治癒師と魔剣

治癒師と魔剣・本文

DC-11-02:執行猶予

 ファイラスと向かい合って座る老人、クォーテル聖司祭は、黙ってファイラスの報告を聞いていた。燭台の炎が、その老人の顔の影をごつごつと浮かび上がらせている。その揺れる影もあって、クォ―テルの表情には闇があった。明るさを含んだ要素の何一つない、...
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DC-11-01:二年後の夜

 それから瞬く間に季節は流れる。ケーナの病状は二年近く現状維持を続けていた。今でも油断をするとすぐに高熱を出すし、ある程度歩けるようになったとはいえ、車椅子も手放せなかった。それでも外に出ていられる時間はだいぶ長くなったのは救いかもしれない...
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DC-10-02:繋がるパーツ

 建物の外に出てしばらく、シャリーは空を見上げて黙っていた。日はすっかり落ち、藍色の空には眩しいほどの星が輝いている。「調査は、正直難航しているわ」「そう、ですか」「神殿の介入でね。もちろん、直接的なものではないにしても、裏で手を引いている...
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DC-10-01:自己評価

 それから三週間が経過した。最初の一週間でシャリーはクォーテル聖司祭に直接交渉を行い、この建物に堂々と出入りする権利を獲得していた。今ではケーナの部屋は十分に清潔になり、簡素な衣装棚や机や椅子などの什器が揃えられるに至っていた。ケーナ用の車...
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DC-09-05:シャリーの推理

 《《魔神》》――シャリーの言葉にファイラスは目を見開く。「魔神……というと、創世の神話に出てくる、あの?」「そう、そのうちの一柱。私もかつて魔神と戦ったことがあるけど、人間だけでは到底勝ち目なんてなかった」「それ、初耳です。それに人間だけ...
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DC-09-04:魔神の呪い

 ファイラスがケーナを車椅子に乗せて建物の外に出ると、そこには馬車がニ台いた。一台は例の食事配達係の一頭立ての小さな二輪荷馬車で、もう一台は二頭立ての四輪の荷馬車だった。こちらの馬車の側面には大きく錬金術師ギルドのマークが刻まれ、その下には...
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DC-09-03:赤い目の黒い蛇

 怒りと無力感に|苛《さいな》まれながら、水桶を手に建物に戻ったファイラスは、ベッドの上で震えているケーナを発見する。ケーナは怯えたような顔でファイラスを見る。「あの人たちの声、聞いたことがある。ここから乱暴に人を連れ出す人たち」「頻繁に来...
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DC-09-02:バレス高司祭

 やはりこいつ……。 ファイラスは建物から出るなり渋面になる。豪華な馬車に乗っていたのは、クォーテル聖司祭と対立するバレス高司祭だった。高潔なクォーテルとは違い、どんな手段を使ってでも権力を取りに行くタイプの男で、そのなりふり構わぬやりくち...
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DC-09-01:五年ぶりの空の下

 ファイラスの仕事はケーナの治療だけではない。日々様々な仕事が降って湧いてくるし、日次でこなしていかなければならないタスクも数多い。神官というのは本来とても忙しい立場なのだ。ましてファイラスは力のある治癒師である。主に多額の寄付を行うことの...
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DC-08-05:人畜無害

 翌朝、ファイラスは諸々の事務仕事を終わらせるなり、幾らかの食料とシーツなどの一式を持って隔離施設へと向った。今日は神殿騎士たちもおらず、ファイラスの単独行動だった。 施設は相変わらず不気味な佇まいだったし、外まで悪臭が漏れ出てくる。この中...
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