短編・本文 プライマリ・カラーズ 人間とは何なのか。多くの学者たちがその問いを残し、主張を残し、結局の所答えには辿り着けぬまま、紙媒体と歴史の中に消えていった。私はそれらの|遺物《きろく》を幾冊も紐解き、その謎を解き明かすことに成功した。私の内に積み上げられた情報が、一気... 2022.10.26 短編・本文
短編・本文 ピザとコーラと白昼夢 キリストが生まれて死んで、それから二千数百年が経った頃。今ではもはや|A.D.《西暦》なんて表現はもう陳腐で、日本国に於ける元号よりもその存在価値を失っていた。誰もA.D.XXXX、などという表現をすることはない。ただ、古典を紐解くのには... 2022.10.26 短編・本文
短編・本文 光の瀑布 海の音は静かに繰り返す。風が蹴立てた痕が白く浮かぶ。岸に叩きつけられた波が砂の凹凸に毛羽立っては、たまらず逃げていく。そんな真夏の昼下がり、海から寄せる大気は何故かとても冷たく、笠矢律子は白い外套の襟にそっと手をやった。裸の手の甲がかじか... 2022.10.25 短編・本文
短編・本文 ブライトワルト ほら見てみて――言われて、僕は空を|仰《あお》ぎ見る。僕たちがいるのは、闇の中に沈む森。|鬱蒼《うっそう》たる夏の樹葉が藍色の空を翳らせている。湿り気を帯びた大気の向こうに、|燦然《さんぜん》たる巨大な輝きがちらちらと揺れていた。「あれは... 2022.10.25 短編・本文
魔女のオラトリオ・短編 ある剣の追想 -07.ブルーオパール 「魔女のオラトリオ」関連短編――。前話 あの後、私は首尾よく少年と再び出会うことができた。というより、そうでなければこの少年は助からなかっただろう。なに、少しだけ私の力を分け与えただけだ。彼が切り殺してきた兵士たちの生命のほんの何割かを少年... 2022.02.11 魔女のオラトリオ・短編
魔女のオラトリオ・短編 ある剣の追想 -06.少年 「魔女のオラトリオ」関連短編――。前話 あの魔女がこの世界から消えてから、いったいい何年が|経《た》ったのか。とはいえ、私はそんなことには興味もなかったが、あれだけの被害を受けた王国は|未《いま》だ存続しているようだった。だが、どうやら相変... 2022.02.10 魔女のオラトリオ・短編
魔女のオラトリオ・短編 ある剣の追想 -05.女公爵 「魔女のオラトリオ」関連短編――。前話 この魔女の少女は、女公爵エリザ・レヴァティンと名乗った。そして自分は至高の魔女なのだ、とも。彼女は私を手に入れてからというもの、連日連夜人を殺した。エリザの宮殿を訪れた旅人、メイド、将軍や若い兵士、自... 2022.02.09 魔女のオラトリオ・短編
魔女のオラトリオ・短編 ある剣の追想 -04.魔女の少女 「魔女のオラトリオ」関連短編――。前話 いくつかの時代を経て、再び目を覚ました私は、|仄《ほの》暗い場所に安置されていた。さながら高貴な身分の者の遺体のように。私の意識が何かで遮断されている。……魔法か。そう察知するのにそれほど時間はかから... 2022.02.08 魔女のオラトリオ・短編
魔女のオラトリオ・短編 ある剣の追想 -03.異民族の王 「魔女のオラトリオ」関連短編――。前話 次に私が目覚めたのは、その王国が滅び、次の王国も異民族に侵略されて滅んだ後だった。人の血生臭い営みが、私を目覚めさせるらしい。異民族の王は厳重に封印を施された私を見つけるなり、滅ぼした王国の重鎮たちを... 2022.02.07 魔女のオラトリオ・短編
魔女のオラトリオ・短編 ある剣の追想 -02.貴族 「魔女のオラトリオ」関連短編――。前話 鍛冶師の次に私を手にしたのは、王国の有力貴族だった。王国といっても、今の王国が成立するよりもずっと以前の話だ。当時は今からは想像もつかぬほどの戦乱の世、まさに群雄割拠の時代だった。その貴族は私を王国の... 2022.02.05 魔女のオラトリオ・短編