小説

大魔導と闇の子・本文

WA-01-02:いざない

 叔父の家の外には、村人が押し寄せていた。手に手に武器になりそうなものを持ち、ギラギラした目でカヤリを見ていた。カヤリは中尉の背中に隠れるようにして、駐在所までの道を歩き始めようとした。 その時、中尉が胸を|掻《か》き|毟《むし》って倒れた...
大魔導と闇の子・本文

WA-01-01:カヤリの覚醒

 エクタ・プラムの崩壊から遡ること八年、紫龍歴797年のある冬の日。アイレス魔導皇国の最北端、「龍の角」と呼ばれる地方にある村・イーラに、一人の女の子が生まれた。村はひどく貧しく、そして年中寒かった。針葉樹すらまばらな、潮風吹きすさぶこの村...
大魔導と闇の子・本文

WA-00-00:劫火に沈む街

 居住人口三千あまり。しかし各地から無数の人々が流入しては去っていく、不夜の都。その魔導都市は、皇国のどこよりも発展し、栄えていた。強固な結界によって守られ、魔物や異形といった外敵から守られた、アイレス魔導皇国北部における唯一の安全地帯だっ...
治癒師と魔剣・本文

DC-99-99:治癒師と魔剣

 クォーテルの亡骸に祈りを捧げていたファイラスの眼前に、いきなり抜き身の剣が現れた。見事な柄飾りの施された漆黒の長剣である。その剣の持ち主は、暗黒の大魔導、カヤリだった。「これは?」「受け取れ」 半ば強制的にその剣を持たされたファイラスは、...
治癒師と魔剣・本文

DC-19-03:無制御と魔神

 グラヴァードは自らが構築した氷壁の結界の中に、魔神ウルテラと共に浮かんでいた。地面も空もないこの結界の内側では、双方ともに自由に動き回ることは難しい。その上、外界への影響力もほとんど及ぼすことができない。グラヴァードは抜身の剣を下げたまま...
治癒師と魔剣・本文

DC-19-02:成敗

 イレムの纏っている威圧感は凄まじいものがあった。その眼力に、さしものバレスも身が|竦《すく》んだ。しかしそれでもなんとか机の後ろに逃げ込む。クォーテルの死体を踏みつけながら。「|神帝師団《アイディー》の一人として、この事態は看過できやしね...
治癒師と魔剣・本文

DC-19-01:罪咎の源泉

 ディケンズ領の領民および兵士たちは約百万にもなる。その尽くが数時間のうちに消えた。しかし、対価としてはまだ足りぬ――魔神ウルテラはそう言ったというのか。 クォーテルは応接用ソファに腰を下ろしているバレス高司祭を睨む。「百万だぞ、バレス高司...
治癒師と魔剣・本文

DC-18-06:魔神光臨

 空は一面の白だった。白い空が|罅《ひび》割れ、その亀裂からは赤い光が漏れ出ていた。凶々しいとも神々しいとも言えない。だが、畏怖すべきものであることは確かだった。ファイラスもイレムも言葉もなくただ空を見上げている。 その空の下で、ケーナとエ...
治癒師と魔剣・本文

DC-18-05:タイムリミット

 その瞬間、夜の闇が駆逐された。それほどの光が空を焼いた。「させません!」 ケーナがエリシェルの剣を受け止め、弾いた。完全に虚をつかれたこともあり、エリシェルはやむなく二歩後退する。ケーナはそれに合わせて進み、エリシェルを押していく。「ファ...
治癒師と魔剣・本文

DC-18-04:再戦

 エリシェルの赤黒く輝く剣は、イレムの白銀の刃を的確に|往《い》なす。だが、エリシェルの攻撃もまた、イレムには通じない。純粋な戦闘技術という点では、二人は全くの互角だった。常人の目では、その手|捌《さば》き足|捌《さば》きを追うこともできな...
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