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治癒師と魔剣・本文

DC-12-02:聖魔導戦技

 イレムの殲撃が蝿の巨人の顔面を直撃する。防御力の皆無な蝿の巨人の頭部は、文字通りに肉片と化した。その構成素である腐肉と酸の体液が半径数十メートルに渡って撒き散らされる。兵士たちは早々に距離を取っていたので被害はほとんど出ていないようだった...
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DC-12-01:蝿顔の巨人

 ファイラスたち神殿騎士の到着により、最前線の兵士たちは適切な治療を受けることができるようになっていた。エウドへの後送手段も確立され、多くの負傷者が一命をとりとめた。また、エウドで治療を受けた兵士たちの少なくない数が最前線に戻ることを希望し...
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DC-11-02:執行猶予

 ファイラスと向かい合って座る老人、クォーテル聖司祭は、黙ってファイラスの報告を聞いていた。燭台の炎が、その老人の顔の影をごつごつと浮かび上がらせている。その揺れる影もあって、クォ―テルの表情には闇があった。明るさを含んだ要素の何一つない、...
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DC-11-01:二年後の夜

 それから瞬く間に季節は流れる。ケーナの病状は二年近く現状維持を続けていた。今でも油断をするとすぐに高熱を出すし、ある程度歩けるようになったとはいえ、車椅子も手放せなかった。それでも外に出ていられる時間はだいぶ長くなったのは救いかもしれない...
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DC-10-02:繋がるパーツ

 建物の外に出てしばらく、シャリーは空を見上げて黙っていた。日はすっかり落ち、藍色の空には眩しいほどの星が輝いている。「調査は、正直難航しているわ」「そう、ですか」「神殿の介入でね。もちろん、直接的なものではないにしても、裏で手を引いている...
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DC-10-01:自己評価

 それから三週間が経過した。最初の一週間でシャリーはクォーテル聖司祭に直接交渉を行い、この建物に堂々と出入りする権利を獲得していた。今ではケーナの部屋は十分に清潔になり、簡素な衣装棚や机や椅子などの什器が揃えられるに至っていた。ケーナ用の車...
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DC-09-05:シャリーの推理

 《《魔神》》――シャリーの言葉にファイラスは目を見開く。「魔神……というと、創世の神話に出てくる、あの?」「そう、そのうちの一柱。私もかつて魔神と戦ったことがあるけど、人間だけでは到底勝ち目なんてなかった」「それ、初耳です。それに人間だけ...
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DC-09-04:魔神の呪い

 ファイラスがケーナを車椅子に乗せて建物の外に出ると、そこには馬車がニ台いた。一台は例の食事配達係の一頭立ての小さな二輪荷馬車で、もう一台は二頭立ての四輪の荷馬車だった。こちらの馬車の側面には大きく錬金術師ギルドのマークが刻まれ、その下には...
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DC-09-03:赤い目の黒い蛇

 怒りと無力感に|苛《さいな》まれながら、水桶を手に建物に戻ったファイラスは、ベッドの上で震えているケーナを発見する。ケーナは怯えたような顔でファイラスを見る。「あの人たちの声、聞いたことがある。ここから乱暴に人を連れ出す人たち」「頻繁に来...
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DC-09-02:バレス高司祭

 やはりこいつ……。 ファイラスは建物から出るなり渋面になる。豪華な馬車に乗っていたのは、クォーテル聖司祭と対立するバレス高司祭だった。高潔なクォーテルとは違い、どんな手段を使ってでも権力を取りに行くタイプの男で、そのなりふり構わぬやりくち...
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