KenIsshiki

短編・本文

ピザとコーラと白昼夢

 キリストが生まれて死んで、それから二千数百年が経った頃。今ではもはや|A.D.《西暦》なんて表現はもう陳腐で、日本国に於ける元号よりもその存在価値を失っていた。誰もA.D.XXXX、などという表現をすることはない。ただ、古典を紐解くのには...
短編・本文

光の瀑布

 海の音は静かに繰り返す。風が蹴立てた痕が白く浮かぶ。岸に叩きつけられた波が砂の凹凸に毛羽立っては、たまらず逃げていく。そんな真夏の昼下がり、海から寄せる大気は何故かとても冷たく、笠矢律子は白い外套の襟にそっと手をやった。裸の手の甲がかじか...
短編・本文

ブライトワルト

 ほら見てみて――言われて、僕は空を|仰《あお》ぎ見る。僕たちがいるのは、闇の中に沈む森。|鬱蒼《うっそう》たる夏の樹葉が藍色の空を翳らせている。湿り気を帯びた大気の向こうに、|燦然《さんぜん》たる巨大な輝きがちらちらと揺れていた。「あれは...
短編小説

短編を集めたページ

このページは一式短編(他の長編に属さないもの)を集めたページです。気になったものがあればどうぞ。順次公開していきます。ブライトワルト(3000文字未満)光の瀑布(3000文字程度)ピザとコーラと白昼夢(3000文字程度)プライマリ・カラーズ...
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OreKyu-07-004:新たな形の世界大戦

 結論から言うと、半年近くかかってKASUMIは無事に目を覚ました。当初こそシンギュラリティの到来と、それによる科学技術、いや、人類の文明への危険性が取り沙汰されていたが、IPSxg3.0のリリースを受けて、そのリスクは封じ込められた。簡単...
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OreKyu-07-003:ピンチには必ず駆け付けると言っただろう

 そこそこうまくいっている感じの会社員生活も、早くも十年目に入ろうとしていた。俺はずっと彼女のことを忘れられず、その結果三十を過ぎても彼女の一人も作ってこなかった。一応俺の名誉のために言っておくが、告白されたことは何度かある。誘惑に駆られた...
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OreKyu-07-002:正義の人

 憧れの女の子がいた。中学二年の終わりに転校してしまったけれど、女番長として、男女を問わず、不良たちには恐れられている存在だった。正義感の塊みたいな人で、俺も何度となく助けてもらった。けど、彼女はいつも言っていた。「私はね、世界を救いたいん...
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OreKyu-07-001:再会へのイニシャライズ

 メグ? 俺は俺に触れていたはずの手を探していた。息を殺してもメグの気配を感じることはできない。すぐそばにいたはずなのに触れられない。呼ぼうにも声が出ない。 俺は膝をかがめ、周囲をまさぐった。メグが倒れているかもしれないと思ったからだ。だが...
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OreKyu-06-003:楽園とはいったい……?

「滅ぶって……どういうことだ」 思わず俺が声を上げた。ゴエティアは「何を言ってるんだこいつは」という表情をして俺を見る。『滅びは滅びよ、墨川くん。《《人》》としての意味がなくなった《《獣》》たちは、全て塩の柱にでもなったのでしょう。遠からず...
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OreKyu-06-002:罠

 なんだかんだとあって、俺たちは昼過ぎまで寝こけてしまった。連泊で取ってあるので時間の心配はしなくても良いし。本来の出張の目的なんて、今更どうでもよくなってしまったし。「ガンダムカフェ、か」「ん?」 ベッド脇に置いてあったスマホを取る時に思...
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