セレスの大地

赤の魔神と錬金術師・本文

BD-04-06:暗転

 シャリーの目の前で、セレナが声にならない悲鳴を上げて崩れ落ちた。「セレ姉!」 ケインが咄嗟に黒曜石の魔神像とセレナの間に身体を滑り込ませて、立ちはだかる。「セレ姉に何をした!」『我と我が眷属の呪いを……!』 魔神が動き始めた。黒曜石の外装...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-04-05:眠るクレスティア

 暗黒の城までまっすぐに、数百メートルに渡って道が生じていた。一見すると石橋だが、何十年も海中にあったとは思えぬほどに艷やかで、海藻の類も全く見当たらなかった。それどころか波にも雨にも濡れてさえいない。「具合が悪くなるくらいの魔力ですね……...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-04-04:誘い導く黒い影

 脳までを貫き通した閃光と、直後に襲いかかってきた轟音。それに次ぐ衝撃波。四人は盛大に波を被り、たちまちのうちにびしょ濡れになってしまった。「くっそ、なんだってんだ!」  しばらくの悶絶の末、一番最初に立ち直ったケインが吠えている。「ううぅ...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-04-03:理由

 なぜですか? シャリーは重ねて尋ねた。「オーザさんは、錬金術師ギルドとして保有しているものをいくらでも使える立場では。魔石さえ」「サブラスの魔石でなければならないんだよ」 オーザの答えは今ひとつ要領を得ない。シャリーは顔には出さないように...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-04-02:錬金術師ギルド

 セレナが神官補たちを引き連れて旅立ったのを見送って、シャリーはケインたちの店へと向かった。シャリーは一度歩いた道を忘れることがない。その抜群の方向感覚から、錬金術師ギルドの知り合いたちからは「伝書鳩」の|渾名《あだな》をつけられていたくら...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-04-01:シャリーの決意

 あれ? ここはどこだっけ? シャリーは目を開けてしばし考えた。部屋はまだ薄暗い。腹時計的には間もなく日の出の頃だ。とりあえず水でも飲もうかと身体を起こそうとしたが、全身に何かがのしかかっていて動けない。 ああ、私、抱き枕にされているんだ。...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-03-05:運命という名のバイアス

 冷静な視線を叩きつけながら、アディスが淡々と尋ねる。「あなたが魔神の手先ではないこと。それを証明できますか」「不可能だ」 男は即答する。「私が魔神の手先なのか、あるいは魔神に敵対する何かなのか。私がいずれと名乗ったところで、意味があるもの...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-03-04:不可解な男

 日はすっかりと落ちた。空は暗い雲に覆われており、地上はまとわりつくような湿気に包まれていた。今すぐにでも雨が降りそうな空模様だ。にも関わらず、歓楽街の方は未だ光と喧騒に包まれていて、まだまだ眠る空気ではない。一方、ケインたちの店舗兼住宅の...
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BD-03-03:エライザとシャリーの出会い

 エライザが聖神殿に戻ると、すぐにセレナが出迎えにやってきた。「おかえりなさいませ、エライザ様」「うん。ん? その子は? 見かけない顔だが?」 セレナの後ろにいた痩せた少女に視線を送るエライザ。エライザは百九十を超える長身の持ち主であったか...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-03-02:謀略の渦

「実を言いますと」 数秒の沈黙の末に、エルドは言った。「我々ギラ騎士団は、すでに魔神サブラスの調査を行っております。事後になって申し訳ないのですが、我々の組織の性質上、そもそも許可など貰わなくても良いというのが事実でありましてね」「くだらぬ...
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