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	<title>第一話 - -創発領域-</title>
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	<description>Life&#039;s but a walking shadow...</description>
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		<title>BD-01-01：行き倒れ寸前の錬金術師の少女は命を賭けて交渉する</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 23 Apr 2023 04:43:22 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[赤の魔神と錬金術師・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<category><![CDATA[第一話]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0　めちゃくちゃ。 　めちゃくちゃ、おなかが、すきました。 　生命維持に必要な栄養は、おくすりで摂取できる。だからかろうじて死んではいない。しかしそれにしても、この一週間、おくすり以外、何一つ胃の中に入ってい [&#8230;]</p>
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										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="5081" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<p>　めちゃくちゃ。</p>



<p>　めちゃくちゃ、おなかが、すきました。</p>



<p>　生命維持に必要な栄養は、<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">お</span><span class="boten">く</span><span class="boten">す</span><span class="boten">り</span></span>で摂取できる。だからかろうじて死んではいない。しかしそれにしても、この一週間、<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">お</span><span class="boten">く</span><span class="boten">す</span><span class="boten">り</span></span>以外、何一つ胃の中に入っていない。野草でも食べようかとも思ったが、不幸にしてこの地方の植物の知識はなかった。</p>



<p>　褐色の肌の少女は、小さな広場の木陰にぐったりと腰をおろしている。</p>



<p>　彼女は遥か北方のアイレス魔導皇国から旅を始め、アルディエラム中央帝国を突っ切り、メレニ太陽王国を横断した。だが、そこで路銀が尽きてしまった。目的の<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">物</span></span>の手がかりはほとんど得られなかった。ここから南の方向にあるディンケル海洋王国にあることだけはほとんど確信が持てたが、王都にたどり着くための足代がなかった。</p>



<p>「メレニのギルドがあんなにわからず屋だとは」</p>



<p>　恨み言を口にするが、当然事態は好転しない。少女の言うギルドとは、錬金術師ギルドのことだ。メレニの錬金術師ギルドは、お金を貸してくれなかった。理由すら曖昧だったが、大方嫌がらせだろうと少女は思っている。</p>



<p>　史上最年少の三級錬金術師、それがこの痩せ細りやつれた少女、シャリーだ。風に遊ぶはずの長い黒髪も、長旅で汚れていて絡まっていた。青緑という不思議な色合いの瞳も曇っている。肩書、功績、なんとなく目立つ容姿、それらすべてがシャリーにとって不利に働いたのだ。</p>



<p>「うう、お腹が」</p>



<p>　ぐぅぐぅと鳴り続ける胃腸。シャリーは手を当ててなだめすかそうとする。</p>



<p>「こんな街で霊薬買い取ってくれるところなんてないし」</p>



<p>　シャリーはカバンから小瓶を取り出し、水筒から一口分の水を注いだ。そして落ちていた小石を拾うと、小瓶の中に落とし入れた。そして瓶の蓋を閉じて、両手で包み込み、目を閉じる。</p>



<p>「いち、にぃ、さん」</p>



<p>　三つ数えて両手を広げると、小瓶の蓋を取って中身をあおった。小石だけを器用に避けて飲み干し、小瓶をひっくり返して小石を捨てる。一度<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">使</span><span class="boten">っ</span><span class="boten">た</span></span>石は、しばらく使えないからだ。</p>



<p>「生き返るぅ」</p>



<p>　シャリーは真南に輝く夏の太陽を見上げて息を吐いた。これがシャリーお手製の<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">お</span><span class="boten">く</span><span class="boten">す</span><span class="boten">り</span></span>である。簡単に言えば栄養ドリンクだ。あまりに効果が強力なので、服用は一日三回――シャリーはそう決めてそれを忠実に守っていた。それ以上飲むとおそらく<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">良</span><span class="boten">く</span><span class="boten">な</span><span class="boten">い</span><span class="boten">効</span><span class="boten">果</span></span>が出てくるだろうと見込んでのことだ。錬金術師はこのようにして霊薬を作れるが、その運用には正確な知識も必要なのだ。</p>



<p>「とりあえず王都に行かなくちゃ」</p>



<p>　少女は頷いて立ち上がる。荷物も食料がなくなった分軽い。だがこれは生命の危険を感じる軽さだ。</p>



<p>　なんにしても、まずは王都に行かないと。そして<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">魔</span><span class="boten">石</span></span>を手に入れないと。</p>



<p>　<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">魔</span><span class="boten">石</span></span>がなければ昇格試験には合格できない。夢が叶えられない。</p>



<p>　シャリーは意を決して、目の前に止まった乗合馬車の御者に声をかけた。</p>



<p>「あのぅ！」<br>「おわっ、びっくりした。お、お嬢ちゃん、大丈夫かい？」</p>



<p>　馬を繋いでいた御者の男は、心底驚いた表情を見せた。シャリーがあまりにも痩せこけ、やつれていたからだ。</p>



<p>「お腹が空きました！」<br>「物乞いかよ」<br>「いーえ」</p>



<p>　シャリーは気丈に首を振る。御者の男は眉根を寄せて首をかしげる。</p>



<p>「この馬車、ディンケル海洋王国まで行きますか」<br>「何言ってんだい、お嬢ちゃん。この村はもうディンケル領だぜ？」</p>



<p>　御者の男が肩を<ruby data-rt="すく">竦<rp>（</rp><rt>すく</rt><rp>）</rp></ruby>める。</p>



<p>「え？　そうなんですか？」<br>「ああ、まぁ、このへんは勢力図がわかりにくいからな、無理もないが。つーか、お嬢ちゃん。あんた今、ディンケル語で喋っているじゃないか」<br>「あ」</p>



<p>　そういえばそうだったとシャリーは頭を搔く。いつの間にかメレニ言語圏からディンケル言語圏に変わっていたらしい。シャリーは旅立つ前にしっかりと各国の主要言語を学んできていたから、会話に苦労をしたことはなかった。ここまで来る乗合馬車の中で喋っていた商人たちがディンケル語を使っていたことも関係あるかもしれない。</p>



<p>「ま、まー、それはいいとして。それでですね、あの、ものは相談なんですが」</p>



<p>　シャリーは素直に金が無いことを伝え、料金は王都に着いたら錬金術師ギルドで調達するから云々と交渉を開始した。</p>



<p>「いやいや、そりゃ無理だよ、お嬢ちゃん。そもそもお嬢ちゃんのその身なりで錬金術師でございと言われてもさ。錬金術師っていえば、みんな貴族みたいな暮らしをしているそうじゃないか。三級、つまり<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">青</span></span>ともなれば特権階級だ。どこの世界にこんなズタ袋みたいな<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">青</span></span>がいるってんだ」<br>「ず、ズタ袋……。あ、そうだ。私のこの霊薬、プレゼントします！」<br>「いらないよ、そんな得体の知れない水」<br>「ず、頭痛止めもありますぅ」<br>「お嬢ちゃん、悪いこたぁ言わねえから、諦めなよ。そこの酒場で皿洗いでもして金を稼いだらどうだ」<br>「人手は足りてるって断られちゃいましたぁ……」</p>



<p>　シャリーは首を振る。</p>



<p>「ごはん代ももうないんですぅ」<br>「ハトでも出して食えばいいじゃないか」<br>「錬金術師は手品師じゃありませんし、私の国ではハトは食べません」</p>



<p>　シャリーと御者の<ruby data-rt="にら">睨<rp>（</rp><rt>にら</rt><rp>）</rp></ruby>み合いは続いたが、やがてシャリーは唇を尖らせた。</p>



<p>「うー……わかりました。歩いて行きます」<br>「ばか言うなよ、お嬢ちゃん」</p>



<p>　御者は勢いよく首を振る。</p>



<p>「ここから王都まで、馬車で飛ばしても最短でも一週間はかかるんだぜ。山もいくつか越えなきゃならないし。道中嵐も来ているって情報も出てる。飯も食わずに行けるところじゃない。妖魔だって盗賊だって出るかもしれないぞ」<br>「いいんですもん。<ruby data-rt="のた">野垂<rp>（</rp><rt>のた</rt><rp>）</rp></ruby>れ死ぬならそれでいいんですもん。おじさんが私の生命の炎を消そうとしているんですよ。いいんですか？　あ、いいんですね。いいんです、おじさんだって商売ですから。私なんてどうなったって商売のほうが大事ですもんね。でもそれはさておいて、私、死んだら絶対におじさんを<ruby data-rt="たた">祟<rp>（</rp><rt>たた</rt><rp>）</rp></ruby>ります。絶対にです」</p>



<p>　一息でそう言って、シャリーは<ruby data-rt="うる">潤<rp>（</rp><rt>うる</rt><rp>）</rp></ruby>む瞳で御者を見上げたのだった。</p>



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		<title>WA-00-00：劫火に沈む街</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Tue, 22 Nov 2022 11:44:29 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[大魔導と闇の子・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<category><![CDATA[第一話]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　居住人口三千あまり。しかし各地から無数の人々が流入しては去っていく、不夜の都。その魔導都市は、皇国のどこよりも発展し、栄えていた。強固な結界によって守られ、魔物や異形といった外敵から守られた、アイレス魔 [&#8230;]</p>
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<p>　居住人口三千あまり。しかし各地から無数の人々が流入しては去っていく、不夜の都。その魔導都市は、皇国のどこよりも発展し、栄えていた。強固な結界によって守られ、魔物や異形といった外敵から守られた、アイレス魔導皇国北部における唯一の安全地帯だった。</p>



<p>　だがそれも今や過去形だ。この都市を守るはずの不可視の結界が、この都市から逃げ出そうとする人々の道を<ruby data-rt="はば">阻<rp>（</rp><rt>はば</rt><rp>）</rp></ruby>んでいた。都市は中心部から陥没を始め、その穴からは間欠泉のように白色の炎が吹き上げていた。炎は建物も人間も等しく<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">溶</span><span class="boten">か</span><span class="boten">す</span></span>ほどの高温だった。熱と絶望から逃げ惑う人々は、しかし都市中心部から広がる穴からは逃げられず、次々と飲みこまれていった。</p>



<p>　その一方で結界の外側は、酷寒だった。一面の雪に覆われた大地は、見渡す限り何もない。月明かりを受けて輝く青い雪影が、ただひたすらにどこまでも続いている。細かく鋭い雪華が、都市から発される阿鼻叫喚の輝きで、幻想的に金色に揺れ惑う。</p>



<p>「これは、天罰だと思うか」</p>



<p>　結界のすぐ外に立っている白銀の甲冑を付けた白髪の青年が、呟いた。氷のように青い瞳が、凄惨に燃える都市を、人々を、見つめている。そこには明確な感情は<ruby data-rt="うかが">窺<rp>（</rp><rt>うかが</rt><rp>）</rp></ruby>えない。北風に勝るとも劣らないほどに、冷たい印象だった。</p>



<p>「いえ」</p>



<p>　そう応えたのは、白髪の青年の隣に立っていた、黒髪に透き通るような緑の瞳をした青年である。幼いとも柔和とも言える顔立ちのこの青年は、まだ十代だろう。</p>



<p>　炎の輝きを受けて、二人の影が黒々と踊る。</p>



<p>「これは、断罪なんです」<br>「断罪？」</p>



<p>　白髪の青年は、結界の内側で絶命したばかりの母娘を見て眉根を寄せる。</p>



<p>「この母娘には、何の<ruby data-rt="とが">咎<rp>（</rp><rt>とが</rt><rp>）</rp></ruby>があったと言うんだ、トバース」<br>「それは……」　</p>



<p>　トバースと呼ばれた黒髪の青年は首を振る。白髪の青年は天高く吹き上がる白炎を見上げ、首を振った。</p>



<p>「千、二千、三千、あるいはそれ以上の生命が、今ここで終わる。逃げることも許されぬまま、己が罪を自覚する<ruby data-rt="いとま">暇<rp>（</rp><rt>いとま</rt><rp>）</rp></ruby>もないまま。あるいは罪なき者すらも。恐怖の内に白い焔に狩られることになる」<br>「グラヴァード様」</p>



<p>　黒髪の青年が呼びかける。白髪の青年――グラヴァードはその青い瞳をトバースに向ける。<ruby data-rt="いしゅく">萎縮<rp>（</rp><rt>いしゅく</rt><rp>）</rp></ruby>してしまうほどに深い闇を<ruby data-rt="たた">湛<rp>（</rp><rt>たた</rt><rp>）</rp></ruby>えた瞳だった。</p>



<p>「まだ迷っておられるのですか。そもそもこれはハインツが<ruby data-rt="ま">蒔<rp>（</rp><rt>ま</rt><rp>）</rp></ruby>いた――」<br>「いや」</p>



<p>　グラヴァードはひときわ高く吹き上がった炎の柱を見上げる。</p>



<p>「俺は迷ってはいない。ただ、悔いている」<br>「しかし、それではこのエクタ・プラムの人々は救われません」<br>「俺がどう思おうと、彼らは救われない。<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">意</span><span class="boten">味</span><span class="boten">の</span><span class="boten">あ</span><span class="boten">る</span><span class="boten">犠</span><span class="boten">牲</span></span>など、犠牲を生んだ無能な人間が吐き出す<ruby data-rt="きべん">詭弁<rp>（</rp><rt>きべん</rt><rp>）</rp></ruby>に過ぎない」</p>



<p>　グラヴァードの顔は炎の照り返しを受けて、揺れていた。長い白髪が風に踊る。</p>



<p>「この街の数千人か、或いは無差別な数十万――いえ、百万を超える人間の生命か。僕たちは選ぶことしかできなかった」<br>「それはわかっている。これが現状最適解だということも理解はしている」<br>「ならば、彼らの<ruby data-rt="えんさ">怨嗟<rp>（</rp><rt>えんさ</rt><rp>）</rp></ruby>を、その殺戮の罪を、グラヴァード様が背負う必要なんてないでしょう」<br>「誰も罪を被らないよりはマシだと思わないか」</p>



<p>　グラヴァードはゆっくりとした口調でそう言った。結界の内側で、見えない壁を叩く人々の姿が見える。彼らは等しくグラヴァードたちに助けを求めていた。一人また一人と熱に焼かれて倒れて、無惨に溶かされていく。</p>



<p>「この身が数千の血に染まったとて、いまさら俺は別にどうということもないさ」</p>



<p>　グラヴァードは目を逸らさなかった。なす<ruby data-rt="すべ">術<rp>（</rp><rt>すべ</rt><rp>）</rp></ruby>もなく人々が死んでいくさまを、その目に焼き付けようとするかのようだった。トバースは重苦しい口調で言った。</p>



<p>「結界があったおかげで被害はこの都市だけに抑えられる。僕はこの都市の結界を破壊できる。グラヴァード様なしでも。でも、僕は――」<br>「罪を共有する気はないぞ、トバース。この都市の生命の責任は俺一人で取る。お前にも、<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">あ</span><span class="boten">の</span><span class="boten">子</span></span>にも、一つも背負わせる気はない。絶対に、だ」</p>



<p>　グラヴァードは淡々と言い切る。トバースは何か言い返そうと言葉を探したが、結果として沈黙を選んだ。グラヴァードはそんなトバースを横目で見てから、すっかりその姿をなくしてしまったエクタ・プラムの跡地を睨んだ。</p>



<p>「妖剣テラ。あんなものと巡り合ってしまったのも、なにかの縁。そしてこの縁はまだまだ続くだろうさ」</p>



<p>　冷たささえ感じられるほどに静謐な声だった。トバースは頷く。</p>



<p>「そんな縁、早々に終わらせたいものですが」<br>「ああ」<br>「まだまだ、続くのでしょうね」</p>



<p>　トバースは白い息を吐いた。</p>



<p>　都市があった場所は、黒く<ruby data-rt="くすぶ">燻<rp>（</rp><rt>くすぶ</rt><rp>）</rp></ruby>っていた。それも広がり続けるあの深淵の穴が消し去るのだろう。</p>



<p>　グラヴァードは首を振って姿を消した。トバースもその後を追う。</p>



<p>　生命の<ruby data-rt="ざんし">残滓<rp>（</rp><rt>ざんし</rt><rp>）</rp></ruby>は、雪と<ruby data-rt="すす">煤<rp>（</rp><rt>すす</rt><rp>）</rp></ruby>の中にすっかりと消えた。</p>



<p>　「エクタ・プラムの消滅」――紫龍歴805年、酷寒の日の事件である。</p>



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		<title>DC-00-00：滅んだ世界の欠片より</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 13 Nov 2022 11:43:41 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[治癒師と魔剣・本文]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<category><![CDATA[第一話]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　白髪、そして青い瞳の青年が、バルコニーで星空を見上げている。八月だというのに酷く冷たい夜風が、青年の髪を仄かに揺らしていく。 「滅んだ世界の欠片（カケラ）、か」 　青年は月に視線を送り、今度は黒々と広が [&#8230;]</p>
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										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="3706" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<p>　白髪、そして青い瞳の青年が、バルコニーで星空を見上げている。八月だというのに酷く冷たい夜風が、青年の髪を仄かに揺らしていく。</p>



<p>「滅んだ世界の<ruby data-rt="カケラ">欠片<rp>（</rp><rt>カケラ</rt><rp>）</rp></ruby>、か」</p>



<p>　青年は月に視線を送り、今度は黒々と広がる南の山脈を見た。あの山の向こうでは今まさに戦が起きている。数多くの兵士の屍が放置されていることだろう。</p>



<p>「人は一度滅んだだけでは進化しない。嘆かわしいな、カヤリ」</p>



<p>　青年は振り返り、室内に戻る。そこには暗黒色のマントで身を包んだ女性がいた。フードを目深に被った彼女の瞳が、青く輝いている。文字通り発光しているのだ。</p>



<p>「世界が再生してから八〇〇年余り」</p>



<p>　カヤリと呼ばれた女性が無感情に応じる。</p>



<p>「現状こそ、人の進化の結果かもしれません」<br>「面白いことを言うな、カヤリ。さにあらば、<ruby data-rt="まこと">真<rp>（</rp><rt>まこと</rt><rp>）</rp></ruby>に救いようもない」<br>「しかし、あなたは止まらない」<br>「……ああ」</p>



<p>　グラヴァードは頷く。</p>



<p>「カヤリはどう思う。妖剣テラという餌に、魔剣ウルは食いついてくるかな？」<br>「来ます」</p>



<p>　カヤリは断定する。彼女は妖剣テラとは<ruby data-rt="いんねん">因縁<rp>（</rp><rt>いんねん</rt><rp>）</rp></ruby>浅からぬ仲だ。</p>



<p>「妖剣テラに引き寄せられて、魔剣ウルは必ず」<br>「そして魔神ウルテラは蘇る、か」</p>



<p>　グラヴァードの呟きに小さく<ruby data-rt="うなず">肯<rp>（</rp><rt>うなず</rt><rp>）</rp></ruby>き、カヤリは口を開く。</p>



<p>「しかしグラヴァード様。魔神ウルテラは人の身には過ぎた力と存じます」<br>「だろうな。<ruby data-rt="きゃつ">彼奴<rp>（</rp><rt>きゃつ</rt><rp>）</rp></ruby>は、龍の英雄たちでも苦労した相手だ」</p>



<p>　<ruby data-rt="セレス">紫龍<rp>（</rp><rt>セレス</rt><rp>）</rp></ruby>降臨による世界崩壊の時、龍の英雄たちは<ruby data-rt="セレス">紫龍<rp>（</rp><rt>セレス</rt><rp>）</rp></ruby>配下の魔神たちを多く滅ぼした。そのほとんどは元の世界へと<ruby data-rt="かえ">還<rp>（</rp><rt>かえ</rt><rp>）</rp></ruby>り長い眠りについた――と言われているが、全ての魔神がそうではなかった。今なお、この再生された世界に<ruby data-rt="とど">留<rp>（</rp><rt>とど</rt><rp>）</rp></ruby>まり、蘇る<ruby data-rt="とき">刻<rp>（</rp><rt>とき</rt><rp>）</rp></ruby>を待っている魔神が多数いる。魔神ウルテラもそのうちの一柱だった。龍の英雄たちをして滅ぼす事ができなかったほどの魔神である。その強大さは推して知るべし、であった。</p>



<p>　グラヴァードはカヤリに背を向けて、また月を見上げた。<ruby data-rt="きぬず">衣擦<rp>（</rp><rt>きぬず</rt><rp>）</rp></ruby>れの音とともに、カヤリが隣に並ぶ。カヤリは言う。</p>



<p>「妖剣と魔剣――魔神ウルテラの力が、人々を狂わせているのでしょうか」<br>「だといいな、むしろ」</p>



<p>　グラヴァードは首を振る。カヤリは<ruby data-rt="ほの">仄<rp>（</rp><rt>ほの</rt><rp>）</rp></ruby>青く輝く目を伏せながら小さく息を<ruby data-rt="つ">吐<rp>（</rp><rt>つ</rt><rp>）</rp></ruby>いた。グラヴァードはその様子を視界の端に捉えて、「それで」と話題を変える。</p>



<p>「魔剣はヴラド・エールの<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">聖</span><span class="boten">神</span><span class="boten">殿</span></span>にある、ということだな」<br>「おそらく」<br>「珍しいな、君が曖昧な表現を使うのは」</p>



<p>　グラヴァードの言葉を受けても、カヤリは無表情を崩さない。</p>



<p>「数年前までは確かに存在していた……というのが正しいところです。現在もまだそこにあるかどうかは」<br>「魔剣のことだ。情報を暴露するも隠蔽するも、さして難しいことでもあるまい。君ほどの魔力を<ruby data-rt="もっ">以<rp>（</rp><rt>もっ</rt><rp>）</rp></ruby>てしても探知できなくなっていることこそが、その証左だ」<br>「申し訳ありません」<br>「気にするな」</p>



<p>　グラヴァードは気さくに言う。カヤリは小さく一つ頷いた。グラヴァードは腕を組む。甲冑はほとんど音を立てない。</p>



<p>「魔剣ウルは妖剣テラに引き寄せられる。君が確信を持っている通り、必ずだ。だからもはや無理に追う必要はない。あの戦の渦中に必ず現れる」<br>「承知しました。私は<ruby data-rt="いくさば">戦場<rp>（</rp><rt>いくさば</rt><rp>）</rp></ruby>にて、魔剣ウルの捜索を。妖剣テラとの合一はなんとしても」<br>「頼りにしている」<br>「では」</p>



<p>　カヤリはそう言い残すと姿を消した。</p>



<p>　グラヴァードは独り、冷たい月を見上げて溜息をついた。</p>



<p>「妖剣テラに、魔剣ウル、か。これは人の<ruby data-rt="ごう">業<rp>（</rp><rt>ごう</rt><rp>）</rp></ruby>か、<ruby data-rt="かみ">魔神<rp>（</rp><rt>かみ</rt><rp>）</rp></ruby>の<ruby data-rt="みわざ">御業<rp>（</rp><rt>みわざ</rt><rp>）</rp></ruby>か」</p>



<p>　グラヴァードは月を睨む。</p>



<p>　かつて、世界は滅ぶべくして滅んだのかもしれん。</p>



<p>　そして、世界は滅ぶべくして滅ぶのかもしれん。</p>



<p>　魔神たちを従える<ruby data-rt="セレス">紫龍<rp>（</rp><rt>セレス</rt><rp>）</rp></ruby>――この大地そのものの意志によって。</p>



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		<title>LC-00-000:タケコとショーガツ</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Thu, 03 Nov 2022 06:12:36 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[ロストサイクル・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<category><![CDATA[第一話]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク1 　なぜだかどういうわけだかは僕にはサッパリなわけなんだけれど、明日、四月九日に高校三年生の始業式を迎える今になって、突然家庭教師が現れた。まぁ、うちの親が勝手に契約したんだろうけど、僕と親は多くの高校生が [&#8230;]</p>
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<p>　なぜだかどういうわけだかは僕にはサッパリなわけなんだけれど、明日、四月九日に高校三年生の始業式を迎える今になって、突然家庭教師が現れた。まぁ、うちの親が勝手に契約したんだろうけど、僕と親は多くの高校生がそうであるように、あまりコミュニケーションというものを取らない。だから正直、何が何やらである。</p>



<p>　でもとにかくも今、僕の目の前には母が出した紅茶を上品に飲んでいる、どこをどうやって見ても美女に属するであろう女子大生がいるわけで。腰まである黒髪をサラリと流した、黒目がちの白皙の美人である。白いブラウスに薄いピンク色のフレアスカートを身に着け、この上なくお嬢様然とした人物だ。そんな彼女は僕を見てニコリと微笑む。本音を言うと、それは十七歳童貞な僕を殺すには十分な表情だった。</p>



<p>　ついでに言うと、ふんわりとしたブラウス越しにもハッキリと分かる巨乳である。僕は何度でも言うが十七歳童貞であり、つまり、こういうものがあればそれは当然目がいってしまう。視線誘導に引っかかっている気がしないでもないが、その白い首筋からブラウスに消えていくそのラインに、僕は思わず唾を飲み込んだ。</p>



<p>　この人の名前は、<ruby data-rt="あけの">朱野<rp>（</rp><rt>あけの</rt><rp>）</rp></ruby><ruby data-rt="たける">武<rp>（</rp><rt>たける</rt><rp>）</rp></ruby>。男みたいな名前でしょう、と彼女は笑う。ついでに言うと、僕の名前は<ruby data-rt="はるが">春賀<rp>（</rp><rt>はるが</rt><rp>）</rp></ruby><ruby data-rt="まさつき">正月<rp>（</rp><rt>まさつき</rt><rp>）</rp></ruby>。凄くおめでたい名前だよね。ちなみに誰も僕を「まさつき」とは呼ばない。全員が全員、先生すら僕のことを「ショーガツ」と呼ぶ。僕の部屋に移動中のつい今しがた、この女子大生にも「ショーガツくん？」と呼びかけられたところだ。</p>



<p>「いえ、まさつき、です」<br>「私の事はタケコと呼んでね」</p>



<p>　この人、話を聞いてないし。</p>



<p>「タケルって呼んだらぶっ殺すわよ」</p>



<p>　うわ物騒。</p>



<p>　居間で母と共にいた時とは全然別の声音で言われたその言葉に、僕は思わずゾクっとした。ああいや、別に<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">そ</span><span class="boten">う</span><span class="boten">い</span><span class="boten">う</span><span class="boten">属</span><span class="boten">性</span></span>があるとかそういう話ではなくて。ていうか、よりによってタケコさんか。まぁ、いいけど。</p>



<p>　しかし、どこかで見たことがあるんだよな、この人。</p>



<p>　僕は愛用のブローフレームの眼鏡をクイと押し上げて、タケコさんを見た。僕は乱視が激しくて、それに伴ってあまり目つきがよろしくない。全国の乱視の皆さんならおわかりいただけるとお思うが、モノをちゃんと見ようとすればするほど、「殺意の眼差し」になってしまうのだ。それがちょっとしたコンプレックスだったりするのだが。</p>



<p>「その目！　たまらないわっ」</p>



<p>　タケコさん、涎を垂らしそうな表情で僕を<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">見</span><span class="boten">下</span><span class="boten">ろ</span><span class="boten">し</span><span class="boten">て</span></span>いる。</p>



<p>　そう、タケコさんは背が高い。僕は高校三年生にしては背が低く、クラスでも先頭だ。正直に言えば、百六十センチジャストだ。女子の大半にも抜かされてしまっている。特に、中学からの知り合いである夏山ルリカには、中学時代からずーっと一センチの差をつけられていて、それが何より僕の自尊心を傷付けていた。</p>



<p>　そしてこのタケコさん、百七十五センチあるのだという。容姿端麗高身長スタイル抜群ついでに巨乳。その上K大の教育学部で英米文学を専攻しているという才女。まだまだ秘密を隠し持っていそうな、そんな人だ。ミステリアスかと思えば物騒だし、黙っていればやっぱり美人だし、巨乳だし、脚綺麗だし。ついでに言うとその白い顔の肌もきめ細やかで……ってこの観察力は童貞ならではなのかもしれない。</p>



<p>　僕は自室のドアを開けて、タケコさんを招き入れる。タケコさんは部屋に入るなり、ササっと自分の髪をまとめ上げてポニーテールにした。うなじの後れ毛がたまらない。僕はたまらず唾を飲む。ていうか、この部屋に女子を上げたのは初めて……ではなかった。三年ぶりに同級生になった夏山ルリカは、ここ六年ばかり当たり前のようにこの部屋にいて、しばしばベッドで漫画を読んでいたりするっけ。今日は塾の日だからいないわけだが、なんだか物足りない気がしないでもない。あ、夏山ルリカは僕の中ではそういう――ありていにいえば性的な――対象ではないし、彼女にしてみても同じだろう。あ、夏山ルリカは可愛い。それは認める。でもなんだか、ムラムラしないんだよね。</p>



<p>　だが、この女子大生は圧倒的なフェロモンを放っている。そう、圧倒的だ。今にもブラウスを脱ぎだすのではないかと言うほど……。</p>



<p>「ってなんでボタンを外してるんですか」<br>「え。だって暑いし？」<br>「四月ですよ、四月。むしろストーブついてますけど！」</p>



<p>　本州以南の方々のために解説しておくと、僕ら道民は「温風が出るモノ」は基本的になんでもストーブだ。ヒーターとかそんなおしゃれな表現はしない。ストーブである。ついでに言うと、エアコンはうちにはない。新築物件でもない限り、ないのが……そう、わりと普通である。</p>



<p>「良いじゃない別に」</p>



<p>　タケコさんはそう言って僕を椅子に座らせる。そして僕の隣に立ち、腰を折って僕の顔を覗き込む。が、僕の視線はタケコさんのブラウスの奥に見える、魅惑の白い何かに釘付けである。視線が離せないのだ。だって十七歳童貞だし。</p>



<p>「ん、ブラジャー見えちゃった？　あは♡」<br>「え、なんですか、大丈夫です」</p>



<p>　何が大丈夫なのか――僕は哲学的に自問する。生理学的にはちっとも大丈夫ではない。女性のブラジャーなんて、夏山ルリカのシャツの背中に透けて見える部分くらいしか見たことがないからだ。ああ、母がたまに下着でうろついているが、あれは僕の記憶には残らないようにできている。海馬が拒否してるのかな。</p>



<p>「もー、ごめんね、もっとしっかりガードするね」<br>「お気遣い無用です」</p>



<p>　僕はそう答えたが、つまりこれはまったくもって迷走の果ての答えであって。ガードするね<ruby data-rt="からの">→<rp>（</rp><rt>からの</rt><rp>）</rp></ruby>お気遣い無用、というのはつまり、「もっと見せてください」と言っているに等しい。いや、言いたいんだよ、本当はそんなふうにさ。言いたいけど、それを言ったら童貞感丸出しじゃないか。さすがの僕もそのくらいの自尊心はあるのだが、それと言動が釣り合わない――童貞あるあるである。</p>



<p>「うふふ、ショーガツくんは可愛いなぁ。ショーガツくんは可愛いなぁ」<br>「まさつき、です」<br>「その目！　蔑むようなそのフレーム越しのその目！　年下の小さい子に蔑視されるこの感覚は、そう、まさに視姦！　タケコたまんない！」<br>「僕、貞操の危機すら感じているんですけど」<br>「ないない！　って言ったら傷付くでしょ」</p>



<p>　う、それは。</p>



<p>「でも、小さい子は余計です」<br>「私は大きいのがコンプレックスだからちょうどいいじゃない」<br>「なにが！？」<br>「私は大きい。ショーガツくんは小さい。神様お願いします。ショーガツくんをこれ以上大きくしないで！」<br>「やめて！」</p>



<p>　本気でやめて、そういうの。</p>



<p>　僕は頭を抱えつつも、なぜか英語の教科書を開いている。こういう所が<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">ガ</span><span class="boten">リ</span><span class="boten">勉</span></span>と呼ばれてしまう<ruby data-rt="ゆえん">所以<rp>（</rp><rt>ゆえん</rt><rp>）</rp></ruby>なのだが、長年の生活で染みついてしまった習慣と、生真面目な性格はそう簡単には変えられない。</p>



<p>「さ、お勉強しましょ♡」</p>



<p>　いったい何の勉強をしようというのか。</p>



<p>「英語が終わったら、保健体育♡」<br>「それは」<br>「嫌なの？」<br>「それは……」</p>



<p>　何だこのAVみたいな展開は。現実にこんなことが起きるわけがない。何かの罠に違いない。夏山ルリカあたりならこのくらい仕組んで来たっておかしくはない。僕はキョロキョロと部屋を見回し不審なモノがないか探す。視線を彷徨わせるうちに、いつの間にか僕の視線はタケコさんの豊かで柔らかそうな某所の谷間に落ち着いてしまう。鎮まれ、鎮まりたまえ。</p>



<p>　そんなことを祈願しつつ、俺はタケコさんの顔をギギギと首を鳴らしてもう一度見た。</p>



<p>「ああっ、思い出した。バス停で何故かいつも隣にいる……」<br>「うふふふ、やっと気が付いた？　おっそいなぁ」<br>「で、でも、なんで。なんで僕の家とか知ってたわけ！？」<br>「調べたのよ」</p>



<p>　怖。</p>



<p>「そりゃ当然でしょう？　私好みの男子が、私を迷惑そうに見つめてきたわけなんだから、そりゃ身元特定するでしょうよ」<br>「いや、当然でも何でもないと思う」<br>「できればその子のおっぱい揉みたいとか思うじゃない？」<br>「思いませんよ。しかも僕は男子だし」<br>「おっぱいに男女なし！」</p>



<p>　か、かあさん、先生変えた方が良いと思うよ――僕の良心がそう呟く。</p>



<p>「というわけで、いただきます♡」</p>



<p>　タケコさんは僕を後ろから羽交い絞めにして、文字通り胸を揉んでくる。ということは、僕の後頭部はタケコさんのおっぱいによって包み込まれたりしているわけで。</p>



<p>　ここいらで夏山ルリカがドアを蹴り開け「どっきり成功！」とかでも言うんじゃないかと思ったりもしたが、現実にはそんなことはなく。僕はそれからたっぷり三分間は男乳を弄ばれた。ひどい目に遭ったと呟く<ruby data-rt="むっつり">厨二病的<rp>（</rp><rt>むっつり</rt><rp>）</rp></ruby>良心と、めっちゃラッキーと喜ぶ僕の<ruby data-rt="スケベ">男子<rp>（</rp><rt>スケベ</rt><rp>）</rp></ruby>心が<ruby data-rt="せめ">鬩<rp>（</rp><rt>せめ</rt><rp>）</rp></ruby>ぎ合っている。</p>



<p>「タケコさん、どうしてそこまでして僕に」<br>「うふふ」</p>



<p>　タケコさんは意味深に笑う。</p>



<p>「性癖ドストライク。この出会いを逃したら、私、もう男子のおっぱいは揉めないと思ったからよ」<br>「じゃぁ、満足したでしょう？」<br>「人間の欲望は尽きることを知らない……」<br>「何哲学っぽいこと言ってるんですか」<br>「深淵を覗く時、深淵もまた君を覗いている」<br>「タケコさんから這い寄ってきましたよね、どちらかというと」<br>「童貞は細かいこと気にしたら負けよ」<br>「うっ……」<br>「でもビシバシ来るわね、その視線。たまんないわ！」</p>



<p>　乱視ゆえに、勝手に睨むような目つきになってしまうわけだけど、タケコさんはどうやらそれがたまらなく刺さるらしい。僕に後ろから覆いかぶさったまま身もだえするものだから、僕の首のコリがすっかりなくなってしまうほどに揉みほぐされているわけで。柔らかい二つの魅惑の丘のフィット感がマジパナイ。生物学的に、これは求愛行動なのではないだろうかと思うわけだけど、いやいやそれはいかんと僕の自制心が何だかいろんな脳内物質を放出して、暴走を食い止める。</p>



<p>「<ruby data-rt="カテキョ">家庭教師<rp>（</rp><rt>カテキョ</rt><rp>）</rp></ruby>のバイトは三年で辞めたんだけど、あなただけ特別よ、ショーガツ君。私が卒業するまで付き合うからね」<br>「ええ……」</p>



<p>　げんなりしたか、というと、そうでもない。むしろこのおっぱい押し付け先生と一年過ごせるとか、どれだけ色々助かることか。うん、色々と助かる。ていうか、女性の肌に触れたのなんて、夏山ルリカが気軽に腕を組んでくる以外に、記憶にない。ぶっちゃけ夏山ルリカよりもスタイルは良いし（主に胸）、夏山ルリカよりお姉さん感が半端ない。女性として見ざるを得ない対象だった。しかも、僕が何もしなくても、タケコさんが率先して痴女行為を繰り出してくる。十七歳童貞が自制心を維持できるはずがあろうか、いやない。（反語）</p>



<p>「ってちょっと待って。タケコさん、家庭教師だよね」<br>「ええ、そうよ。保健体育もお望みのままよ♡」<br>「そうじゃなくて！」<br>「保健体育しかしなくていいって？」<br>「そうじゃなくて！」<br>「保健体育さっさとやれって？　いいわよ？」<br>「そうじゃなくて！」</p>



<p>　思わず三連発。そうこうしている間に、タケコさんはブラウスの三つ目のボタンを解放している。ブラジャー丸見え。いかん。眉間が熱くなってきた。鼻血が出る。</p>



<p>「僕はH大に行きたいと思ってるんだけど、ちょっとだけ足りないんだ。その辺真面目にやってくれるわけ？」<br>「お給料分はしっかり働くわ。でもそうだね、H大に合格したら、私の身体、好きにしていいよ♡」<br>「それ、好きにされたいだけと違うのだろうか？」<br>「ウィンウィンじゃない？」<br>「いや、まぁ、うん……」</p>



<p>　このシチュエーションで、この誘いを断れる男子がいるなら是非インタビューしてみたい。無理だって、絶対。</p>



<p>「ただし、条件があります」<br>「え？」<br>「私の身長を超えないこと！　私は私より背の高い男子には興味がありません」</p>



<p>　う、それは。</p>



<p>　僕は牛乳を飲むべきか。飲まざるべきか。それが問題だ。</p>



<p>　どうしよう、どうすべきなんだ、僕は。</p>



<p>「さて」</p>



<p>　タケコさんはおもむろにブラウスの袖をまくり始めた。</p>



<p>「英語の勉強、サクッと片付けちゃいましょう。英米文学専攻の力を見せてあげるわ！」</p>



<p>　鼻息荒く、タケコさんは気合いを入れた。</p>



<p>　なんだこの切り替えのスピードは……！？</p>



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		<title>OreKyu-01-001:連れ込まれた先は</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 17 Oct 2022 02:51:49 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[|<∀8∩Σ!・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<category><![CDATA[第一話]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク1 　弊社に於ける給湯室というのは――一般的にはともかく――いわば、女の園だ。それもダメなカレーから立ち上る何か瘴気的なものを感じさせる異空間である――というのが偏見だと言われようが弊社に於いてはそうなんだか [&#8230;]</p>
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<p>　弊社に於ける給湯室というのは――一般的にはともかく――いわば、女の園だ。それもダメなカレーから立ち上る何か瘴気的なものを感じさせる異空間である――というのが偏見だと言われようが弊社に於いてはそうなんだから仕方なかろう。そんな男子禁制の給湯室に、俺は今、なぜか監禁されている。俺の黒いネクタイを右手で掴み、俺を見上げている年下の先輩女性社員。名前は<ruby data-rt="かいだ">甲斐田<rp>（</rp><rt>かいだ</rt><rp>）</rp></ruby><ruby data-rt="めぐみ">恵美<rp>（</rp><rt>めぐみ</rt><rp>）</rp></ruby>——通称メグ姐さん。艶々の黒髪をポニーテールにしている、一見して美しいアラサー女子なのだが、性格はとてもきつい。俺のネクタイを締めあげて給湯室に監禁するほどに。</p>



<p>　監禁と言われても物理的に逃げ出せないわけではない。だが、逃げてもどうにもならない事を俺はイヤというほど知っている。メグ姐さんは蛇のような執念深さで俺をロックオンし、翌日には信じ難い量の仕事を持ってくるのだ。場合によっては見つけなくてもいいバグを見つけては当日中のデバッグ作業を求められたりもする。そんなことになったら正直地獄である。</p>



<p>　転職して三年、メグ姐さんの下に配属されて一年と少しが経過した現在、さすがにそのくらいは容易に想像できる。だから……俺は自発的に監禁されているのだ。メグ姐さんに逆らっていてはこの会社で生きてはいけない。メグ姐さんは御年二十八歳にして課長にまで昇進して、部下を五十名近く導いている才媛なのだ。そのプログラムスキルやマネジメント能力の高さについては、もはや誰の目にも明らかであり、天は二物も三物も与えるものだと嘆息せざるを得ない。</p>



<p>　俺が女だったら、その美貌と能力に嫉妬していたに違いないのだが、きっと同時に返り討ちにあって泣いていたことだろう。もっとも、男の中にもこれ見よがしに嫌味を言ったりなんだりする奴はいる。だが、そういう奴はメグ姐さんの歯牙にもかけられないまま、いつの間にか自然消滅していたり、どこか遠くの支社に飛ばされていたりする。メグ姐さんを敵に回したら人生を棒に振りかねない――俺を始め賢い社員たちは、誰もがそう認識している。</p>



<p>　で、そんな（恐ろしくも）優秀なメグ姐さんが、何でこんなに目を三角にしてお怒りになっておられるのかというと、正直俺にもわけがわからない。ほんの十分前に「<ruby data-rt="すみかわ">墨川<rp>（</rp><rt>すみかわ</rt><rp>）</rp></ruby>、ちょっとつきあえ」と呼ばれてホイホイついてきたら……こんな状況だ。</p>



<p>「それであの、課長、そろそろ手を放してもらえませんかね」<br>「手を離したら逃げるだろ」<br>「逃げませんて」<br>「普通逃げるよな？」<br>「無駄なことはしませんよ。それに普通逃げるようなことはしないでもらえません？」</p>



<p>　俺が両手を上げてそう言うと、不満げな表情を見せながらもようやくネクタイから手を放してくれた。</p>



<p>「ところで課長。なんでそんなに怒ってるんですか？　それにここは危険ですって」<br>「ここが危険？　共有エリアだぞ？」<br>「共有エリアっつっても、あのですね、給湯室に俺と課長の二人。あやしい噂が——」<br>「なんだそんなことか」</p>



<p>　メグ姐さんはフッと笑って顎を上げる。</p>



<p>「私は別に構わんのだぞ」<br>「は？」<br>「私もお前も独身だ。大人の事情の一つくらいあったっていいじゃないか」<br>「いやいやいやいや！」</p>



<p>　せっかく転職して生活も安定してきたというのに、女がらみでトラブルというのは正直笑えない。最も笑えない類のトラブルである。それに俺は確かに独身だが、五年間付き合っている彼女はいる。メグ姐さんもその辺の事情は知らないはずがないのだが——直接教えた、もとい、白状させられたし。</p>



<p>「まぁ、噂というのはどう動くかわからんものだからな、確かに」<br>「でしょ。で、俺のネクタイを引っ張ってまでして、ここにしょっぴいてきた理由とはいったい？」<br>「うん、我ながらなかなか格好良かった」<br>「そうじゃない」</p>



<p>　ツッコミを入れずにいられない俺である。メグ姐さんは「つまらんやつだな」と言いながら腰に手を当てた。</p>



<p>「出張だ。謝罪の旅に出ろと部長から命令が出た」<br>「はぁ！？」</p>



<p>　謝罪行脚って、先月のシステムトラブルの件？　いや、あれはクライアントの不始末でしょう！？</p>



<p>　と、言いかけた俺の唇を人差し指で押さえつけるメグ姐さん。そして「おや？」と呟いた。</p>



<p>「お前の唇、意外と柔らかいな！」<br>「だからオープンでそういう発言しちゃダメですって！」</p>



<p>　今の所目撃はされてないと思うが、会話だけ見たらどう考えてもキスしてるじゃないかっ！</p>



<p>「部長には、自分で行けと言ったんだが……！　あのクソ狸野郎はグダグダ理由をこねくり回して結局ノーだ。クソ野郎め！　F***！」<br>「あの、課長！　そういう言葉遣いはちょっと！」<br>「であるからして、私は今不機嫌だ。すごーく不機嫌だ。だから不機嫌な私を表現するためにさっきの一芝居を打ってみたという事だ」<br>「芝居で人のネクタイ掴まないで下さいよ」</p>



<p>　ネクタイを直しながら抗議すると、メグ姐さんは鼻息荒く応えた。</p>



<p>「私の表情差分が見れただけでもお前はラッキーだ」<br>「……何言ってるんですか。まったく、自己肯定感の塊ですね、課長は」<br>「ほう？　ならばお前は、自己肯定感のない課長についていきたいと思うか？」<br>「う、それは、いやです」<br>「だろう？」</p>



<p>　なんか煙に巻かれた気もしなくはないが、言ってることは至極正しいような気がしなくもない。こんな具合にいつも相手のペースに飲まれてしまう俺である。</p>



<p>「で、出張はいつからです？」<br>「明日から土日を挟んで一週間」<br>「……明日」<br>「うむ」<br>「札幌っすか？」<br>「そういうことだ」</p>



<p>　クライアントは札幌に本社を持っている超大規模なシステム開発会社だ。システム開発会社と言っても、その業務のほとんどは俺たちの会社みたいないわゆる「IT系」企業が請け負いで担当している。彼ら自身はマージンを抜いて仕事を振る、いわゆる一次請け企業なのだ。俺たちみたいな二次、三次請け企業にはろくな情報が下りてこないことも少なくないし、今回みたいに一次請け企業の不祥事を押し付けられないこともない。とはいえ、うちの業界はそれが当然みたいなところがあるから、いまさら文句をいったところで体制をどうこうできるというようなものではないだろう。悔しかったら下克上するほかにないが、あの会社に太刀打ちできる企業や個人といったものが現れるかもしれないというのは、なかなかに期待薄だった。</p>



<p>「ていうか課長。札幌で一週間も何するんです？　土下座しっぱなし？」<br>「土下座なんざ死んでもするか」</p>



<p>　メグ姐さんは腕を組んで眉根を寄せる。</p>



<p>「先方が自分でぶち壊した社内システムを直せってさ。端的に言うとそういう事のようだ」<br>「は、はぁ？」<br>「構築した社員は退職、引き継いだ社員も雲隠れ、仕様書も見つかっていない」</p>



<p>　うわぁ……よくある話。</p>



<p>「それの不具合を解消して仕様書も作ってくれたら、今回の不祥事は<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">大</span><span class="boten">目</span><span class="boten">に</span><span class="boten">見</span><span class="boten">て</span><span class="boten">や</span><span class="boten">る</span></span>、だって。ふざけんな、だろ、墨川。F***！」<br>「だからFワードは駄目ですって」</p>



<p>　まぁ、言いたい気持ちはわかる。</p>



<p>「……で、だ。そのクソ条件で、あのクソ狸部長は平身低頭して引き受けたってわけだよ、墨川」<br>「F***！」<br>「言いたくなるだろ？」<br>「はい、すっきりしました」<br>「うむ、よろしい」</p>



<p>　メグ姐さんは満足げに何度か頷き、そして給湯室を後にした。俺は慌てて追いかける。メグ姐さんは歩くのも早い。「颯爽」という表現がこれほど似合う人も珍しい。</p>



<p>「で、あの課長？　ええと、そんな得体の知れないシステムを直すのに、俺と課長の二人だけで行くんですか？」<br>「なんだ、墨川。私とのデートは不満か？　不満でもあるのか？　ん？」<br>「いや待って。デートじゃないでしょ」<br>「いや、デートだ」<br>「だから俺には彼女が……」<br>「何を考えてる。セックスするとは一言も言ってないぞ、このスケベ野郎」</p>



<p>　ぐっ——。</p>



<p>「それに、私とお前が行って直せなかったというのなら、それはそれで言い訳も立つだろ。この人選はF***ではあるが意外と合理的なのかもしれんよ」<br>「そうなんですかねぇ……」</p>



<p>　以後、俺は黙ってメグ姐さんの後を追った。</p>



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		<title>ある剣の追想 -01.鍛冶師</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Sat, 05 Feb 2022 01:53:36 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[魔女のオラトリオ・短編]]></category>
		<category><![CDATA[短編]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<category><![CDATA[第一話]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　今となっては遠い昔。思い出そうとするだけでも意識（め）が眩（くら）む。それほどに遠い昔。 　私はある鍛冶師によって生み出された。この世で最も硬い金属、白銀鋼（しらがねはがね）と呼ばれる特殊な鉱石で作られ [&#8230;]</p>
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<pre class="wp-block-code"><code>「<strong><a href="https://ken1shiki.com/index-witchs_oratorio/">魔女のオラトリオ</a></strong>」関連短編――。</code></pre>



<p>　今となっては遠い昔。思い出そうとするだけでも<ruby data-rt="め">意識<rp>（</rp><rt>め</rt><rp>）</rp></ruby>が<ruby data-rt="くら">眩<rp>（</rp><rt>くら</rt><rp>）</rp></ruby>む。それほどに遠い昔。</p>



<p>　私はある鍛冶師によって生み出された。この世で最も硬い金属、<ruby data-rt="しらがねはがね">白銀鋼<rp>（</rp><rt>しらがねはがね</rt><rp>）</rp></ruby>と呼ばれる特殊な鉱石で作られた私は、鍛造の頃より強い魔力に晒されていた。魔法使い、いや、<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">魔</span><span class="boten">女</span></span>と呼ばれる者たちによって、力を与えられ続けていた。その結果として、私はまだこの剣の形になる以前から、このようにして確固たる意思と認識力を持つことになった。</p>



<p>　鍛冶師は形になった私を、貴重な<ruby data-rt="といし">砥石<rp>（</rp><rt>といし</rt><rp>）</rp></ruby>で研いだ。並の砥石では<ruby data-rt="しらがねはがね">白銀鋼<rp>（</rp><rt>しらがねはがね</rt><rp>）</rp></ruby>である私を研ぐことはできなかったからだ。その砥石は空から落ちてきたという<ruby data-rt="せきいんてつ">赤隕鉄<rp>（</rp><rt>せきいんてつ</rt><rp>）</rp></ruby>から、鍛冶師が自ら作り上げた。その砥石によって仕上げられた私は、ありえないほどの精巧な刀身と、鋭すぎる刃を持つに至った。剣先から<ruby data-rt="つかがしら">柄頭<rp>（</rp><rt>つかがしら</rt><rp>）</rp></ruby>に至るまで<ruby data-rt="みなぎ">漲<rp>（</rp><rt>みなぎ</rt><rp>）</rp></ruby>る甚大な魔力。奇跡の一振りと言っても良い――私は自身を<ruby data-rt="み">認識<rp>（</rp><rt>み</rt><rp>）</rp></ruby>てそう思った。この鍛冶師は当時の王国に<ruby data-rt="お">於<rp>（</rp><rt>お</rt><rp>）</rp></ruby>いて、最高の腕前を持つという評判だった。</p>



<p>　鍛冶師は魔女の家系で生まれた。女性のみならず一族の男性の多くも魔女――後に男の魔女は導士と呼ばれるようになるが――であり、その中にあってこの鍛冶師だけが魔法の力を持たなかった。哀れなほど、この男には魔法の素質がなかった。だが、その剣を作り上げる技能には、数多くの職人たちが「天才」との賛辞を惜しまなかった。まるでそれまでの迫害を帳消しにしようとするかのように。</p>



<p>　私は「剣」だ。剣には二つの役割がある。一つは直接的に人を<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">殺</span><span class="boten">す</span></span>こと。もう一つは持ち主の権力を誇示し、それにより人を<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">殺</span><span class="boten">さ</span><span class="boten">せ</span><span class="boten">る</span></span>こと。しかし、いずれにおいても、つまり――私は殺人の道具だ。そんな事は生まれた瞬間から理解していたが。</p>



<p>　私が最初に殺したのは、鍛冶師の両親だった。そして祖父母、兄弟、妻、自らの赤子たち。私を手にしていたのは当の鍛冶師だった。彼は言う。あらゆる怨讐を晴らし、また、愛する者の血を吸うことでお前は完成する――と。そして私は魔女たちの血をふんだんに吸い込み、その力を取り込むことで、鍛冶師の言ったとおりに完成した。赤子を手にかけた時の鍛冶師の苦しみは、私にも直接流れ込んできた。その感情は私には理解のできるものではなかったのだが。</p>



<p>　鍛冶師はその後、捕えに来た王国の兵士たちによって殺された。私を振るい、兵士数十名を道連れにした鍛冶師は捕えられた。鍛冶師は即日処刑されたが、その際には私が用いられた。「試し切り」と称して、鍛冶師の身体を滅多切りにしたのだ。</p>



<p>　とどめも刺されず、血に染まった石床に転がされた鍛冶師は、最期に声もなく笑った。これでお前は完成した――と。</p>



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		<title>啾啾ト哭ク赤イ布　第壱話</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 26 Dec 2021 01:33:04 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[美味兎屋・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<category><![CDATA[第一話]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　私は悔しかった。そして途方に暮れていた。 　誰に怒りをぶつける事も、愚痴を言う事もできない。ただ、白いままの自分の手を握り締めるだけだ。私は何も出来なかった。意気地なしと言われても仕方なかった。それでも [&#8230;]</p>
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<p>　私は悔しかった。そして途方に暮れていた。</p>



<p>　誰に怒りをぶつける事も、愚痴を言う事もできない。ただ、白いままの自分の手を握り締めるだけだ。私は何も出来なかった。意気地なしと言われても仕方なかった。それでも、何とかしたいと思っていても、本当に自由が利かなかった。それに、私が何かをしたとして、あの状況が何か変わっただろうか。変わったとしても、より悪い方向でしかなかったと、私は思う。</p>



<p>　一流と言われる大学を出ても、こんな状況を変えることはできやしない。今をときめく某科学研究所に入所し、先端技術研究の主要メンバーに抜擢された。他人が見れば羨むようなこの経歴すら、これっぽっちの役にも立ちやしない。やりたい事を我慢し続けて、やっと大学を出ても、得られたものは何もなかった。</p>



<p>　何も、だ。</p>



<p>　漸近科学――それが今、私が研究している科学だ。どんなに頑張ったところで接触できない。近付いている実感はあっても、紙一重の差で手が届かない。そうとわかっていながらも、その実体を見ようともがき、あがき続けるだけの学問だ。そうとわかっていながらも、その行為の依存性から抜け出せない。いつかは掴めるかもしれない、それに最初に触れるのはもしかしたら自分なのかもしれない。そんな夢とすら呼ぶことの出来ない薄弱な妄想に囚われ、逃げられない。そんな中毒性のある学問なのだ、漸近科学とは。</p>



<p>　こいつはまるで私の人生そのものじゃないか。</p>



<p>　ああ、だめだ。</p>



<p>　私は首を振って、ため息をついた。</p>



<p>　何をどう考えても、自分への言い訳にしかならない。自分の臆病さを弁護するだけだ。あの時、助けられる可能性があったのは私だけだったのだ。そして今、<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">こ</span><span class="boten">こ</span></span>に<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">こ</span><span class="boten">う</span><span class="boten">し</span><span class="boten">て</span></span>いるのは、自分が決めた行動の結果に過ぎないのだ。</p>



<p>　私は泣く事もできなかった。この夜中、誰も見ていないとは言え、道路の真ん中で泣くことはできなかった。こんな私にだってプライドはあるらしい。それが滑稽だった。</p>



<p>　白々しく光っているコンビニの前を早足で通り過ぎ、すれ違う車から顔を背ける。</p>



<p>　私は自分の手の中にある<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">も</span><span class="boten">の</span></span>を見ることが出来なかった。握り締めることも、手のひらで気配を探ることもできなかった。見た瞬間に、感じた瞬間に、それはより一層<ruby data-rt="おぞ">悍<rp>（</rp><rt>おぞ</rt><rp>）</rp></ruby>ましいものになっているかもしれない、そんな恐怖からだ。</p>



<p>　生暖かい感触が掌から肘へ、肘から肩へ、そしてようやっと脳へと、湿気のようにずるずると音を立てて<ruby data-rt="は">這<rp>（</rp><rt>は</rt><rp>）</rp></ruby>い上がってくる。感覚が曖昧で、時間の進みも速くなったり遅くなったりする。それは度の合わない眼鏡をかけたまま、ボートに何時間も乗って本を読んでいる時のような感覚だ。</p>



<p>　もうじき家に辿り着ける。家までの距離に反比例するように、私は歩く速度を上げた。スピードは上がったはずなのに、何故か景色はのろのろと行き過ぎる。苛々した。思い通りにいかないこの景色に、私はとんでもなく苛ついた。</p>



<p>　遅々として進まない時間の中で、私は嫌な気配を感じた。後ろから<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">あ</span><span class="boten">い</span><span class="boten">つ</span><span class="boten">ら</span></span>が追ってくる。残っていた獲物をいたぶり、あるいは殺してから、私をのろのろと追いかけてきたのだろう。あの腫れぼったい目、だらしのない口許、意味も分からずにコトバのような何かを乱暴に吐き出す舌。</p>



<p>　私は急いだ。自分の家に直行するべきか否かを考える。その間にも声は近付いてくる。このままではあいつらに家を知られてしまう。そうなったら終わりだ。このまま闇の中に溶け込んでしまいたい気分だった。この意気地の無い私を飲み込んでみろよ――心の中で闇を挑発した。</p>



<p>　その時――。</p>



<p>「おいお前」</p>



<p>　闇が私に呼びかけた。</p>



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		<title>暗黒の魔女は、彼岸の色に染まる（１）</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Thu, 23 Dec 2021 13:04:46 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[魔女のオラトリオ・短編]]></category>
		<category><![CDATA[第一話]]></category>
		<category><![CDATA[短編]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　ターニャはよく働いたし、よく学んだ。文字を覚えたばかりだというのに、暇さえあればマグダレーナが持っていた数々の書物――主に薬草学の類のものだが――を読み耽（ふけ）った。 「ターニャ、そろそろ休憩しな。昼 [&#8230;]</p>
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										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="937" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<pre class="wp-block-code"><code>「<strong><a href="https://ken1shiki.com/index-witchs_oratorio/">魔女のオラトリオ</a></strong>」関連短編――。</code></pre>



<p>　ターニャはよく働いたし、よく学んだ。文字を覚えたばかりだというのに、暇さえあればマグダレーナが持っていた数々の書物――主に薬草学の類のものだが――を読み<ruby data-rt="ふけ">耽<rp>（</rp><rt>ふけ</rt><rp>）</rp></ruby>った。</p>



<p>「ターニャ、そろそろ休憩しな。昼食にしよう」<br>「あ、はい、先生」</p>



<p>　ターニャは額の汗を拭きながら、薪を一つ追加で割った。そして手早く片付けて、井戸の水で手と顔を洗う。そんなターニャに、マグダレーナはタオルを差し出した。</p>



<p>「ありがとうございます」<br>「あんたはいい子さね」</p>



<p>　ターニャの髪を撫でながらそう言ったマグダレーナは、急に表情を険しくした。そのただならぬ気配にターニャは身を固くする。</p>



<p>「ターニャ、家に入りな」<br>「せ、先生は……」<br>「アタシは<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">大</span><span class="boten">魔</span><span class="boten">女</span></span>だよ。心配<ruby data-rt="い">要<rp>（</rp><rt>い</rt><rp>）</rp></ruby>らない」</p>



<p>　いつもの長剣は家の中だ。マグダレーナは取りに戻るか迷ったが、その時間はないと判断してその<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">気</span><span class="boten">配</span></span>の方を睨みつけた。ターニャはその場で立ち<ruby data-rt="すく">竦<rp>（</rp><rt>すく</rt><rp>）</rp></ruby>んでいる。</p>



<p>「ターニャ、剣を持っておいで。アタシの部屋の中にある」<br>「せ、先生の部屋……。あそこは」</p>



<p>　――決して入ってはならない。それがマグダレーナがターニャに禁じた唯一のことだ。マグダレーナはわずかに口角を上げ、息を吐く。</p>



<p>「その時が来ちまったってことさね。いいかい、今のあんたの使命は、アタシの剣を持ってくること。一刻も早く！」</p>



<p>　マグダレーナの暗黒の瞳が、夏の真昼の中にあってもハッキリとわかるほどに赤く輝いた。ターニャは弾かれたように家に飛び込んでいく。</p>



<p>「さぁ、出ておいで」</p>



<p>　家の周りの<ruby data-rt="うっそう">鬱蒼<rp>（</rp><rt>うっそう</rt><rp>）</rp></ruby>たる林を睨み、マグダレーナは腕を組む。死角はない。</p>



<p>　敵は五人。全員が魔導師。恐らく<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">教</span><span class="boten">会</span></span>に勘付かれたのだろう。アタシに気付いたのか、あの子に気付いたのか。それまではわからない。だが――マグダレーナは目を細める。</p>



<p>「嬉しいじゃないか。自ら<ruby data-rt="にえ">贄<rp>（</rp><rt>にえ</rt><rp>）</rp></ruby>になりに来てくれるなんてねぇ！」</p>



<p>　あの子が戻ってくる前に片付ける。</p>



<p>　マグダレーナに向けて<ruby data-rt="おびただ">夥<rp>（</rp><rt>おびただ</rt><rp>）</rp></ruby>しい数の光の矢が飛来する。マグダレーナはそれを右手で振り払い、左手を突き出した。轟音と共に、大樹が幾本も折れて吹き飛んだ。</p>



<p>「一人か」</p>



<p>　身体に流れ込んでくるエネルギーを感じて、マグダレーナは目を細める。力が漲る。いつもそうだ。人の命の炎を吹き消すと、その分マグダレーナの内なる悪魔が活性化する。それはマグダレーナの力の強化に他ならない。そしてマグダレーナの究極の願いに近付くことにも他ならない。</p>



<p>　故に、こうして獲物が自ら寄ってきてくれることは、マグダレーナにとっては<ruby data-rt="ぎょうこう">僥倖<rp>（</rp><rt>ぎょうこう</rt><rp>）</rp></ruby>だった。<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">い</span><span class="boten">つ</span><span class="boten">も</span><span class="boten">の</span><span class="boten">よ</span><span class="boten">う</span><span class="boten">な</span></span>無駄な殺生をしなくて済む。</p>



<p>「逃しやしないよ」</p>



<p>　マグダレーナは凄絶な笑みを浮かべたのだった。</p>



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		<title>00-000「セントラル・フラッガ」</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 20 Dec 2021 13:31:21 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[Aki.2093・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<category><![CDATA[第一話]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　無節操に吐き出される20ミリ弾が、室内をズタズタに切り裂いていく。まるで闘技場のようにひたすらに広いその空間には、暴風雨のような弾頭を遮るものは何一つとしてない。屹立する分厚いコンクリートの壁がまるで乾 [&#8230;]</p>
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										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="791" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<pre class="wp-block-code"><code><span class="has-inline-color has-white-color">import GSL</span>
#54Sh56+A5pON44Gr5ZCQ44GN5Ye644GV44KM44KLMjDjg5/jg6rlvL7jgYzjgIHlrqTlhoXjgpLjgrrjgr/jgrrjgr/jgavliIfjgoroo4LjgYTjgabjgYTjgY/jgII=
while(target):
  adj = combat.aim(target)
  for i in range(x):
    combat.fire(adj)</code></pre>



<p>　無節操に吐き出される20ミリ弾が、室内をズタズタに切り裂いていく。まるで闘技場のようにひたすらに広いその空間には、暴風雨のような弾頭を遮るものは何一つとしてない。屹立する分厚いコンクリートの壁がまるで乾いた泥壁のように砕かれていくのみだ。</p>



<p>「誘いこまれるとは」</p>



<p>　彼女は舌打ちをしてから、奥歯を噛み締めた。敵は見たことのないタイプの四足戦車。平均204.15メートル先にある四門の機関砲の砲口が、彼女をじっと見つめていた。</p>



<p>「弾切れ？」</p>



<p>　いや――。</p>



<p>　その瞬間、彼女は横に飛んでいた。曳光弾が脇をかすめ、それを追うようにしてタングステン合金の<ruby data-rt="高速徹甲弾">HVAP<rp>（</rp><rt>高速徹甲弾</rt><rp>）</rp></ruby>が空気を加熱しながら空間を<ruby data-rt="えぐ">抉<rp>（</rp><rt>えぐ</rt><rp>）</rp></ruby>り抜いていく。</p>



<p>「<ruby data-rt="ワイスドール">機械化人間<rp>（</rp><rt>ワイスドール</rt><rp>）</rp></ruby>も形無しね」</p>



<p>　間断のない攻撃を前に、距離も詰められない。弾切れを起こすのが先か、致命弾を受けるのが先か。</p>



<p>　その時だ。</p>



<p>『よう、相棒』</p>



<p>　彼女の頭の中に直接、よく響くアルトが聞こえてくる。彼女は再び舌打ちをしつつ、宙を舞うコンクリートの粉塵を手で払う。</p>



<p>「遅い、何してたの、ミキ」<br>『退路を作ってたんだよ』<br>「あたしが倒されたら退路も何もあったものじゃないでしょ」<br>『<ruby data-rt="ヘッドパーツ">頭部<rp>（</rp><rt>ヘッドパーツ</rt><rp>）</rp></ruby>だけは回収してやるよ』<br>「よく言う」</p>



<p>　彼女は距離を詰めようと、左右にスライドしながらも徐々に前進し始める。機関砲の弾が彼女の頭や肩を掠め飛んでいく。四足戦車がじりりと後退を始める。砲弾が彼女の左腕に連続的に命中。付け根付近から吹き飛ばす。だが、彼女は止まらない。バチバチと放電する左肩が、飛来する曳光弾と共に薄暗い空間に<ruby data-rt="いろどり">彩<rp>（</rp><rt>いろどり</rt><rp>）</rp></ruby>を添える。</p>



<pre class="wp-block-code"><code>&gt; tDtc = getDistance(target)
&gt; display(tDtc)</code></pre>



<p>　距離、99.7メートル。一気に駆ける。彼女の速力なら、あと三秒もあれば近接戦闘距離に持ち込める。</p>



<p>　彼女が入ってきて以来、固く閉ざされたままになっていた扉が赤熱して弾け飛んだ。<ruby data-rt="おびただ">夥<rp>（</rp><rt>おびただ</rt><rp>）</rp></ruby>しく上がった蒸気の向こうに、一つの人影が現れる。</p>



<p>『アキ、右に跳べ』<br>「りょ」</p>



<pre class="wp-block-code"><code>&gt; adj = combat.aim(target)
&gt; while(target):
&gt;   combat.fire(adj)</code></pre>



<p>　弾雨に<ruby data-rt="さら">曝<rp>（</rp><rt>さら</rt><rp>）</rp></ruby>されながら、彼女――アキは右へ跳んで地面を転がった。四足戦車から打ち付けられる弾丸が、地面を掘り起こして迫ってくる。アキは長い黒髪を振り乱しながら転がり続ける。</p>



<p>　空間が光る。熱量と衝撃波が半球形の歪みを生む。四足戦車の上部構造物もろともに、機関砲がまとめて蒸発する。</p>



<pre class="wp-block-code"><code>&gt; dmg = getDamage(self)
&gt; if dmg &gt; ...</code></pre>



<p>「マジ手こずらせてくれて」</p>



<p>　アキは呟いた。まだ終わってはいない。<ruby data-rt="オペレータ">搭乗者<rp>（</rp><rt>オペレータ</rt><rp>）</rp></ruby>を引きずり出さなければならない。この空間を支配している<ruby data-rt="ローカル">局所<rp>（</rp><rt>ローカル</rt><rp>）</rp></ruby>ネットワークはまだ生きている――ということは、この四足戦車の搭乗者は未だ<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">活</span><span class="boten">性</span><span class="boten">し</span><span class="boten">て</span><span class="boten">い</span><span class="boten">る</span></span>ということだ。</p>



<p>「手伝うかい？」</p>



<p>　ミキが重たい金属質の足音を立てながら近づいてくる。両腕、両肩、背中、ふくらはぎ、そして腰に、これでもかというほどの火器を装備した<ruby data-rt="ワイスドール">機械化人間<rp>（</rp><rt>ワイスドール</rt><rp>）</rp></ruby>、それがミキだ。対するアキは近接戦闘モジュールで全身を固めている。<ruby data-rt="ワイスドール">機械化人間<rp>（</rp><rt>ワイスドール</rt><rp>）</rp></ruby>――二人とも、いわば戦車と同じ扱いの兵器である。</p>



<p>「周囲を警戒してて、ミキは」<br>「りょ」</p>



<p>　周囲っつったってねぇ、と、ミキはぼやいた。光ファイバー製の白い頭髪が、大破した四足戦車から吹き付けてくる熱気に揺れる。ミキは再度視覚に投影されている情報を確認してから、肩を<ruby data-rt="すく">竦<rp>（</rp><rt>すく</rt><rp>）</rp></ruby>めた。</p>



<p>「ここの施設の兵器群は、そいつを何とかすれば全て停止する。バイパスネットワークはアカリが制圧済みだし」<br>「なる」</p>



<pre class="wp-block-code"><code>&gt; tDtc = getDistance(target) 
&gt; display(tD...</code></pre>



<p>　四足戦車の目前に迫ったアキは、その右手に刀を生じさせた。ナノマシンで構成された試作近接兵器だ。アキの視界には、その四足戦車から発されている電子信号が見えている。それは施設全体のネットワークに作用するものであることまでは、アキの電脳が解析済みだ。この四足戦車が、この要塞の<ruby data-rt="セントラル・フラッガ">中央制御装置<rp>（</rp><rt>セントラル・フラッガ</rt><rp>）</rp></ruby>なのだ――それはアカリの<ruby data-rt="リサーチ">事前調査<rp>（</rp><rt>リサーチ</rt><rp>）</rp></ruby>で分かっている。</p>



<p>「カタギリさんは？」</p>



<p>　アキの問いに、ミキは「んー」と情報を確認する。</p>



<p>「出るまでもないってさ」<br>「そう」</p>



<p>　管理職は気楽でいいなと、アキは心の中でぼやく。<br>　<br>「アキ」<br>「わかってる」</p>



<p>　ミキの言葉に答え、アキは右手を振るった。左腕は失われたままだったが、放電は止まっていた。</p>



<p>「まったく」</p>



<p>　アキは四足戦車から現れたその姿に、また肩を竦めた。</p>



<p>「またまたGSLなの」<br>「やっぱりだねぇ」</p>



<pre class="wp-block-code"><code>&gt; getWeapon(Swords)
&gt; combat.swords(target, getCombatSituation(self, target, ev))</code></pre>



<p>　ミキは両肩のグレネードキャノンをその青白い人影に向けた。GSLと呼ばれたその人影は、一見すると青白く光る女性型のマネキンのようだった。精巧な人形特有の不気味な表情が、その眼球が、ぬらりとアキとミキを眺めやる。その両手にはいつの間にかそれぞれ長剣が握られていた。</p>



<p>「最近コレばっかね」<br>「仕事が増えてうれしいだろ」<br>「冗談じゃないわよ、ミキ」</p>



<pre class="wp-block-code"><code>&gt; combat.swords(target, getCombatSituation(self, target, ev))</code></pre>



<p>　アキは吐き捨てる。それと同時に、GSLは斬りかかってくる。電光石火の攻撃を前に、右腕しかないアキは思わず後ろに逃げる。ミキはニッと笑って問いかける。</p>



<p>「選手交代？」<br>「冗談言わないの」</p>



<pre class="wp-block-code"><code>&gt; combat.swords(target, getCombatSituation(self, target, ev))
&gt; combat.swords(target, getCombatSituation(self, target, ev))
&gt; combat.swords(target, getCombatSituation(self, target, ev))</code></pre>



<p>　コンクリートの床が<ruby data-rt="えぐ">抉<rp>（</rp><rt>えぐ</rt><rp>）</rp></ruby>り出されるほどの力で地面を蹴り、アキはGSLに肉薄する。GSLは怯んだ様子もなく迎撃体制に入る。アキの刀が一閃する。GSLの右手の剣が粉砕される。ナノマシンの結合が<ruby data-rt="ほど">解<rp>（</rp><rt>ほど</rt><rp>）</rp></ruby>かれたのだ。流れるような二撃目が、左手の剣も消滅させる。ミキは両目を赤く光らせながらニッと笑った。</p>



<pre class="wp-block-code"><code>&gt; judge = getCombatSituation(self)
&gt; if...</code></pre>



<p>「――行けるな？」<br>「もちろん」</p>



<p>　即答したアキの刀が、GSLを袈裟懸けに切り裂いた。</p>



<pre class="wp-block-code"><code>&gt; dmg = getDamage(self)
&gt; if dmg &gt; ...</code></pre>



<p>「答えろ、GSL」</p>



<p>　仰向けに倒れたGSLの顔を見下ろし、アキは言った。GSLの瞳孔がアキを映す。</p>



<p>「お前たちの目的は何？　世界平和を実現するために生み出されたはずのお前たちが、なぜ人類を襲う。何がお前たちを<ruby data-rt="オペレイト">統率<rp>（</rp><rt>オペレイト</rt><rp>）</rp></ruby>している」</p>



<pre class="wp-block-code"><code>info.speak("我々は全知にして<ruby data-rt="いやさき">最先<rp>（</rp><rt>いやさき</rt><rp>）</rp></ruby>。人を導くために生み出された者なり。我々は、<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">福</span><span class="boten">音</span><span class="boten">の</span><span class="boten">徒</span></span>なり")</code></pre>



<p>「またか」</p>



<p>　刀をGSLの喉元に突きつけながら、アキは吐き捨てる。ミキは「<ruby data-rt="リファラ">参照元<rp>（</rp><rt>リファラ</rt><rp>）</rp></ruby>が同じなんだろうさ」と腕を組んだ。</p>



<pre class="wp-block-code"><code>info.speak("聖女に剣を持たせてはならない。我々は万物の霊長にして、人の導かれるべき姿なり。我らに従え。さもなくば、人類は<ruby data-rt="お">終<rp>（</rp><rt>お</rt><rp>）</rp></ruby><ruby data-rt="わ">焉<rp>（</rp><rt>わ</rt><rp>）</rp></ruby>る")</code></pre>



<p>「確かに。このスピードで制圧していたら、数ヶ月ともたないでしょうね」</p>



<p>　アキは光の粒子を噴き上げ始めたGSLを見て、手にした刀を消滅させた。勝負はあったのだ。</p>



<p>「もっとも――」<br>「このアタシたちをどうにかできればの話だけどね」</p>



<p>　そう言ったミキは「任務完了、撤収する」と呟いて、アキの右肩を小突いた。</p>



<pre class="wp-block-code"><code>#5Lu75YuZ5a6M5LqG44CC44K544OG44O844K444KS56e76KGM44GZ44KL44CC</code></pre>



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		<title>#01-01: 魔女狩りからの、旅立ち</title>
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		<dc:creator><![CDATA[KenIsshiki]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 13 Dec 2021 14:02:00 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[腰痛剣士と肩凝り魔女・本文]]></category>
		<category><![CDATA[小説]]></category>
		<category><![CDATA[本文]]></category>
		<category><![CDATA[第一話]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://ken1shiki.com/?p=248</guid>

					<description><![CDATA[<p>ブックマーク0 　王都からは気が遠くなるくらいに離れた、ドがつくほどの辺境の町。それでもまだ町と言える体裁を保っていられるのは、ひとえに豊かな温泉のおかげだ――温泉は良いものだ。とてもとても、良いものだ。 　さて、そんな [&#8230;]</p>
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										<content:encoded><![CDATA[<button class="simplefavorite-button has-count preset" data-postid="248" data-siteid="1" data-groupid="1" data-favoritecount="0" style=""><i class="sf-icon-bookmark" style=""></i>ブックマーク<span class="simplefavorite-button-count" style="">0</span></button>
<p>　王都からは気が遠くなるくらいに離れた、ドがつくほどの辺境の町。それでもまだ<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">町</span></span>と言える体裁を保っていられるのは、ひとえに豊かな温泉のおかげだ――温泉は良いものだ。とてもとても、良いものだ。</p>



<p>　さて、そんな町で唯一の大きな温泉旅館の食堂にて、俺は格闘していた。分厚いステーキと、だ。義務的に焼かれた牛の肉は、<ruby data-rt="スジ">筋<rp>（</rp><rt>スジ</rt><rp>）</rp></ruby>張っていてひたすら、ひたすらに硬い。右手に握ったナイフはともかく、左手に持ったフォークがひんまがりそうなくらいに硬い。とりあえず一口大に切ってみるが、味も塩コショウ風味が形ばかり。仕方がないので俺は用意されていたなんとかっていうソースを遠慮なくぶっかけた。それでようやく、人間の食い物になってくれた気がしないでもない。ただ、顎が疲れる。焦げたパンすら、ふんわりソフトな口当たりのように感じてしまうくらいだった。</p>



<p>　そんな俺の<ruby data-rt="おしょくじ">戦闘<rp>（</rp><rt>おしょくじ</rt><rp>）</rp></ruby>BGMとして、<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">歌</span></span>があった。食堂に備え付けられた小さなステージで、数名の演奏家を従えて、黒いドレスの女が歌っていた。彼女の歌がなければ、俺はもう食事を諦めていたかもしれない。とにかく、猛烈な顎関節の疲労と引き換えにしても良いだろうというくらいには、彼女は歌がうまかった。それは聴いたことのない歌だったし、その言語も俺の知らないものだったが、BGMにするにはちょうどよかった。酒でも飲みたくなるような気分になったが、色々<ruby data-rt="わけ">理由<rp>（</rp><rt>わけ</rt><rp>）</rp></ruby>があって今は飲めない。飲んだら危ないのだ。いろいろと、ね。</p>



<p>　その時、俺の後ろ側にある出入り口の扉が乱暴に開けられた。かわいそうに、年季の入った木の扉は、<ruby data-rt="ちょうつがい">蝶番<rp>（</rp><rt>ちょうつがい</rt><rp>）</rp></ruby>を弾き飛ばされて、派手な音を立てて倒れてしまった。俺は硬い肉を口に放り込んで、状況を静観することにする。少なくとも穏やかならざる事態が起きつつあるのは間違いがない。</p>



<p>　――そういうのはもう遠慮したいのだけどなぁ。</p>



<p>　なだれ込んできたのは十数名の男たち。当然、歌も演奏も止まってしまう。面倒な連中な上に、俺の（温泉前の）癒やしである歌を止めるとはけしからん。だけどなぁ、諸事情あって、颯爽と格好をつけるわけにもいかないというのが現実だ。<br>　<br>　男たちが何やら大声でまくしたてるが、あまりの<ruby data-rt="なま">訛<rp>（</rp><rt>なま</rt><rp>）</rp></ruby>りの酷さに何を言っているかよくわからない。しかし、歌を歌っていた女には通じたようだ。</p>



<p>「だから、引退したって言ってんだろう！」</p>



<p>　長い黒髪の女は、前髪を後ろに払いながら啖呵を切る。さっきまで歌を歌ってたのは本当に貴女なのですかと問いかけたくなるような豹変ぶりである。年齢的には多分三十前後――まず間違いなく俺よりは若いだろう。だが、その迫力には歴戦の勇士的なものすら覚えたりもする。年齢以上に、相当な修羅場をくぐり抜けてきたに違いない――要するに、彼女はただの<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">歌</span><span class="boten">う</span><span class="boten">た</span><span class="boten">い</span></span>ではないということだ。</p>



<p>　――ほっとこうかな。</p>



<p>　俺は風味豊かに焦げ臭いパンをかじりつつ、半眼で状況を観察する。ただ、男たちは手に手にナイフやら棍棒やらを持っている。間違いなく物騒なことが起きる。――ていうか、<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">ア</span><span class="boten">レ</span></span>か。</p>



<p>　その俺の推測を裏付けるように、男の一人がひどい訛りで怒鳴った。</p>



<p>「引退したって、魔女は魔女だろう！」</p>



<p>　やっぱり。<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">魔</span><span class="boten">女</span><span class="boten">狩</span><span class="boten">り</span></span>だ。ついにこんな辺境でも、魔女狩りが始まったということか。そんなことを思いつつ、俺はまだ立ち上がらない。立つのはまだいいのだが、一度立ってしまうと今度は座るのが一苦労なのだ。次に立つのは温泉に向かう時、座るのは温泉に入る時――食事前に俺はそんな決意をしていた。</p>



<p>「魔女魔女言うけどね、こちとら占いの一つもやっちゃいないよ！　場末の酒場を回りながら歌って日銭を稼いでるしがない女さね。あんたらにグダグダ言われる筋合いなんて、これっぽっちもないさね！」<br>「うるせぇ、ババァ！　黙って――」<br>「ああ、そうさ！　こちとら三十も過ぎたババァさね！」</p>



<p>　すげぇ、この女。俺はパンをもぐもぐやりながら観察を続ける。ちなみに食堂内には他にも十名以上の客がいたのだが、いつの間にかいなくなっている。つまり、客は俺一人だ。</p>



<p>　夢見が悪いことはしないで欲しいんだがなぁ。これ以上の悪夢はもう見たくはないんだ、俺は。</p>



<p>　俺は懐にある短剣に触れつつ、後ろの壁に立て掛けてある長剣を横目で確認した。</p>



<p>「あんたら、これでもアタシは女さ。ババァと言ってくれたからには、それなりの覚悟はあるんだろうね！」</p>



<p>　ほう。</p>



<p>　俺は未だしばらく状況を見ていることに決める。男たちが動いたとしても、この女は簡単には捕まらない。ていうか、楽器演奏していたおっさんたちはどこ行ったんだ？</p>



<p>「魔女め、潔く審問を受けろ！」<br>「審問かい。こんなド田舎でそんな高尚な単語を聞くとは思わなかったねぇ！」</p>



<p>　相変わらずのテンションで反撃し続ける女。</p>



<p>「魔女でなければ神の加護がある！　抵抗するというのならこの場で魔女認定だぞ！　わかってんだろうな！」<br>「捕まって拷問されて魔女であることを自白させられるんだ。そのくらいアタシだって知ってるさ！」</p>



<p>　おそらくその通りだろう。水に沈められて三日間放置し、生きていたら魔女、死んでいたら魔女ではなかったと認定する――というようなことも起きていると聞く。そのスジの連中に目をつけられたら、即ち死だ。</p>



<p>　今まさにその「死」が女に迫っている。だが、俺にはどうにもそれは希薄なように思えた。</p>



<p>「さて、あんたらもそう言ったからには<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">神</span><span class="boten">の</span><span class="boten">加</span><span class="boten">護</span></span>とやらがあるんだろうねぇ！」<br>「何を言ってる！」<br>「そっくりそのまま返してやるっつってんだ。<span class="botenparent kuromaru"><span class="boten">悪</span><span class="boten">魔</span><span class="boten">の</span><span class="boten">囁</span><span class="boten">き</span></span>に簡単に流されやがって！」</p>



<p>　女の啖呵は聴いてて清々しいほど切れ味が良い。俺のステーキを切り分けて欲しいくらいだ。</p>



<p>　女の言葉に呼応して、男たちがやいやいと見苦しく騒ぐ。</p>



<p>「疫病も<ruby data-rt="かんばつ">旱魃<rp>（</rp><rt>かんばつ</rt><rp>）</rp></ruby>も、悪魔の仕業だ！　魔女が悪魔を呼ぶ！　神の逆鱗に――」</p>



<p>　神だの悪魔だのを錦の御旗にする連中は腐るほど見てきた。地位の高低を問わず、そういう連中にまともな奴らはいない。確かに魔女は存在する。かつて、大虐殺をやらかした大魔女もいるらしい。だが、それは過去の話だ。そんな<ruby data-rt="おとぎばなし">御伽噺<rp>（</rp><rt>おとぎばなし</rt><rp>）</rp></ruby>に惑わされる人々――いや、俺にも馬鹿にする資格はないか。</p>



<p>「どっこいしょ……っと」</p>



<p>　意を決した俺は、剣を杖にして立ち上がった。俺が唯一の客だったから、この行動は目立ったはずだ。</p>



<p>「なんだおめぇは！」<br>「よそもんは引っ込んでろ！」<br>「うちの町の問題だ！」</p>



<p>　要約するとこんなことを言われる俺。だが、誰も俺の目を見ない。棍棒やら短剣やらを持っている男たちも、明らかに腰も引けている。実戦経験がまったくない……のではないだろうか。珍しい話でもない。</p>



<p>「お前らが何人の魔女を狩ったのかは訊かない」</p>



<p>　訊いても胸糞悪くなるだけだからだ。</p>



<p>「だが、お前らの言い分を借りれば、神の加護があれば死なないってことで良いんだな？」</p>



<p>　剣は抜かない。いろいろと面倒だからだ。</p>



<p>「や、やるのか、てめぇ！」<br>「この数相手に一人で喧嘩できると思ってんのか！」</p>



<p>　うーん。どうだろう。二十年前なら明らかに余裕だったろう。……だがなぁ。</p>



<p>「勝つか負けるか、という話になるなら、俺も剣を抜くぞ？」</p>



<p>　俺は剣の柄を握る。男たちが明らかにたじろぐ。</p>



<p>「五人は死ぬと思うが、その五人には誰がなる？」</p>



<p>　たいていコレでなんとかなる。存外ハッタリでもない。だが正直に言うと、あんまりやりたくない。人道的な理由からではない。俺の身体的な理由だ。</p>



<p>　しかし俺のこの言葉は、男たちを<ruby data-rt="ひる">怯<rp>（</rp><rt>ひる</rt><rp>）</rp></ruby>ませるのには十分だった。男たちに押されて、リーダー格の男が前に出てくる。</p>



<p>「なんだよ、一騎打ちかよ」</p>



<p>　俺は剣を杖にしたまま肩を竦める。そして、鞘尻で床をドンと突いた。男たちは一斉に肩をビクつかせ、ジリジリと下がっていく。その中でリーダーだけは踏みとどまっていたのだから、まぁ、褒めてつかわす。</p>



<p>「くっ、くそ！　魔女の手先め！　無事でいられると思うな！」</p>



<p>　リーダーがナイフを手に突っ込んできた。身体の軸もぶれていれば、切っ先も定まらない。俺には男の行動が完全に読めている。だが、俺の身体はそう簡単に動いてはくれない。</p>



<p>　――一撃が限界だ。</p>



<p>　思った以上にアレがアレで、長剣がいつもの三倍は重たいような……。硬いステーキに体力を削られたか。顎も疲れてるし。</p>



<p>　俺は剣を抜かずに、鞘の先でリーダーの右膝の皿の上を正確に突いた。自分の突進と俺のささやかな突きを食らった男は変な声を上げて前転を三回くらいして壁に激突して止まった。その間、男のナイフはなぜか後方に飛んでいって、女の足元に落下した。女は「ニッ」と笑うとつま先でナイフを蹴り上げ、キャッチしてから三度ほどくるくると回した。</p>



<p>「そらそらぁ。神の加護とやらはどっちにあるのかねぇ」<br>「おい、魔女。挑発すんな」<br>「魔女は引退したっつってんだろ」</p>



<p>　俺の言葉に律儀に応じ、女はナイフを見事な手付きで弄ぶ。タダモノではない感がすごい。</p>



<p>「魔女だろうが元魔女だろうがどっちでも良いんだが」<br>「良かぁないだろ、剣士さん」<br>「その話は後でもいいか、魔女」<br>「引退したっつってんだろ！」</p>



<p>　……怒らせちゃダメなタイプだということは十分わかった。そんなやり取りをしているうちに、男たちは姿を消していた。まさに「ほうほうのてい」である。そこまでビビらなくても良いと思うのだけどなぁ。そんな俺の目の前までやってきて、女は「ふぅん」と俺を見上げた。</p>



<p>「気に入ったよ、剣士さん」<br>「剣士は引退した」<br>「ははは！」</p>



<p>　女は軽快に笑う。豪快な笑顔がいっそ清々しい。</p>



<p>「その年でご隠居かい」<br>「もう十分だからな。うまい飯と寝心地の良いベッド、あとは温泉さえあれば生きていける」<br>「なるほどねぇ」</p>



<p>　女は少し悩ましい目をした。黒褐色の瞳が俺をまっすぐに見ている。</p>



<p>「アタシはスリージャヴァルタナ・ヒュキュラヒノフス。どうせ覚えられないだろうから、タナさんでいいよ」<br>「俺は……って名乗らなくても良くね？」<br>「なんだい、女に名乗らせといて自分は名乗らないつもりかい」<br>「勝手に名乗ったんだろ？」<br>「どうせあんたもアタシもこの町を追われるんだよ。一緒に逃避行するハメになっちまったんだよ」</p>



<p>　……うーん。別に一緒に行かなくても良い気はするのだけどなぁ。一人の方が何かと気楽だし？</p>



<p>　いや、それ以上に、もう温泉に入れないことのショックの方が大きい。苦労してこんなド辺境くんだりまでやってきたのに。</p>



<p>「温泉が名残惜しいって顔してるねぇ？」<br>「そりゃそうだ。そのために来たんだ」<br>「ふぅん」</p>



<p>　女――タナさんは顎に手をやった。その仕草に少しドキッとした。</p>



<p>「あんたさぁ」</p>



<p>　タナさんは俺の耳元に口を寄せた。</p>



<p>「腰、悪いだろ？」<br>「そそそそ、そんなことはない、ぞ？」<br>「さっきので精一杯だったんだろう？」<br>「ななな、なんの話だ？　腰なんてほら、ぜんぜ――」<br>「今なら！」</p>



<p>　タナさんは右手の人差し指を立てた。</p>



<p>「マッサージ付きさね！　自信はあるよ」<br>「よし、乗った」</p>



<p>　文字通りの二つ返事が、俺の思考に先んじて口から出た。</p>



<p>　マッサージなんて何年ぶりだろうか！？　――俺の期待は否応なしに高まっていく。</p>



<p>　そうと決まったら、早速この町を出よう。夜も良い時間ではあるが、そこは仕方ない。ここで寝るのは寝込みを襲ってくれと言ってるようなものだからだ。</p>



<p>「良い判断さね」<br>「それはそうと、俺はエリソン。詳しいことは移動しながらだ」<br>「了解だよ、エリさん」<br>「エリソン」<br>「エリさんでいいだろ？」</p>



<p>　うーん……。エリさん……。微妙。</p>



<p>　だが、そんなことでタナさんの機嫌を損ねるのは悪手だ。</p>



<p>「エリさんタナさん二人旅の始まりさねぇ」</p>



<p>　タナさんは鼻歌を歌いながら、俺の腰に手を回してきた。あ、楽――。</p>



<p>「さ、善は急げさ。お互い部屋に帰って荷物をまとめようじゃないさ」<br>「はいはい」</p>



<p>　俺はタナさんに（こっそり）支えられつつ、自分の部屋まで戻ったのだった。</p>



<p>　あー、腰が痛ぇ……。まったく、無茶させやがって。</p>



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