小説

治癒師と魔剣・本文

DC-16-01:イレムとエリシェル

 グラヴァードの予想は見事に的中した。エリシェルに率いられたディケンズ軍は、混乱を好機と捉え、帝国軍陣地へと総攻撃を仕掛けた。その兵力には不死怪物と化した帝国軍の兵士も多分に含まれていた。もとよりの戦力差に加え、不死怪物、異形が総動員されて...
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DC-15-03:運命と魔神

 それからすぐに、カヤリはグラヴァードと合流した。グラヴァードもまた、アルディエラム帝国軍の本陣が見えるところまで移動してきていた。赫々と燃え上がる陣地はいまや混乱の渦中だ。 カヤリがその背中に向けて淡々と状況を報告すると、グラヴァードは本...
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DC-15-02:宣告

 あなたでは私には勝てない――カヤリは再び断定口調でそう告げた。「私に勝つ気なら、その魔剣の力を解き放つしかない」「それも魔剣を奪う方便じゃない?」 ケーナは口の端を流れる血を|拭《ぬぐ》う。カヤリは腕を組む。が、そこに隙はない。「ニ年前に...
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DC-15-01:圧倒する力

 見つけた! ケーナの目が獲物を視認した肉食動物のそれよろしく、大きく見開かれる。敵の魔導師は本陣の外縁部にいた。そして転移魔法で移動を繰り返しながら、虐殺劇を繰り広げている。両手には刀があり、無詠唱で火球を放つ。ただものではないことは明ら...
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DC-14-02:血まみれの儀式

 魔力の密度はさらに上がる。圧死させられそうなほどの重さが、ファイラスの全身にのしかかる。ファイラスはたまらず膝をつく。ケーナは喘ぐように空中をひっかき、やがてファイラスの背中に爪を立てた。その力は信じられないほど強く、ファイラスは思わず奥...
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DC-14-01:歪んだ力

 ファイラスは隔離病棟の入り口に見知った馬車が止まっているのを確認した。完全に息が上がっていたが構ってはいられない。今この建物の中で、なにか良からぬことが起きている――ファイラスは確信していた。「おっと、今は通行止めですよ」 バレス高司祭の...
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DC-13-04:露呈する姿

 数分後、ケーナが本陣に戻ってきた時には、もはやそこは混乱の|坩堝《るつぼ》と化していた。魔導師による急襲の前には、負傷者を多く抱えた兵士たちには|為《な》す|術《すべ》もない。どこから飛んで来るかもわからない、即死級の攻撃魔法が降り注いで...
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DC-13-03:魔導師たちとの死闘

 新たな|魔導師《エモノ》の位置はすぐに分かった。彼らは魔法を使って完全に姿を消していたが、彼らの位置には不思議な魔力が渦巻いていた。 やっぱり誰かが|印《いん》を? 考えるのと同時に、ケーナは|短距離瞬間転移《ヴァーレッド》を行使して動い...
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DC-13-02:狼の異形と召喚師

 その狼は巨大な熊、いや、それ以上に巨大だった。完全な闇色のその身体は、夜闇と影に完全に溶け込んでいる。|爛々《らんらん》たる赤い目だけが闇の中に浮かんでいる。 狼の異形も倒す必要はあるが、これがいるということは、そばに異形を召喚した術師が...
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DC-13-01:殺意の予感

 蝿の巨人との戦いで負傷した兵士を一通り治療し終わる頃には、さしものファイラスも疲労困憊だった。連日の戦闘と治療に駆け回っていた疲れも出たらしい。慣れない殲撃や、慣れない戦闘用魔法を使ったりしたこともまた、その要因だっただろう。今のファイラ...
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