KenIsshiki

赤の魔神と錬金術師・本文

BD-04-03:理由

 なぜですか? シャリーは重ねて尋ねた。「オーザさんは、錬金術師ギルドとして保有しているものをいくらでも使える立場では。魔石さえ」「サブラスの魔石でなければならないんだよ」 オーザの答えは今ひとつ要領を得ない。シャリーは顔には出さないように...
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BD-04-02:錬金術師ギルド

 セレナが神官補たちを引き連れて旅立ったのを見送って、シャリーはケインたちの店へと向かった。シャリーは一度歩いた道を忘れることがない。その抜群の方向感覚から、錬金術師ギルドの知り合いたちからは「伝書鳩」の|渾名《あだな》をつけられていたくら...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-04-01:シャリーの決意

 あれ? ここはどこだっけ? シャリーは目を開けてしばし考えた。部屋はまだ薄暗い。腹時計的には間もなく日の出の頃だ。とりあえず水でも飲もうかと身体を起こそうとしたが、全身に何かがのしかかっていて動けない。 ああ、私、抱き枕にされているんだ。...
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BD-03-05:運命という名のバイアス

 冷静な視線を叩きつけながら、アディスが淡々と尋ねる。「あなたが魔神の手先ではないこと。それを証明できますか」「不可能だ」 男は即答する。「私が魔神の手先なのか、あるいは魔神に敵対する何かなのか。私がいずれと名乗ったところで、意味があるもの...
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BD-03-04:不可解な男

 日はすっかりと落ちた。空は暗い雲に覆われており、地上はまとわりつくような湿気に包まれていた。今すぐにでも雨が降りそうな空模様だ。にも関わらず、歓楽街の方は未だ光と喧騒に包まれていて、まだまだ眠る空気ではない。一方、ケインたちの店舗兼住宅の...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-03-03:エライザとシャリーの出会い

 エライザが聖神殿に戻ると、すぐにセレナが出迎えにやってきた。「おかえりなさいませ、エライザ様」「うん。ん? その子は? 見かけない顔だが?」 セレナの後ろにいた痩せた少女に視線を送るエライザ。エライザは百九十を超える長身の持ち主であったか...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-03-02:謀略の渦

「実を言いますと」 数秒の沈黙の末に、エルドは言った。「我々ギラ騎士団は、すでに魔神サブラスの調査を行っております。事後になって申し訳ないのですが、我々の組織の性質上、そもそも許可など貰わなくても良いというのが事実でありましてね」「くだらぬ...
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BD-03-01:女王とギラ騎士団

 エレン神殿の聖騎士エライザ、筆頭宮廷魔導師アリア、そして女王ヘレン。ディンケル海洋王国の政治は、実質この三名が取り仕切っていた。この三名はそれぞれが大魔導クラスの魔法使いであるのだが、中でもエライザは「全能の騎士」とも呼ばれており、その二...
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BD-02-03:シャリーの理想は高く難く

 セレナの憤慨を受けて、シャリーが顔を上げる。「ヴラド・エール神はその時からずーっと|彷徨《さまよ》っているんですよね。この世界を。エレン神を求めて、ずっと」「そうだ」 頷くセレナ。そこではたと首を振る。「おっと、話がそれてしまったが。ま、...
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BD-02-02:ヴラド・エールにかけられた呪い

 四人に増えた一行は、そのまま丘を下り、城下町へと入る。メレニ太陽王国の事実上の属国という立場にあるために、都市は城塞化を放棄させられ、今や攻められれば一瞬で火の海になって|陥落《かんらく》する無防備な街並みだった。人々の様子にも危機感はな...
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