小説

美味兎屋・本文

啾啾ト哭ク赤イ布 第参話

承前 待つこと一分、いや、十分。あるいはもっと、かもしれない。よくわからない。 男の手の中には、赤い布の塊があった。ぴっちりと巻かれた白かった布が、今や赤く染まっていったのだ。申し訳程度に開いている穴からは黒い鼻のようなものが覗き、布の隙間...
美味兎屋・本文

啾啾ト哭ク赤イ布 第弐話

承前 その声に、思わず足が止まった。《《ぴたり》》と。私の足が。 背中の毛穴全てが、ワイシャツ内の湿度を何倍にも増加させる。硬直する身体を強引に|捻《ひね》る。結論から言えば、そこにいたのは《《闇》》ではなかった。通り過ぎたばかりの一戸建て...
美味兎屋・本文

啾啾ト哭ク赤イ布 第壱話

 私は悔しかった。そして途方に暮れていた。 誰に怒りをぶつける事も、愚痴を言う事もできない。ただ、白いままの自分の手を握り締めるだけだ。私は何も出来なかった。意気地なしと言われても仕方なかった。それでも、何とかしたいと思っていても、本当に自...
美味兎屋

美味兎屋 – 扉頁

品書壱 - 啾啾ト哭ク赤イ布第壱話第弐話第参話弐 - セイゼン眼球ケーブル第壱話第弐話第参話幕間漸近シタコトニ対スル所感ヲ述ベル参 - ゼロゼロシイタグ第壱話第弐話第参話肆 - 循環想像リアクション第壱話第弐話伍 - 寝癖ナオシ帽子第壱話第...
Aki.2093・本文

02-004「意志を産むマトリクス」

←previous episode> contents = talk.setTopic("Matrix","Will","GradiusRing") アサクラは状況を確認した後、ゆっくりと眼鏡を外した。輝きのないその瞳は、まるでアヴァンダの...
魔女のオラトリオ・短編

暗黒の魔女は、彼岸の色に染まる(3)

「魔女のオラトリオ」関連短編――。←(2)へ ターニャは表情を|強張《こわば》らせたまま、マグダレーナの長身を見上げる。マグダレーナはターニャの肩を叩くと、「荷物をまとめよう」と言った。「先生、あの、先生の部屋の……」「あれはアタシの自己満...
Aki.2093・本文

02-003「レヴェレイタ」

←previous episode> Organization orgn = new Organization()> orgn.named = "revelator"> GradiusRing.setAnalyzer("cherubim")...
Aki.2093・本文

02-002「ジ・オリジン」

←previous episode> AvanDa.create("doll",10)> doll.each: setTarget("Auto")> AvanDa.keepAction(true) アキとミキは戦争末期に生み出された|機械化...
魔女のオラトリオ・短編

暗黒の魔女は、彼岸の色に染まる(2)

「魔女のオラトリオ」関連短編――。←(1)へ マグダレーナはその場から一歩も動かない。飛来する光や炎の槍を時々払い落とすくらいで、動きも最小限だ。「そろそろあの子が戻ってきちまう」 それとも、《《真実》》に気が付いて動けないか? マグダレー...
Aki.2093・本文

02-001「クロースコンバット」

←previous episode> AvanDa.getSetGoal(... デタラメにも程があらぁな――ヒキはそう言った。 確かにねと、アキ達は同意した。 映像で見るのとは、迫力がまるで違う。身の丈五十メートルに達する巨体。青白い何か...
スポンサーリンク