本書「薄紅色コスモスの花束」は、2022年2月に発売された佑佳さんによる物語です。文芸社さんですが、自費出版ではないのですよ。そして実は私、発売日に購入していたんですね~。その後Kindle版も購入。というのは、紙媒体だとちょっと持ち歩くのに1STEP必要だなーと感じたからです。また、私、目が悪くなってしまって、紙媒体だとちょっと暗いと読めなくなってしまったんですね。通勤の帰りのバスとかじゃもう苦痛なくらい、目が悪くなっちゃって。
でもってまぁ、結局その後、1年半以上読まなかったんですけど。
何してた? 絵を描いてた。というのがシンプルな答えです(-x-; 一分一秒でも惜しかったんですね、絵を描きたくて。まぁ、書籍1冊、読もうと思えば読めたじゃんって思ったりもしますが(かかっても数時間ですし)、そこは気持ちの問題ですね。もうしわけない。
ここまでの読書感想文はこれ含めて計3つありますが、どれもTwitter(X)を通じて交流のある作者さんだったりします。特に佑佳さんは私と同じ北の大地住みw 多分そう遠くないところで生きてるんじゃないかなww という感じなので勝手に距離感近く感じています。
毎度悩むのが、ネタバレナシでどの程度作品の魅力を伝えられるのかという点。ものすごいスキルなんだなーって思うんですよ、書評的なヤツ。がんばろう。
これはですね、「大型連休・2時間ドラマ・3夜連続放送」枠だと思います。こと私が好きな小説のタイプってのは「映像化できる」文章なのですが、本作は見事に映像化できますね。現代日本が舞台というのもありますが、「登場人物」が動いているんですね。いわば自発的に。
そしてまるで風景のように自然に意識させないところでちゃんと情景描写もされていて、ゆえに情景描写が人物の邪魔をしない。人間関係が軸にある(多くの物語はそうだと思いますが)、それを彩る形で背景の描写がある。そして小物の存在。それは本作の場合「花」と「酒」なんですが、この使い方が実に上手いなーと感じました。スナック、アパートの前の道、主人公のアパート、駅前、居酒屋そういう「場」もいい感じに明暗を付けているなとも。
で、登場人物の話に戻りますけれども。
主人公の「未咲」。この子はですね、「人の顔をよく見ている」子ですね。じゃないと同い年の青年・都築の表情をミリ単位で分析できるはずもない。とにかく人の顔を見てます。スナックのママの顔とかもそうだし、途中で出てくる重要人物の顔もそうだし。とにかく顔。要は、この子は物怖じせずに他人の目を見て話ができる子ってことになります。18、19歳の女の子でそんな態度されたらキュンと来ますね。作中キュンと来てるBoyがいたりしますけど。まぁ、あと、顔を見て話ができる、人の話を聞く耳を持ってる子ってのはそれだけで「人たらし」の才能がありますからね。私の見立てでは、この主人公は(もちろん生来の性格はあるにしても)無意識的人たらしです。そのくせ「鈍感」です。そらもう歯がゆくなるほど鈍感です。まぁ、この辺掘り下げるとネタバレになっちゃうので。
あとは主人公、(鈍感だけど)めちゃめちゃ頭の回転が良いんですね。「成績が(ものすごく)良い」という描写も主人公の頭脳回転力を補強していますが、とにかく一本芯が通っている上に頭の回転がいいんです。そのくせとても「良い子」なので、他人を傷付けることとか心配させることとか気遣いさせることにとても臆病で、結果として悩んだりもするわけです。リアルな感じですね。私は年頃の女子になったことがないので推測ですが、多分そういう系統の女子としてはとてもリアルだと思います。
登場人物について語っちゃうとそれすなわちネタバレになってしまうのであまり喋れないのがちょっとアレですが、私の(そしておそらく多くの読者の)イチオシが、「スナックゆき」の小幸ママ。ママは物語の(主人公を除いて)いっちばん最初に出てくる人物で、もちろん最後までいます。人生の先輩的なポジションであり、キーパーソンでもあり。物語の舞台の多くを占めるのがこの「スナックゆき」。常連客なんかは大御所俳優がサラッと集まってそうなイメージがあります。シリアスからどんちゃん騒ぎまでこなせる名バイプレイヤーな女優さんが良いなと思いますが、下手に名前を上げるとこれから読まれる方の想像力を阻害するので自重。
そして忘れちゃいけないのが我らが都築くんです。これがねー、イケメンなんですよ。未咲が人の顔を見る(観察する)のが得意というなら、都築くんは人の空気を読むのが上手い。自分ゴトになるとわりかしポンコツなんですが、それでも漢であろうと「静かに」スタンスを貫くところがイケメン。自己主張はここぞってところでしかしないくせに、存在感がやたらとある。「男を図る言葉は口数じゃねぇ、何を言うかだ」的なことは言いませんが、そういうのを体現している人物じゃないかなと。未咲にとって良いメンター(的なポジション)でもあるなぁと。こと自分のことになると鈍感が加速する未咲に対して、いい感じに自分を見つめ直させるその手腕はなかなか真似できません。話聞いててもつい喋っちゃうもんね、私なんて。「聞く力」のとても強い青年ですねぇ。
と、人物中心に書いてみましたが、物語は人物あってなんぼ。読んだ人が「その登場人物について語れる」ものでなければ、物語としては不成立だと思っています、私は。なので、「語りたくなる人物」がたくさんいる物語というのは、それだけで「生きている」ものだといえます。
物語の核心部分(に至る部分も)は敢えて触れません。ちょっと読んでみればわかることなので。私は読み始めたら一気読みでした。だいたい「この鈍感、気付けよ!」ていうやきもき(笑)した気持ちで読まされました。恋愛小説というのとはちょっと違います。もちろんその要素はありますけど、もっとこう、あー、言っちゃうと即ネタバレになっちゃうので歯がゆいですが、まぁ。ドロドロの恋愛劇とかやれ嫉妬だやれ罠だとかそういうのではないです。ドロドロ要素ナシ。スッキリした喉越しの物語です。「とうきび焼酎」――私はお酒が飲めないので実体験としてどんなもんかはわからないんですが、多分そういう感じの物語です。指三本氷二つで。
私はコカ・コーラをロックで飲みます。
というわけで是非。
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