治癒師と魔剣・本文 DC-03-01:世界の敵と妖剣使い 晩夏の夜風が切れるほどに冷たい。甲冑姿の青年――グラヴァードの白い前髪が、いいように|弄《もてあそ》ばれる。大きな月が低い位置に浮かんでいた。ここはディケンズ辺境伯の出城の一つ。いわば最前線に位置する要塞である。 この広大な領地の|主《あ... 2022.11.26 治癒師と魔剣・本文
治癒師と魔剣・本文 DC-02-07:焚き火の前で正論を述べる それにしても――ケーナは唸りながら馬を進める。「ファイラス様、そもそもギラ騎士団って何をするためにいるんです? 平和な組織とは到底思えないんですけど。大魔導何人もいるんですよね」「国家に所属しない私兵集団、だしな、ギラ騎士団は」 馬車たち... 2022.11.25 治癒師と魔剣・本文
治癒師と魔剣・本文 DC-02-06:陣魔法 そして――。「|紫氷陣《エルヴェル・ヅォーネ》」 そう呟くと、暗黒の女性は突き出した腕を一気に振り抜いた。「無詠唱で|陣魔法《ヅォーネ》!?」 ファイラスの驚愕の声は、耳をつんざく大音量に潰される。衝撃波を伴う音の津波を前に、ファイラスた... 2022.11.24 治癒師と魔剣・本文
治癒師と魔剣・本文 DC-02-05:肉塊の異形 なんて化け物! ケーナは見る間に巨大化していく肉塊を振り返って舌打ちする。恐怖そのものよりも、生理的嫌悪感が先に立つ。馬車を先に逃し、ケーナとファイラス、そして数名の神殿騎士が|最後尾《しんがり》を務める。「これは食い止めるのは不可能だ。... 2022.11.23 治癒師と魔剣・本文
治癒師と魔剣・本文 DC-02-04:声と恐慌 わかりましたと、ケーナは折れる。生き残った脱走兵たちは残らず縛り上げられ、地面に座らされている。輸送しようにも、馬車は負傷した神殿騎士たちで満員だ。脱走兵たちは歩かせるしかない。しかし、歩けないほどの負傷者もいる。 ファイラスと神殿騎士た... 2022.11.22 治癒師と魔剣・本文
治癒師と魔剣・本文 DC-02-03:躊躇なき一撃 動揺したのは騎士ばかりではない。ファイラスもまた、不意に高まった魔力の濃度にあてられて、集中を乱されていた。そして立ち直ったのは騎士の方が早かった。大剣を拾い上げると、そのままファイラスを横|薙《な》ぎにしようとする。「!?」 大剣の刃が... 2022.11.21 治癒師と魔剣・本文
治癒師と魔剣・本文 DC-02-02:森の中での戦い たちまちの内に木々に囲まれた一本道での撃剣が始まる。馬車がすれ違える程度の道幅で、逃げ道がない。弓を持つ脱走兵は数名程度だったが、それでも被害は少なくない。兵士たちはよく統率されていた。「こちらも行くぞ!」 騎士が大剣を打ち下ろしてくる。... 2022.11.20 治癒師と魔剣・本文
治癒師と魔剣・本文 DC-02-01:脱走兵との遭遇戦 その翌日、ファイラスたちは早々に出発した。夜間には幸いにして襲撃はなかった。だが、神殿騎士たちの疲労やストレスは、初戦でもはやピークを迎えていた。この先どんな障害が待ち受けているのかと想像すれば、その状態もやむを得ない。ファイラスは出現し... 2022.11.19 治癒師と魔剣・本文
治癒師と魔剣・本文 DC-01-05:試作品五十五号 薄暮の頃とは打って変わって、穏やかな晩夏の夜だった。神殿騎士たちは隊ごとに集まり、焚き火を囲んでいる。その顔には疲労と緊張がありありと浮かび、とても休めているようには見えなかった。あれだけの死セル兵士たちを見せつけられたのだ、致し方ない。... 2022.11.18 治癒師と魔剣・本文
治癒師と魔剣・本文 DC-01-04:白骨剣士との戦い なおも群れてくる死セル兵士たち。それぞれの戦闘力はたいしたことがない。だが、数が数だ。一人で五体、あるいは六体との同時戦闘を強いられる。しかも相手は力加減を知らない。一撃でも食らえば致命傷だ。そのうえ、倒しても倒しても新手が加わってくる。... 2022.11.17 治癒師と魔剣・本文