本作品は「カクヨム」を中心に多数のサイトで掲載されているものの、いわゆるリマスター版です。全面書き直しで進めていく予定です。
2022/02/12連載開始しました ……と思ったんですが、一端取り下げました!(2023/04/02)
作品概要
西暦2022年――取り立てて取り柄もなく、取り立てて欠点もない、至って普通のシステムエンジニア、それが羽斯波という人物だ。そしてこの羽斯波という男は、突然のテロに巻き込まれて命を落とす程度には不幸である。羽斯波には、人類に対して世界の終わりが告げられたかどうかは判然としなかった。なぜなら誰よりも先に死んでいたからだ。少なくとも物理的には間違いなく。強烈な熱線にさらされた結果として、瞬き一つに満たぬ時間で原型も留めないほどに消し飛ばされていたからだ。
しかしある日、どうしたことか羽斯波は暗い病室で目を覚ます。目の前にいるのは黒尽くめの美女・黒咲。彼女は「敵が来るからさっさと起きて戦え」と言う。やがて現れたのはヒグマのような巨漢・北耶摩。北耶摩はおもむろに「バハムート」と呼ばれる金属の巨大なドラゴンのようなものを召喚した。なんでもないことのようにサクッと「バハムート」を召喚したのだ。
状況が全く理解できない羽斯波。しかし彼は、武器の一つも与えられぬまま、ヒグマ男こと北耶摩および彼が召喚したバハムートと戦わされることになる。ちなみに黒咲はというと、後ろから「戦え」「何とかしろ」と(偉そうに)言うだけで助けようとすらしなかった。羽斯波の第二の人生は、そんな気の毒な状況で幕を上げる。
そしてその流れのまま、羽斯波は一切の説明を与えられぬままに、熾烈な戦いの渦中へと投入されてしまう。まるで大炎上プロジェクトに、増援として(なんの説明もなく)送り込まれたエンジニアのように。それは既存プロジェクトとの兼任風味さえある――と、羽斯波は思ったりもした。
羽斯波の知る「人類」は、この世界では「旧人類」と呼ばれていた。その一方で、黒咲や北耶摩といった変態的な能力を有する人類のことは「超人類」と。どうやら、羽斯波もそっち側の人間らしい。「めちゃめちゃ不本意だ」と羽斯波は言うが、彼の前の人生も基本的に不本意の連続だった。だから彼は不本意プロフェッショナルと言える。よって、なんら問題はない。
超人類たちは、『ニューロ』と『ナーヴ』という組織に分かれ、互いに「血」を求めて争っている。殺した相手の能力に応じて、殺した側は強くなり、そしてまた彼らは「血」を得ることなしには生きられないのだ。旧人類たちの血にはさほどのエネルギーはないが、それすらも飢えを凌ぐために利用する。もともと「人類」と呼ばれていた人々は、彼ら超人類にとっては単なる食料の一種に過ぎないのだ。そう、彼らが人を殺すのは、本能あるいは衝動のようなものゆえ、なのだ。「だからって仕方ないってことはないだろう」と羽斯波は思うのだが、「仕方ないでしょ」と上司こと黒咲に言われたら「ですよね」と応えてしまう。骨の髄まで社畜体質だから、羽斯波にとっては上司の命令は絶対なのだ。残念な男である。
羽斯波は入社早々大炎上プロジェクトに投入された中途採用社員のような立場で、何もわからぬまま右往左往東奔西走の末に、プロジェクト大炎上の原因に行き当たる。
羽斯波の所属する(させられている)『ニューロ』の総帥である綺隆の目論見。そして『ナーヴ』の最高指導者=教皇・仇志野がなぜ『ニューロ』から離れ、『ナーヴ』を組織して綺隆と敵対したのか。ちなみにいうと、この大炎上しているプロジェクトというのは、総帥・綺隆が自ら立ち上げたものだった。当然、社畜たちは文句を言えない。不満はあっても――あるいは生命の危機に瀕していても――文句を言えない。言わない。言っている自分を想像はしても決して行動に移すことはない。文句を言えた癖のある社員が仇志野について離脱したとも言えるかもしれない。羽斯波は彼らを羨ましいと思いつつ、その踏ん切りはつけられない、と思う。社畜体質だから。
そんな羽斯波に、教皇・仇志野は囁くのだ。
――旧人類を喰らうのも、超人類同士で殺し合うのも、僕らの……ぶっちゃけ言っちゃえば、義務みたいなもんなんだ。君が僕らについてくれれば、あるいは――。
主要人物紹介
- 羽斯波:主人公。20代後半。システムエンジニアで社畜脳。メガネがトレードマーク。基本的に愚痴ってる。「おじさん」と言われるとイラっとするが、社畜脳なのでイラっとするだけである。なお、メガネがないと力が出ない。
- 黒咲:ニューロに所属する主人公の上司みたいな女性。凄腕の剣士だが、鬼か悪魔か。とにかくすべてに対して容赦がない。羽斯波曰く、ブラック企業のブラック上司。短距離転移という反則級の固有スキルを持っている。これを使いながら敵に忍び寄って背後からバッサリ。あるいは普通に切りあってる最中に不意に敵の背後にワープして刀でバッサリ。なかなか卑怯な技の持ち主なのだが、正面から戦っても恐ろしく強かったりするので始末におえない。
- 北耶摩:ナーヴに所属している。つまり敵。ヒグマのごとき巨漢。おっさんである。「アルファ」と呼ばれるものの一種、「バハムート」を呼び出して戦う他、自分自身もこの時代では最強の剣士。最強の剣士が最強のアルファを従えているという地獄。大炎上プロジェクトの只中にあったとしても平然と定時上がりを決め込むほど自分を確立している男である。そしてまた、意外と話の分かる人物でもある。上司にするなら黒咲よりはベター!(羽斯波曰く) でも結局のところはやっぱりブラック気質である。羽斯波は暗黒社畜なので、そのくらいでもまだマシと判断するのだ。羽斯波は常に「現状よりマシか否か」という相対評価の男なのである。社畜だから。でも羽斯波以外の登場人物中、一番常識人な思考回路を持ってるのは彼かも知れない。
- 綺隆:ニューロの総帥。羽斯波、黒咲らのBOSS。現状が大炎上しているのはすべて彼の「計画通り」である。とんでもないCEOである。アルビノの美青年だが何を考えているかよくわからない人物。部下たちとの意思疎通も一方通行なので、炎上もむべなるかな、である。羽斯波は初見で「こいつぁやべぇやつだ」くらいに思っている。実際にけっこうやべぇやつ。社畜的にはタイムカードを18時00分で切らせるくらいにやばいやつ。いや、有給休暇の理由を聞いて、軽々しく却下してくるくらいやばいやつかもしれない。
- 仇志野:ナーヴの教皇(=ナーヴの最高権力者)だが、いわゆるJKである。高校生ではないが17歳くらいなので自称JK。一人称は「僕」。そのうえものすごい毒舌家。伊達に綺隆のプロジェクトから堂々と離脱していない、すさまじい胆力の持ち主。もちろん、大炎上の被害者でもある羽斯波に対しても爽やかに猛毒を吐くし、平然と「おじさん」呼ばわりするが、羽斯波は有能な社畜脳の持ち主なので、悪口や酷いシチュエーションにも意外と耐性がある。
作品目次
今、再構成中です。しばらくお待ち下さいorz
(以下続きます)
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