大魔導と闇の子・本文 WA-02-04:防波堤 二人は洗い場で入念に髪や身体を洗った後、大きな湯船に勢いよく突入した。カヤリはまだ場所慣れしてはいなかったが、見たこともない大きさの湯船に少なからず興奮していた。 「あったまるねぇ」 ヴィーがカヤリを後ろから抱きながら息を... 2023.02.07 大魔導と闇の子・本文
大魔導と闇の子・本文 WA-02-03:前を向く力にならない過去になんて、何の価値もないんだよ 動く通路の先にあったのは、巨大すぎる空間だった。イーラの村の集会場なら十や二十が余裕で収まる広さがあり、天井も恐ろしく高かった。多くの人々が、難しい会話をしながら忙しく行き交うその白い空間は、灯りもないのに明るかった。ただ、恐ろしく無機... 2023.02.05 大魔導と闇の子・本文
大魔導と闇の子・本文 WA-02-02:暗中のダイアログ 自動的に開く扉を抜けて建物に踏み入ると、カヤリたちの背後で扉が閉まった。途端に外の賑やかだった灯りが消え失せ、全くの闇に染まる。なのに自分の手や隣にいるヴィーの姿だけはやけにはっきりと見える、カヤリにとっては極めて不可解な闇だった。床も... 2023.02.04 大魔導と闇の子・本文
大魔導と闇の子・本文 WA-02-01:ヴィーとカヤリ 男はハインツと名乗った。だが、カヤリにはそれ以外は何も伝えようとしなかった。カヤリが魔法で連れてこられた都市は「エクタ・プラム」という名前だった。イーラ村とは何もかもが違っていて、カヤリは|眩暈《めまい》を起こしたほどだった。 ... 2023.02.02 大魔導と闇の子・本文
大魔導と闇の子・本文 WA-01-02:いざない 叔父の家の外には、村人が押し寄せていた。手に手に武器になりそうなものを持ち、ギラギラした目でカヤリを見ていた。カヤリは中尉の背中に隠れるようにして、駐在所までの道を歩き始めようとした。 その時、中尉が胸を|掻《か》き|毟《むし》... 2023.01.31 大魔導と闇の子・本文
大魔導と闇の子・本文 WA-01-01:カヤリの覚醒 エクタ・プラムの崩壊から遡ること八年、紫龍歴797年のある冬の日。アイレス魔導皇国の最北端、「龍の角」と呼ばれる地方にある村・イーラに、一人の女の子が生まれた。村はひどく貧しく、そして年中寒かった。針葉樹すらまばらな、潮風吹きすさぶこの... 2023.01.30 大魔導と闇の子・本文
大魔導と闇の子・本文 WA-00-00:劫火に沈む街 居住人口三千あまり。しかし各地から無数の人々が流入しては去っていく、不夜の都。その魔導都市は、皇国のどこよりも発展し、栄えていた。強固な結界によって守られ、魔物や異形といった外敵から守られた、アイレス魔導皇国北部における唯一の安全地帯だ... 2022.11.22 大魔導と闇の子・本文
治癒師と魔剣・本文 DC-99-99:治癒師と魔剣 クォーテルの亡骸に祈りを捧げていたファイラスの眼前に、いきなり抜き身の剣が現れた。見事な柄飾りの施された漆黒の長剣である。その剣の持ち主は、暗黒の大魔導、カヤリだった。 「これは?」「受け取れ」 半ば強制的にその剣を持たさ... 2023.01.23 治癒師と魔剣・本文
治癒師と魔剣・本文 DC-19-03:無制御と魔神 グラヴァードは自らが構築した氷壁の結界の中に、魔神ウルテラと共に浮かんでいた。地面も空もないこの結界の内側では、双方ともに自由に動き回ることは難しい。その上、外界への影響力もほとんど及ぼすことができない。グラヴァードは抜身の剣を下げたま... 2023.01.22 治癒師と魔剣・本文
治癒師と魔剣・本文 DC-19-02:成敗 イレムの纏っている威圧感は凄まじいものがあった。その眼力に、さしものバレスも身が|竦《すく》んだ。しかしそれでもなんとか机の後ろに逃げ込む。クォーテルの死体を踏みつけながら。 「|神帝師団《アイディー》の一人として、この事態は看過... 2023.01.21 治癒師と魔剣・本文