> em.getTarget(target)
> em.accessToGradiusRing(target, True)
アキが消滅したって!?
猛烈なスピードでコンソールを操作しているアヤコの後ろで、ヒキが張り詰めた声を上げた。驚いて振り返ったアヤコは、見たことがないほど険しい表情をしているヒキを目にする。
「アヤコ、現場を」
「無理です。局所ネットに妨害が入っていてアクセスできません」
「カタギリさんがサポート入ってるんだぞ。そんなことがあるわけ――」
「いえ、事実です」
アヤコの冷徹かつ毅然とした否定の言葉を受けて、ヒキは黙り込んだ。
「これ以上は私たちも標的にされます。最悪、意識そのものを焼き切られますよ!」
アヤコはずらりと並んだモニタを順番に睨みつけ、小さく舌打ちした。それらは次々とブラックアウトしていっていた。その黒色の侵食を止める術は、アヤコにもヒキにもない。ただ呆然と眺めるのみだ。
「アカリ、カタギリさん、どういう状況なんですか」
『ごめんヒキ、今ちょっと無理』
アカリから切羽詰まった応答がある。カタギリからは一言もなしだ。アヤコは緊張した声で状況を整理する。
「ミキも動くに動けないようです。アキは……やはり反応が完全に消えています。消失です」
「それは見れば理解できる。問題は、今、あそこで、何が起きているかだ」
「おそらくですが――」
アヤコは溜息をつくと、椅子に全身の体重を預けて足と腕を組んだ。もう自分には何もできることがないという強い意思表示だ。
「エメレンティアナが展開した局所ネットワークに捕縛されたのかと思います」
「一個人が局所ネットを? そんなことが可能なのか? いくら米国ご謹製の機械化人間とは言ったって……」
驚くヒキに、アヤコは「可能性の話ですが」と前置きして続ける。
「エメレンティアナは、最高峰の技術を積み込まれた機械化人間だと言われています。環地球軍事衛星群への単独介入も可能だと、先ほどアサクラさんから頂いたデータにはありましたね」
「量子コンピュータでも搭載してるというのか?」
「本体にはもちろんそこまでの演算装置は積み込めていないでしょう」
アヤコはデスクの引き出しの中から眼鏡を取り出すと、おもむろに着けた。室内の照明が半減し、代わりに眼鏡のレンズ部分が淡く輝く。ヒキは予告なく行われたその行為に驚くでもなく、先を促した。
「ですが、エメレンティアナは何らかの方法で同等以上の演算能力を叩き出すのでしょう。或いはグラディウス・リングのリソースの一部をも利用しているのかもしれません」
「無茶苦茶だ」
そんな厄介なものが十一年間も行方不明だったなんて。よもやその期間活動を停止していたわけでもあるまい。となれば、日本国中……いや、日本国と接点のあるネットワークは全て――ヒキは己の額にジワリと汗を感じた。
「奴は、エメレンティアナは……この国で何をしていたんだ?」
ヒキは唾を飲み込みつつ、呻くようにそう問いかけた。
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