> Organization orgn = new Organization()
> orgn.named = "revelator"
> GradiusRing.setAnalyzer("cherubim")
アキは進撃を続ける巨体を追う。
「ミキ、大丈夫?」
「誰に訊いてる?」
ミキはアキを易々と追い抜いていく。ミキは重装備がデフォルトであったから、アキはその意外なスピードに驚かされた。だが、近接戦闘のエキスパートとして、遅れをとるわけにはいかない――アキはミキをチラ見すると、声を張り上げた。
「ミキ、ヤツの肩まで駆け上がる!」
「はいよ」
アキはアヴァンダの腰まで一気に跳躍した。着地するなりウロコを蹴って、肩口まで駆け上がる。ミキも弾丸のような軌道を描いてその後を追い、アキとは反対側の肩に飛び乗った。
二人が同時に手にした刃をアヴァンダの首に叩きつける。分厚いウロコを吹き飛ばし、その肉を削ぎ落とす。だが、アヴァンダは意にも介さぬ風に前に進み続ける。
『アキ、ミキ』
舌打ちした二人の脳内に、カタギリの硬質な声が響く。
『そのままそいつの防壁を傷つけて。侵入する』
「こいつを?」
『今の一撃で侵入コードが少し解析できた』
「よくわかんないけど」
アキはミキと目を合わせ、頷いた。
「やるしかないよね」
「だな」
二人はしつこくアヴァンダの首を傷つけていく。時々アヴァンダが二人を払い落とそうとしてくるが、二人の機械化人間には、せいぜいがいやがらせにしかならないようだった。
『GSL・アヴァンダ、環地球軍事衛星群からの切断確認。論理方程式供給停止』
カタギリが淡々と述べた。
「ちょっと待てよ」
ミキが首を傾げた。白い頭髪がバサッと揺れる。アヴァンダが停止した。
「こいつ、宇宙のアレの指示で動いてたっての?」
『そうなる。長谷岡博士の指示とも言える』
「戦争終結から十年も経ってるのに? いまさら?」
ミキの問いかけには、カタギリは答えはなかった。
「ミキ、あたしたちは命令に従うだけ。難しいことはアサクラさんやカタギリさんに任せておこう」
「確かにアタシは考えるのはそんなに得意じゃないけど」
ミキは停止したアヴァンダから飛び降りた。アキもそれを追う。アヴァンダはGSLの戦闘端末と同じように、光の粒子に変じ始めていた。アキは刀を消失させながら、演技じみた溜息をついた。
「でもGSLの倒し方はわかったね。物理でダメージを与えて、その回復時の論理方程式の動きを解析してどうのこうのするってわけだ」
「火器の見直しも必要だな」
ミキは少し不満げに口にする。重火力による敵性勢力の一挙殲滅を真骨頂とするミキにとって、既存の火力が通じないアヴァンダは非常にやりにくい相手だったからだ。他のGSLがどうであれ、対策の一つも打たないわけにはいかなかった。
「それにしてもさ、アキ」
「うん?」
「カタギリって、どんな奴なんだ?」
「さぁ。会ったこともないし、ねぇ?」
アキは肩を竦める。
「アサクラさんも姿を見たことはないって言ってたな、そういえば」
「そうなのかい。そんなやつをホイホイ仲間にしちまって大丈夫なのかい」
近付いてくる輸送ヘリを見上げながら、ミキは言う。
「カタギリってのが本名かさえわかりゃしないじゃないか」
『名前に意味があると思う?』
「うわ、アカリか。聞いてたのか」
『全域モニタリング中よ。カタギリさんはどうか知らないけど。あの人の追跡は常人には不可能よ』
「あいつ、なにものなん?」
アキとミキが同時に口にした。
『それすらわからない』
「アカリにも?」
『私はただのネットオタクだもの。たまたまアサクラさんに拾われて、たまたまカタギリさんの麾下に入っただけよ。もっとも私たちネット中毒者にとって、本人の顔貌や居住地なんてどうでもいい情報なんだけどね。名前だってハンドルで十分』
「それで信用性が担保できるのか?」
『あら、姿や名前みたいなものが信用性の担保要件になるなんて、本気で信じてるの?』
アカリが少しトーンとスピードを上げる。
『レヴェレイタって、そういうところよ』
「レヴェレイタ?」
アキが首を傾げつつ、着陸したヘリに乗り込む。ミキも後を追う。
『ついさっき官房長官が決めたわ。さすがに組織名がないと、書類処理上で面倒だからって』
「レヴェレイタねぇ」
ミキはネットを検索してその意味を調べる。
「……預言者って意味かい?」
『そういうことみたいね。ま、いいんじゃない?』
アカリはあっけらかんとした口調で、そう言った。
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