KenIsshiki

美味兎屋・本文

濡レ雑巾ノマス秤 第壱話

 また深夜残業だよ。月の半分以上は終電を逃がす。 いい加減うんざりだ。世の中は不景気だ。ボーナスだって貰えない。そのくせ公務員様は、普通の企業の三倍も四倍ももらっていやがる。赤字を抱えたって誰一人クビにならないし、我々庶民に何を言われたって...
魔女のオラトリオ・短編

ある剣の追想 -07.ブルーオパール

「魔女のオラトリオ」関連短編――。前話 あの後、私は首尾よく少年と再び出会うことができた。というより、そうでなければこの少年は助からなかっただろう。なに、少しだけ私の力を分け与えただけだ。彼が切り殺してきた兵士たちの生命のほんの何割かを少年...
魔女のオラトリオ・短編

ある剣の追想 -06.少年

「魔女のオラトリオ」関連短編――。前話 あの魔女がこの世界から消えてから、いったいい何年が|経《た》ったのか。とはいえ、私はそんなことには興味もなかったが、あれだけの被害を受けた王国は|未《いま》だ存続しているようだった。だが、どうやら相変...
魔女のオラトリオ・短編

ある剣の追想 -05.女公爵

「魔女のオラトリオ」関連短編――。前話 この魔女の少女は、女公爵エリザ・レヴァティンと名乗った。そして自分は至高の魔女なのだ、とも。彼女は私を手に入れてからというもの、連日連夜人を殺した。エリザの宮殿を訪れた旅人、メイド、将軍や若い兵士、自...
魔女のオラトリオ・短編

ある剣の追想 -04.魔女の少女

「魔女のオラトリオ」関連短編――。前話 いくつかの時代を経て、再び目を覚ました私は、|仄《ほの》暗い場所に安置されていた。さながら高貴な身分の者の遺体のように。私の意識が何かで遮断されている。……魔法か。そう察知するのにそれほど時間はかから...
魔女のオラトリオ・短編

ある剣の追想 -03.異民族の王

「魔女のオラトリオ」関連短編――。前話 次に私が目覚めたのは、その王国が滅び、次の王国も異民族に侵略されて滅んだ後だった。人の血生臭い営みが、私を目覚めさせるらしい。異民族の王は厳重に封印を施された私を見つけるなり、滅ぼした王国の重鎮たちを...
魔女のオラトリオ・短編

ある剣の追想 -02.貴族

「魔女のオラトリオ」関連短編――。前話 鍛冶師の次に私を手にしたのは、王国の有力貴族だった。王国といっても、今の王国が成立するよりもずっと以前の話だ。当時は今からは想像もつかぬほどの戦乱の世、まさに群雄割拠の時代だった。その貴族は私を王国の...
魔女のオラトリオ・短編

ある剣の追想 -01.鍛冶師

「魔女のオラトリオ」関連短編――。 今となっては遠い昔。思い出そうとするだけでも|意識《め》が|眩《くら》む。それほどに遠い昔。 私はある鍛冶師によって生み出された。この世で最も硬い金属、|白銀鋼《しらがねはがね》と呼ばれる特殊な鉱石で作ら...
美味兎屋・本文

匣カラ出タ星 第参話

承前 中は思った以上に広かったが、雑然ともしていた。所狭しと様々なジャンルの物体が並んでいる。アンティーク、電気製品(電卓から洗濯機まで!)、文房具に絆創膏、妙にリアルな人形から某社のマスコットたちまで。しかし、どれにも言える事だが、可愛い...
美味兎屋・本文

匣カラ出タ星 第弐話

承前 私はどこから見ても、決して格好の良い父親ではない。気の利いたことも言えない。娘の悲しみを理解しきれていない気がする、どうしようもなく無感動な父親だ。感情よりも、理性とやらの皮を被った理屈のほうが先に行ってしまう。「コンビニで何か買って...
スポンサーリンク