KenIsshiki

赤の魔神と錬金術師・本文

BD-02-01:男装の女神官、襲来

 果たしてその行程では、取り立てて何の事件も起きなかった。強いて言えば最短一週間の道程が雨や崖崩れの影響で一ヶ月近くになってしまったことくらいである。料金は割増になり、途中の食料等の補充に余計に金がかかり……と、宅配任務の報酬はあえなく消え...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-01-04:魔石の噂を前にして、人生一発逆転の夢を見る

 アディスの言葉に、ケインは「ん?」と首を傾げる。「魔石って、なんだ? 金になるのか?」「ええ、そりゃぁ」 アディスは渋々といった様子で頷いた。「金にはなります。いえ、なる可能性はあります。でも、そのぶん命の危険は大きいんですよ。普通は傭兵...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-01-03:シャリーはひたすら干し肉を食べ続ける

 乗合馬車の荷台に乗り込んだのは、結局はシャリーたち三人だけだった。乗り心地の良い乗り物とは言えたものではなかったが、それでも幌に守られた荷台は、直射日光も風も雨も防ぐことができる。その上自分の足で歩く必要もなければ護衛もついている。安全性...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-01-02:先行投資は熊鍋と焼麺で

 シャリーの目の|潤《うる》みが限界に達しようとしたまさにその時。「おじさーん」と若い男の二人連れが御者に声をかけた。「これ、王都まで行く?」 大きなカバンを背負い、革の鎧を着けた黒髪の青年が、軽い口調で尋ねる。若者らしく少し崩した口調では...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-01-01:行き倒れ寸前の錬金術師の少女は命を賭けて交渉する

 めちゃくちゃ。 めちゃくちゃ、おなかが、すきました。 生命維持に必要な栄養は、《《おくすり》》で摂取できる。だからかろうじて死んではいない。しかしそれにしても、この一週間、《《おくすり》》以外、何一つ胃の中に入っていない。野草でも食べよう...
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大魔導と闇の子・本文

WA-09-99:岐路~エピローグ

 まいったわねぇ。 意識を取り戻したセウェイは、バツが悪そうな顔をして肩を|竦《すく》めてみせた。 グラヴァードの拠点の一つ、古びた砦の一室に、グラヴァード、トバース、ヴィー、そしてカヤリが集まっていた。彼らの視線の先にはセウェイが寝かされ...
大魔導と闇の子・本文

WA-08-07:弾劾

 バカな! そんなバカなことが! ハインツは魔法障壁を容赦なく突き破ってくる光を迎撃しようと、持ちうる全ての力を解放する。カヤリが使ったのは|緋陽陣《ジェルメール・ヅォーネ》。あらゆる闇を|祓《はら》う力を持つ|陣魔法《ヅォーネ》。今のハイ...
大魔導と闇の子・本文

WA-08-06:”Fiat lux!” Et facta est lux.

 光あれ――。 今まさにトバースを喰らい尽くそうとしていた闇を切り払ったのは、少女の声だった。 万策尽き、身動きすらできなくなっていたトバースの手に、小さな掌が重なった。「闇の子……」「カヤリ」 トバースの前に、黒髪に水色の瞳の少女が立って...
大魔導と闇の子・本文

WA-08-05:ハインツの精神世界

 決死の憑依術があまりにも呆気なく成功してしまい、トバースは逆に|狼狽《うろた》えた。ハインツが防御を施していない可能性は皆無であり、トバースがその防御を無意識のうちに貫けた可能性と言うのは、それにも増して低かった。「一人で私を相手にどうし...
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