小説

赤の魔神と錬金術師・本文

BD-03-02:謀略の渦

「実を言いますと」 数秒の沈黙の末に、エルドは言った。「我々ギラ騎士団は、すでに魔神サブラスの調査を行っております。事後になって申し訳ないのですが、我々の組織の性質上、そもそも許可など貰わなくても良いというのが事実でありましてね」「くだらぬ...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-03-01:女王とギラ騎士団

 エレン神殿の聖騎士エライザ、筆頭宮廷魔導師アリア、そして女王ヘレン。ディンケル海洋王国の政治は、実質この三名が取り仕切っていた。この三名はそれぞれが大魔導クラスの魔法使いであるのだが、中でもエライザは「全能の騎士」とも呼ばれており、その二...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-02-03:シャリーの理想は高く難く

 セレナの憤慨を受けて、シャリーが顔を上げる。「ヴラド・エール神はその時からずーっと|彷徨《さまよ》っているんですよね。この世界を。エレン神を求めて、ずっと」「そうだ」 頷くセレナ。そこではたと首を振る。「おっと、話がそれてしまったが。ま、...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-02-02:ヴラド・エールにかけられた呪い

 四人に増えた一行は、そのまま丘を下り、城下町へと入る。メレニ太陽王国の事実上の属国という立場にあるために、都市は城塞化を放棄させられ、今や攻められれば一瞬で火の海になって|陥落《かんらく》する無防備な街並みだった。人々の様子にも危機感はな...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-02-01:男装の女神官、襲来

 果たしてその行程では、取り立てて何の事件も起きなかった。強いて言えば最短一週間の道程が雨や崖崩れの影響で一ヶ月近くになってしまったことくらいである。料金は割増になり、途中の食料等の補充に余計に金がかかり……と、宅配任務の報酬はあえなく消え...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-01-04:魔石の噂を前にして、人生一発逆転の夢を見る

 アディスの言葉に、ケインは「ん?」と首を傾げる。「魔石って、なんだ? 金になるのか?」「ええ、そりゃぁ」 アディスは渋々といった様子で頷いた。「金にはなります。いえ、なる可能性はあります。でも、そのぶん命の危険は大きいんですよ。普通は傭兵...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-01-03:シャリーはひたすら干し肉を食べ続ける

 乗合馬車の荷台に乗り込んだのは、結局はシャリーたち三人だけだった。乗り心地の良い乗り物とは言えたものではなかったが、それでも幌に守られた荷台は、直射日光も風も雨も防ぐことができる。その上自分の足で歩く必要もなければ護衛もついている。安全性...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-01-02:先行投資は熊鍋と焼麺で

 シャリーの目の|潤《うる》みが限界に達しようとしたまさにその時。「おじさーん」と若い男の二人連れが御者に声をかけた。「これ、王都まで行く?」 大きなカバンを背負い、革の鎧を着けた黒髪の青年が、軽い口調で尋ねる。若者らしく少し崩した口調では...
赤の魔神と錬金術師・本文

BD-01-01:行き倒れ寸前の錬金術師の少女は命を賭けて交渉する

 めちゃくちゃ。 めちゃくちゃ、おなかが、すきました。 生命維持に必要な栄養は、《《おくすり》》で摂取できる。だからかろうじて死んではいない。しかしそれにしても、この一週間、《《おくすり》》以外、何一つ胃の中に入っていない。野草でも食べよう...
大魔導と闇の子・本文

WA-09-99:岐路~エピローグ

 まいったわねぇ。 意識を取り戻したセウェイは、バツが悪そうな顔をして肩を|竦《すく》めてみせた。 グラヴァードの拠点の一つ、古びた砦の一室に、グラヴァード、トバース、ヴィー、そしてカヤリが集まっていた。彼らの視線の先にはセウェイが寝かされ...
スポンサーリンク