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治癒師と魔剣・本文

DC-09-01:五年ぶりの空の下

 ファイラスの仕事はケーナの治療だけではない。日々様々な仕事が降って湧いてくるし、日次でこなしていかなければならないタスクも数多い。神官というのは本来とても忙しい立場なのだ。ましてファイラスは力のある治癒師である。主に多額の寄付を行うことの...
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DC-08-05:人畜無害

 翌朝、ファイラスは諸々の事務仕事を終わらせるなり、幾らかの食料とシーツなどの一式を持って隔離施設へと向った。今日は神殿騎士たちもおらず、ファイラスの単独行動だった。 施設は相変わらず不気味な佇まいだったし、外まで悪臭が漏れ出てくる。この中...
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DC-08-04:癒やしの手

 それから夕暮れ時までかけて、ファイラスは取り憑かれたかのように掃除をした。この部屋は長らく使われていなかったが、それでも酷い汚れだった。ベッドの下や部屋の隅の埃の中には、鼠や虫や何かわからない動物の腐り果てた死骸さえ落ちていた。「修行のお...
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DC-08-03:一人の例外もなく人は救われなければならない

 ファイラスはわずかに眉根を寄せる。「しかし、聖司祭様。この建物はとても癒せる環境であるとは思えません。このままでは――」「ファイラス君」 クォーテルは険しい表情を見せる。「我々は誰も見捨てない。助けられない者などいない。わかるな?」「それ...
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DC-08-02:少女との邂逅

 ファイラスはそれからずっとヴラド・エールの聖神殿で修業の日々を送っていた。神官としての修行の他に、《《治癒師》》として、そして医師としての修練も積み、ゼドレカに剣術も学んだ。ファイラスはどの分野においても卓越した能力を示し、各種試験にも合...
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DC-08-01:ゼドレカという騎士

 ファイラスはアルディエラム中央帝国の帝都から遠く離れた、神殿の一つもない小さな村で生まれた。《《治癒師》》としての能力が確認されたのは八歳の頃。火事で大火傷を負った友人をその力で救ったことが始まりだった。ファイラスはその後も次々と奇跡のよ...
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DC-07-01:剣の在り処

 カヤリの報告を聞きつつ、グラヴァードは天高く流れる星の大河を見上げている。バルコニーに吹き付けてくる風は真夜中の今、少々冷たい。先日エリシェルと一戦交えた城ではなく、ディケンズ辺境伯の本城の一室だ。特殊な結界を張られたこの部屋には、《《誰...
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DC-06-03:心意気

 夕方に差し掛かる前に、ファイラス、ケーナ、そして五十名ばかりの神殿騎士たちは移動を開始しようとした。イレムはそれよりも先に、単身で最前線へと戻っていった。 馬車二台を伴ったファイラスたちの進軍は必然的にゆったりとしたものになる。途中で《《...
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DC-06-02:希望は多いほうが良い、だろ?

 だろ? と、イレムはファイラスの肩に手を置く。ファイラスはその手を緩やかに払い|除《の》ける。「そんなことはない。俺は――」「《《加害者》》になりたくねぇだけだろ」「イレム様! それは言い過ぎです」 ケーナが口を|尖《とが》らせて抗議する...
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DC-06-01:治癒師の役割

 その夜だけで、イレムは三度の襲撃に遭遇した。かつては友軍であった、死セル兵士たちによる襲撃だ。その規模はどれも小規模で、イレムが対処するまでもなく鎮圧されていた。しかし、それでも、兵士たちに夜通しの緊張を強いるのは確実で、実に効果的な攻撃...
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