美味兎屋

美味兎屋・本文

セイゼン眼球ケーブル 第参話

承前 乱雑な室内が、赤色灯の揺らめきに彩られる。 こんなはずはない。私がいない。 私は傍らの《《肉》》の両肩をつかみ、私に正対させた。潔く開いていた頭半分を、かぱりと乱暴に閉める。昔ながらのタワシの|如《ごと》きボサボサの黒髪が顔を隠してい...
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セイゼン眼球ケーブル 第弐話

承前 男に導かれた先はだだっ広い空間だった。一般的には|居間《リビング》というのだろうが、それにしては異様なほどに広かった。外観からは想像もつかない。例えて言うなら、民家だと思って入ったのに、床面積はヴェルサイユ宮殿――というのはいくらなん...
美味兎屋・本文

セイゼン眼球ケーブル 第壱話

 頭がクラクラする。意識が朦朧として、まるで湿った|蒟蒻《こんにゃく》の上を歩いているようだ。着ているものは|草臥《くたび》れて、靴もいいだけ擦り切れていた。古びただけならまだ貫禄があるとも言えようが、冷静に我が身を振り返ってみれば、羽織っ...
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啾啾ト哭ク赤イ布 第参話

承前 待つこと一分、いや、十分。あるいはもっと、かもしれない。よくわからない。 男の手の中には、赤い布の塊があった。ぴっちりと巻かれた白かった布が、今や赤く染まっていったのだ。申し訳程度に開いている穴からは黒い鼻のようなものが覗き、布の隙間...
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啾啾ト哭ク赤イ布 第弐話

承前 その声に、思わず足が止まった。《《ぴたり》》と。私の足が。 背中の毛穴全てが、ワイシャツ内の湿度を何倍にも増加させる。硬直する身体を強引に|捻《ひね》る。結論から言えば、そこにいたのは《《闇》》ではなかった。通り過ぎたばかりの一戸建て...
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啾啾ト哭ク赤イ布 第壱話

 私は悔しかった。そして途方に暮れていた。 誰に怒りをぶつける事も、愚痴を言う事もできない。ただ、白いままの自分の手を握り締めるだけだ。私は何も出来なかった。意気地なしと言われても仕方なかった。それでも、何とかしたいと思っていても、本当に自...
美味兎屋

美味兎屋 – 扉頁

品書壱 - 啾啾ト哭ク赤イ布第壱話第弐話第参話弐 - セイゼン眼球ケーブル第壱話第弐話第参話幕間漸近シタコトニ対スル所感ヲ述ベル参 - ゼロゼロシイタグ第壱話第弐話第参話肆 - 循環想像リアクション第壱話第弐話伍 - 寝癖ナオシ帽子第壱話第...
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