物語

美味兎屋・本文

ゼロゼロシイタグ 第弐話

承前 その建物の内部は、|旧《ふる》き良き古本屋のようであり、個人経営の小さな雑貨屋のようであり、或いはアンティークショップのようであり、潰れる間際のCDレンタル屋のようにも見えた。されども外から見た印象よりも、そこはずっと広かった。薄汚れ...
美味兎屋・本文

ゼロゼロシイタグ 第壱話

承前 私はいつものように帰路についていた。時刻は二十三時をとっくに過ぎている。残業の多いこの業界、この時間ならまだ早い方だと私はいつものように自分を慰める。綺麗に縦半分に割れた月は、その下半分をこれまた綺麗に雲に隠されていた。夏の名残さえも...
美味兎屋・本文

幕間/漸近シタコトニ対スル所感ヲ述ベル

承前 《《漸近科学》》という名の、得られないものを得られるものであるかのように、|或《ある》いは、触れられないものをさも触れられるものであるかのようにして、研究する科学がある。そしてまた、如何にしてその理論を具象によって証明するのかを思考す...
Aki.2093・本文

99-999「真実を知る日」

←previous episode おーい、アキ姉、そろそろ行くぞ。 ミキは二階に向かって声をかけた。「待ってー! お姉ちゃんを置いていかないで!」「はいはい」 ミキは呆れたように車のキーをくるくると弄び、カバンを「よいしょ」と持ち直す。「...
Aki.2093・本文

05-008「世界の真実を垣間見る」

←previous episode# sys.stdout.write("Hello World!")# sys.stdout.flush() アキ――! ミキは串刺しにされたアキを見上げて、思わず叫んだ。「ミキ……これで、いいんだよ」「馬...
Aki.2093・本文

05-007「神の仕事」

←previous episode> module.getReady(TH) なるほどな。 アサクラは目を閉じたまま、呟いた。 ――お前の望みも理解しているつもりだぞ、アサクラ。 カタギリはそう言った。 ならば良し。「まぁ、待て、アサクラ」...
Aki.2093・本文

05-006「深淵なるもの」

←previous episode> gsl.combat(*doll) 不思議な世界だな、ここは。 アキは違和感しかない感覚に戸惑っていた。触覚も嗅覚も使えない。視覚と聴覚のみが生きている。だから、咲き乱れる花の香りも、風の柔らかさも感じ...
Aki.2093・本文

05-005「アサクラの望み」

←previous episode> aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa_ 全GSLの撃破を確認――アサクラはカタギリからの報告を受けて、何度か頷いた。「残るはアレだけか」『深淵なるもの――』 スクリーンに映し出されているのは宇宙...
Aki.2093・本文

05-004「溜息をつく」

←previous episode> _ そこからもスムーズにGSL殲滅戦は続き、アキたちはさしたる被害もなく順調にGSLたちを撃破していっていた。ヒトデも内臓人間も、撃破にはさほど手間取らなかった。もっとも、立ち並んでいたビル群のほとんど...
Aki.2093・本文

05-003「八体のGSL」

←previous episode> openLogicalDomain(GSLs, friends) アキとミキは同時に目を細めた。瞳孔が音を立てて小さくなり、虹彩の縁がカタカタと回る。「なんだここ」「んー。カタギリが用意した舞台だろうさ...
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