ロストサイクル・本文

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LC-04-001:白塗りの天井

 目を覚ますと同時に、僕は左肩の激痛に思わず叫んだ。 すぐに年配の看護師さんが駆けつけてきて、僕のバイタルをチェックする。「春賀|正月《まさつき》さん、わかりますか?」「は、はい」 ひさびさに本名を呼ばれて、一瞬僕は混乱したりしたのだけれど...
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LC-03-005:破損した仮面

 僕らが教室に収まるのを待っていたかのように、ドアが乱暴に開けられた。僕らを含めたクラスメイトたちは、一斉に教室前の方にあるドアに注目した。あまりの勢いで開けられたドアが、外れて廊下で派手な音を立てた。「チョッカ……」 誰かが――ていうか、...
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LC-03-004:チェーン・リアクション

 翌日、五月十日、木曜日。昼休み現在、チョッカは学校に来ていない。そのことについて夏山ルリカは随分と気に病んだ様子を見せていた。「昨日何かあったの?」 僕は少しの気まずさを隠しながら、夏山ルリカに尋ねた。夏山ルリカは僕の前の席を後ろに向けて...
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LC-03-003:アンメモライズド・キス

 僕が狙われている? さっきの今だ。その可能性があるなとは薄ら思っていたが、いざそれを突き付けられるとさすがに平静ではいられない。「あなたが見たのは白髪の男でしょう?」「え、うん」 そう、白髪の男だった。猫背で、その目は爛々と輝いていた。獲...
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LC-03-002:記憶のホログラム

 その日、夏山ルリカは僕と一緒には帰らなかった。部活に寄ったというわけではないだろう。チョッカは無事に告白できたのだろうか。夏山ルリカはどういう返事をしたのだろうか。僕はバスの中でも無性に落ち着かなかった。苛立っていたと言っても良い。思わず...
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LC-03-001:群体と個体

 なんだか大きな喪失感を感じながら、僕は窓の外をぼんやり眺めていた。ぽっかりと何かが抜け落ちてしまったような、そんな薄ら寒さを覚える五月九日水曜日。 昨夜は夏山ルリカを家に送るのに一緒についていき、タケコさんとはそのまま軽くドライブをした。...
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LC-02-004:内閣府情報調査室?

 WRXは静かに夏山ルリカの自宅から離脱する。滑らかな加速により、夏山ルリカの姿が遠くなっていく。彼女の浮かべていた不安げな表情は、今まで見たことのないものだった。「ふう」 赤信号で捕まってようやく、タケコさんは声を出した。出発からこちら、...
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LC-02-003:ぐるぐる廻る

 午後七時を少し回ったところで、僕らの勉強は終わった。終わったと言っても、夜また少し勉強しないとならないのだけれど。忘れかけているが、僕たちは受験生なわけで、それはつまり、一日二時間程度の勉強で足りるはずがないということでもある。もっとも僕...
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LC-02-002:還屋は何番目?

 その翌日、五月二日、ゴーキは学校を休んだ。皆勤賞が狙えるんじゃないかってくらいに休まなかった男が休んだことに、僕と夏山ルリカ、そしてチョッカは揃って驚いた。何かあったんじゃないかなんてチョッカは言ったけど、僕と夏山ルリカは「鬼の|霍乱《か...
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LC-02-001:濡れた女子大生

 四月は何の滞りもなく過ぎた。タケコさんは週に三回ウチにやってきて僕に勉強を教え(主に模擬試験の答え合わせとそれについての詳細な解説なのだが)、夏山ルリカは部活を半ば引退したために、土曜日を含めて週三回はウチにやってきていた。夏山ルリカは学...
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