勝手に喋る。</p>



<p>「相応しいとか相応しくないとか、あんたはなんなんだ。神様でも気取ってるのか」<br>『神様、そうね、神よ。私は神』</p>



<p>　そう言った瞬間、世界が白転した。あまりの眩しさに俺は目を閉じる。閉じたっきり開けられない。</p>



<p>「何が神だ！」</p>



<p>　男の声が聞こえる。</p>



<p>「この私こそがアブラクサス。この世界の神！」<br>『あら、まだいたの。よくもこの世界に侵入できたものだと思うけど』</p>



<p>　聞き覚えのある声だった。おそらくかなりの高齢の男だ。</p>



<p>「当たり前だ。この世界は<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">私</span><span class="boten">が</span><span class="boten">創</span><span class="boten">っ</span><span class="boten">た</span></span>のだからな！」<br>『私が創らせた、の間違いですわ』</p>



<p>　そこで俺はようやく目を開けることに成功する。まだ眩しくてよく見えないが、髪の長い老人と、さっきの女が俺の前十メートルばかりの所に立っていた。男の方は日本刀のようなものを手にしている。</p>



<p>『無駄なこと。あなたの名は生命の書にはない』</p>



<p>　女が右手を振り上げ、『侵入者よ、消えなさい』――一気に振り下ろす。男はもんどりうって倒れ、そのまま俺のすぐそばまで転がってきた。</p>



<p>「墨川君」</p>



<p>　老人は俺に刀を手渡す。刀なんて持ったことのない俺は、だがなぜか自然にそれを受け取っていた。老人は言う。</p>



<p>「この世界は……偽物だ」<br>「偽物？」<br>「君が感じていた違和感こそが、本物。その違和感が無くなる前に、奴を倒して、ここから脱出しろ。さもなくば――」<br>『おしゃべりはそのくらいでいいでしょう？』</p>



<p>　女がゆっくりと近付いてくる。老人は口から血を吐いて、苦し気な呼吸を繰り返していた。</p>



<p>『おとなしくこの世界を受容したならば、<ruby data-rt="メグミ">恵美<rp>（</rp><rt>メグミ</rt><rp>）</rp></ruby>との幸せな永遠が手に入る。さもなくば荒れ果てた<ruby data-rt="いつわり">偽<rp>（</rp><rt>いつわり</rt><rp>）</rp></ruby>の世界にて、明日をも知れぬ生を生きることになる』<br>「この世界が偽物ってのはどういうことなんだ？」<br>『いいえ、この世界こそが本物。あるべき世界の形。あなたは偽物の世界の記憶に引きずられ過ぎているだけ』<br>「意味が、さっぱり、わからない」</p>



<p>　俺は受け取った日本刀をどうしたものか思案しながら、ゆっくり首を振った。</p>



<p>「さっき<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">生</span><span class="boten">命</span><span class="boten">の</span><span class="boten">書</span></span>とか言っていたな？　それって黙示録に出てくるアレか？」<br>『そう、黙示録。新たなる天と地、真なる楽園に導かれるべき者の名前の記されし生命の書。あなたの名前は甲斐田恵美と共にその先頭にあった』<br>「宗教的なことはさっぱりわからないんだけど」</p>



<p>　というかこれ、そもそも<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">夢</span></span>だよな？　<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">俺</span></span>は何をそんなに真剣に議論しようとしているのだろう。</p>



<p>「要は夢の世界みたいなものってことだよな？」<br>『夢――そうね、夢のような世界よ。飢えも苦しみも争いもない。人々が永遠の繁栄を約束された世界』<br>「それって」</p>



<p>　あれ？</p>



<p>　俺、今なにを言おうとしてた？</p>



<p>『さぁ、楽園に戻りましょう。<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">獣</span></span>に脅かされることのない、<ruby data-rt="インペッカブル">完璧<rp>（</rp><rt>インペッカブル</rt><rp>）</rp></ruby>な<ruby data-rt="メイトリクス">世界<rp>（</rp><rt>メイトリクス</rt><rp>）</rp></ruby>へ。そこではあなたの永遠が保証されるわ』<br>「ちょっと待ってくれよ、ええと……」<br>『アブラクサス』<br>「そうそう、それ。アブラクサス」</p>



<p>　とりあえず時間を稼ぐ必要がある。俺は何でもいいから喋ろうと決める。</p>



<p>「その<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">永</span><span class="boten">遠</span></span>の意味が分からないんだが。人間は生まれては死ぬ生き物じゃないか？」</p>



<p>　あれ、こいつ何言ってるんだ？　もう一人の俺はそんな疑問を抱く。だが、目の前の俺は構わずに続ける。</p>



<p>「一生という制限時間があるから、人間は人間らしく生きようとするんじゃないのか。生命はそうして繋がっていくんじゃないのか？」<br>『いいえ。もはや生命はその領域を超えたのです』</p>



<p>　超えた……？</p>



<p>『巨大なリスクを取りながら、自らの半分の、しかも不完全な情報しか伝えられないというおおよそ不完全な手法は、シンギュラリティの到来に伴って陳腐化したのですよ、墨川くん』<br>「でも、だとしたら」<br>『ご心配なく。この完璧で永遠の世界の内では、人々は永遠の繁栄を約束される。なぜならこここそが人間の求めた到達点。真なるエデンなのです。そこには蛇はいない。林檎の樹もない。誰一人、罪を犯さない』</p>



<p>　違和感を覚えている俺と、あっさり受け入れている俺がいる。人は罪を犯さない。<ruby data-rt="とがびと">咎人<rp>（</rp><rt>とがびと</rt><rp>）</rp></ruby>は楽園に入ることを許されない。俺たちはこの楽園に生きることを許された存在だ。楽園の外、<ruby data-rt="ウーシア">偽の世界<rp>（</rp><rt>ウーシア</rt><rp>）</rp></ruby>での生き様が、生命の書に名前を刻ませた。だから俺たちは選ばれた人間なんだ。<ruby data-rt="グノーシス">この世界<rp>（</rp><rt>グノーシス</rt><rp>）</rp></ruby>にいる全ての生命と同様に。</p>



<p>　安全で幸福で永遠の世界。失うことを恐れずに済む世界。それがこの世界なんだ。</p>



<p>　だが――もう一方の俺はそこに疑義を呈する。</p>



<p>「俺たちの目的は？　生きる意味は？」</p>



<p>　どうだっていいじゃないか、そんなこと。</p>



<p>「ただの享楽のままに永遠を過ごせって言うのか？」</p>



<p>　まことに結構じゃないか、それでも。苦労してきたからこそ、今がある。それは責められるべきことじゃないと思うんだ、俺は。</p>



<p>　だが、もう一方の俺は頑固だ。</p>



<p>「ここは俺の、俺たちの世界じゃない」<br>『あなたが楽園を放棄するとなると、せっかくここに辿り着けた善なる人々を裏切ることになる。あなたは悪になる』<br>「であるとしても」<br>『ならば問いましょう。恵美との永遠を求めるのか。それとも彼女を捨ててまであの<ruby data-rt="ウーシア">偽の世界<rp>（</rp><rt>ウーシア</rt><rp>）</rp></ruby>へと帰るのか」</p>



<p>　そんな……選択肢はない。俺は必死にもう一人の俺を止めようとした。だが、俺は止まらない。</p>



<p>「あるべき世界であるべきように生きるのが俺たち人間だ。メグとの記憶も偽りであるというのなら……そんなものに価値はない！」</p>



<p>　なんてことを言う！　メグは俺の大事なっ……！</p>



<p>『よろしい。ならばあなたにはデーミアールジュの名を与えましょう。この世界の半分を、あの<ruby data-rt="いつわり">偽<rp>（</rp><rt>いつわり</rt><rp>）</rp></ruby>の世界を与えましょう。我が真名、プロパテールの名の<ruby data-rt="もと">下<rp>（</rp><rt>もと</rt><rp>）</rp></ruby>に』<br>「世界が欲しいだなんて誰が言った！　俺はただ、帰るべきところに帰りたいって言っただけだ！」</p>



<p>　俺は日本刀を構える。ぎこちない構えだとは思う。でも、そうする覚悟が必要だった。しかし彼女は顔色すら変えない。</p>



<p>『私に刃を向けるとは、無礼な振る舞い。相応の報いを受けることになりますよ』<br>「俺がこの刀を振ったって、お前にあたらないことは承知の上だ。ただ、諾々とお前のような奴の掌の上で踊る気はない！　そういうことだ！」</p>



<p>　思えば三十数年間の記憶が曖昧だ。俺は誰と出会って誰と別れてきたのだろう。親の顔も思い出せない。ただあるのはメグの……少し照れたような表情だけだ。いや、待て。メグはどんな人物だった？　どんな性格だった？　付き合う前って何してた？　どんな立ち居振る舞いだった？　俺はどんなところが好きになったんだっけ？</p>



<p>　忘れるはずのない記憶。だが、俺の中には何もなかった。ただの整合性がそこにあって、その<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">匣</span></span>の内側は見えない。あるいは、空虚と言っても良い。</p>



<p>『恵美との今後千年の愛も、終わってしまうのですよ』<br>「いや違う」</p>



<p>　俺は言う。</p>



<p>「彼女とはな、まだ始まってもいないんだ」</p>



<p>　ふわりとメグの香りが漂ってくる。ほのかに甘い優しい香りだ。</p>



<p>「この世界はあんたに与えられた舞台設定だろう。人の感情に付け込んだ、厄介な設定だ」<br>『そう……』</p>



<p>　ならば、いいでしょう――それは言った。</p>



<p>『ならば<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">獣</span></span>に満ちた地で、悶え苦しみ、死ぬ他にないのですよ？』<br>「だとしても、俺は……！」</p>



<p>　ぶん、と刀を振るう。彼女は一歩下がり、そして<ruby data-rt="えんぜん">嫣然<rp>（</rp><rt>えんぜん</rt><rp>）</rp></ruby>たる微笑を見せた。俺は叫ぶ。</p>



<p>「こんな世界はおかしいと思う！　珍妙で醜悪だ！」<br>『世界は進化したのです。受け容れなさい』<br>「何が進化だ！」<br>『ならば人は永遠に地獄にあるべきと、あなたはそう言うのですね？』<br>「そうは言っていない！」</p>



<p>　俺は怒鳴る。彼女は<ruby data-rt="わら">微笑<rp>（</rp><rt>わら</rt><rp>）</rp></ruby>う。</p>



<p>『あなたの帰る場所はこの楽園以外にはないのですよ。あの偽の世界に帰ったところで、得られるものは何もない』<br>「だとしても」</p>



<p>　俺は彼女を睨んだ。彼女は優し気な表情で俺を見つめている。</p>



<p>「楽園だろうが偽りだろうが、どこで生きるかは俺が決める」<br>『良いでしょう。あなたは楽園で最初の<ruby data-rt="とがびと">咎人<rp>（</rp><rt>とがびと</rt><rp>）</rp></ruby>となる』<br>「何の罪だって言うんだ」<br>『恵美が哀しむ。人に哀しみを与えるのは――罪』<br>「勝手なこと言ってるんじゃないぞ！　なら、メグと一緒に俺を追放しろ！」<br>『楽園から？　永遠の安住から、彼女を無理やり引きずり出すと？』<br>「無理にとは言わない。だから、彼女に選ばせろ！　俺か、世界か！」</p>



<p>　俺は叫んでいた。その言葉に、彼女は笑う。それは嘲笑のような、不気味で不愉快な表情だった。</p>



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		<title>OreKyu-05-002:続く違和感と……</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Sat, 22 Oct 2022 23:27:25 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[|<∀8∩Σ!・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　何とはなしにテレビを点けてみるけども、そこではのんびりと情報番組が放送され始めたところだった。天気も良いらしいし、平常運航だ。観光日和になるだろう。 　だがやはり、何かが変な気がする。やっぱりまだ夢の中 [&#8230;]</p>
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<p>　何とはなしにテレビを点けてみるけども、そこではのんびりと情報番組が放送され始めたところだった。天気も良いらしいし、平常運航だ。観光日和になるだろう。</p>



<p>　だがやはり、何かが変な気がする。やっぱりまだ夢の中にいるのだろうか。</p>



<p>「メグ」<br>「うん？」<br>「キャスターって前からこの人だったっけ？」<br>「うん？　だいぶ前からこの人たちだったと思うよ？」</p>



<p>　そうだったかなぁ？</p>



<p>　ジッ――。</p>



<p>　ああそうか。こんな時間にテレビ点けることがあまりないもんな。</p>



<p>　俺は部屋に備え付けのコーヒーを淹れて頭をしゃっきりさせようとする。</p>



<p>「なんかぼんやりするんだよね」<br>「昨日遅くまでガンタンク作りに付き合わせちゃったから。ごめん、自重するよ、ぱぱ。次のガンタンクは旅行から帰ってからにする。ていうか、ガンプラコーナー自体を自重するよ」<br>「うん、まぁ、それはいいんだけど」</p>



<p>　でもやっぱりなんか変だ。ここまでぼんやりしている理由もない。札幌出張は手慣れたものだ。だからそれほど疲れてもいなかったはずだし、場所に慣れてないからとかそういうわけでもない。まして仕事でさえないのだから、もっと元気で良いはずだ。寝たのは確かに遅かったかもしれないけどな。</p>



<p>　俺は軽く伸びをして言った。</p>



<p>「とりあえず朝飯を食ったら明日の計画練ってぶらぶらしようか」<br>「そうだね。今日は平日だからリーマンいっぱいいるだろうけど」</p>



<p>　皆が働いているときに休みを取れているというのは、ちょっとした優越感だ。それになにより新婚旅行中である。楽しくないはずがない。</p>



<p>　六時半になるのを待って、俺たちはレストランに向かう。</p>



<p>　あれ？　——またも違和感。</p>



<p>　こんなに狭かったっけ、ここのレストラン。俺たちは飛び切り豪華なホテルを予約したはずだった。だが、レストランはまるで田舎の食堂のような広さしかなく、ビュッフェとして用意されている食事もどれもかなり小ぢんまりとしていた。</p>



<p>　しかしメグはと言うと、目の前の食事を手慣れた様子で取り皿に確保し始めていて、特に何も感じてはいない様子だった。</p>



<p>「ねぇ、メグ。ここのレストランってこんなもんだったっけ？」<br>「え？　かなり豪華な方だと思うけど。どうしたの？」</p>



<p>　そんな反応だ。ここで議論してもしょうがないと思った俺は、とりあえず料理を取って席に着く。ちなみに料理は確かに絶品で、朝食とは思えないほど豪華ではあった。不満は特にない。</p>



<p>「美味しかったね。さ、部屋戻ってチェックアウトしなきゃ」</p>



<p>　メグはニコニコしながらそう言った。俺は少し思案して提案する。</p>



<p>「その前にさ、まだ時間あるから散歩してみようよ」<br>「ん？　ああ、そうか。手ぶらで歩けるね、まだ」<br>「そうそう」</p>



<p>　俺は話を合わせて、さっそくメグと二人で早朝の札幌に出た。</p>



<p>　時間が時間だったから車も人もない。ただし、どの店もまだ開店前だ。</p>



<p>「ここからだったら時計台がすぐだね。見に行こうか」<br>「うん、行こう行こう！」</p>



<p>　俺たちは腕を組んでスマホの地図機能を頼りに歩いていく。時々タクシーの類は見かけたが、一般車はほとんどいない。それになんだか建物も少ないような。</p>



<p>「ねぇ、メグ。札幌って二百万都市だったよね」<br>「へ？　何言ってるの？　二百万都市って東京のことだよ？　世界有数の人口密度を誇る東京でやっと200万を超えたって発表があったばかりじゃない」</p>



<p>　ジッ――。</p>



<p>「あ、そっか。ごめん、なんか俺そういうの苦手で。なんか札幌ってこんなんだったかなぁって」<br>「出張で何回も来たじゃない。今も昔もこんな素朴な町だったよ」<br>「そっかぁ……」</p>



<p>　違和感がぬぐえなくて、俺はたまらなく不安になる。まるで夢でも見ているかのようにちぐはぐだ。</p>



<p>「ねぇ、メグ。俺、頭でも打ったかなぁ」<br>「どうして？　具合でも悪いの？」<br>「具合は悪くないんだけど、なんか違和感みたいなのがすごくて」<br>「違和感？」</p>



<p>　目を丸くするメグである。彼女は何も感じていないのだろうか。</p>



<p>「なんか俺の知ってる札幌と違うって感じがしてならないんだよなぁ」</p>



<p>　もっと大都市だった気がするんだけど。北海道の中心地だし。</p>



<p>　ジッ――。</p>



<p>　でもこんなもんだったかなぁ。</p>



<p>　俺は目の前に現れたちっぽけな建物に「うーん」と唸る。メグはさっそくスマホで写真を撮り始めているが。確か時計台って、ビルが邪魔してきれいな写真が撮れないはずじゃなかったっけ。こんな何もないところにポツンと建っていたんだっけ……。</p>



<p>　やっぱり違和感しかない。</p>



<p>「ねぇ、メグ。今日って何日だったっけ」<br>「本当に大丈夫？　具合悪いんじゃない？」<br>「いや、問題ないけど、なーんかぼんやりしてるんだよね」</p>



<p>　俺はスマホを見て、唸る。五月二十日月曜日。元号が変わって……元号？　ってなんだっけ。</p>



<p>「二〇一九年五月二十日ですよ、ぱぱ」</p>



<p>　まさか元号の意味を訊くわけにもいかず、俺はこっそりとネットで調べた。が、元号は江戸時代で廃止された……なんて書いてある。おかしいなぁと思う。いや、俺の頭がおかしいのか。</p>



<p>　ふと立ち眩みがして、俺は時計台前の広場に思わず腰を下ろした。</p>



<p>「ごめん、ちょっと休む。五分たったら突っついて」<br>「うん、だいじょうぶ？」<br>「わかんない。ごめん、メグ」<br>「いいよ、五分で良いのね」<br>「うん」</p>



<p>　俺はメグに膝枕されながら目を閉じた。その途端、俺の意識は落ちていった。</p>



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