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治癒師と魔剣・本文

DC-05-02:地獄にも慣れた

 そこでバーツは「そういえば」とイレムを見る。「先程、エウドに神殿騎士が大勢、とのことでしたが。噂では二十年ぶりの《《聖騎士》》誕生か、と言われている御仁が率いておられるとか」「ああ、そうだ。間違いない」 イレムは大きく頷いた。「本人の自覚...
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DC-05-01:最前線の指揮官

 その日の深夜には、イレムは単身で最前線の野営地に姿を見せていた。転移魔法を駆使しての移動であり、かなりの強行軍ではあるはずなのだが、それでもイレムにはまだ余裕があった。 陣地のある小高い丘に登れば、真北にディケンズ辺境伯の出城が見えている...
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DC-04-05:治癒師のエゴ、聖騎士の義務

 最前線に行くとするか――イレムは思案の末にそう言った。「今から?」「ああ。まずは最前線で部隊と合流する。ファイラス、お前も来い」「この街にはまだ大勢の重傷者がいる」 ファイラスの言葉に、イレムは首を振った。「最前線の方をこそ推して知るべし...
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DC-04-04:奥義発動

 イレムの大剣が残像を引く。紅のマントが|翻《ひるがえ》る。「ファイラス様、あれは」「殲撃の一つ。習得できる人間は少ない」 すっかり見物人となってしまった二人である。《《異形》》も攻撃をイレムに集中せざるを得ないようで、ファイラスたちへの攻...
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DC-04-03:ヒーロー登場

 距離を取り、触手をやりすごす。そんなギリギリの戦いをしながらも、ファイラスとケーナはなんとか耐え凌いでいる。かろうじて無傷ではあったが、ふたりとも息が上がっている。これ以上動くのはさすがに厳しい状況だとファイラスは判断する。 しかし、殲撃...
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DC-04-02:薄気味悪い肉の塊

 神殿騎士が異形の襲来を告げるやいなや、ファイラスたちは外に飛び出していた。さっきまであったどんよりとした空気は、いまや絶望の絶叫に取って代わられていた。街の人々はもちろん、負傷兵たちまでが逃げ惑っている。「神殿騎士は各所で治療と避難にあた...
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DC-04-01:前線補給基地エウドの惨状

 なんだこの光景は――。 前線への補給基地となっているエウドという小さな街に到着するなり、ファイラスを含め、誰もが言葉を失った。形ばかりの防壁を抜けた先は、ハエの飛び交う地獄絵図だった。街のいたるところに兵士が転がっていた。歩いている兵士も...
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DC-03-02:超級のバトル

 グラヴァードはまだ武器を抜かない。「もう一度言う。その妖剣を俺に渡せ。それはたとえ《《無制御》》とはいえ、君が扱いきれる代物ではない」「だとしても、貴様に渡すわけにはいかぬ」「君ひとりの問題ではない。何万、あるいは、何十万と人が死ぬ」「貴...
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DC-03-01:世界の敵と妖剣使い

 晩夏の夜風が切れるほどに冷たい。甲冑姿の青年――グラヴァードの白い前髪が、いいように|弄《もてあそ》ばれる。大きな月が低い位置に浮かんでいた。ここはディケンズ辺境伯の出城の一つ。いわば最前線に位置する要塞である。 この広大な領地の|主《あ...
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DC-02-07:焚き火の前で正論を述べる

 それにしても――ケーナは唸りながら馬を進める。「ファイラス様、そもそもギラ騎士団って何をするためにいるんです? 平和な組織とは到底思えないんですけど。大魔導何人もいるんですよね」「国家に所属しない私兵集団、だしな、ギラ騎士団は」 馬車たち...
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