治癒師と魔剣

治癒師と魔剣・本文

DC-99-99:治癒師と魔剣

 クォーテルの亡骸に祈りを捧げていたファイラスの眼前に、いきなり抜き身の剣が現れた。見事な柄飾りの施された漆黒の長剣である。その剣の持ち主は、暗黒の大魔導、カヤリだった。「これは?」「受け取れ」 半ば強制的にその剣を持たされたファイラスは、...
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DC-19-03:無制御と魔神

 グラヴァードは自らが構築した氷壁の結界の中に、魔神ウルテラと共に浮かんでいた。地面も空もないこの結界の内側では、双方ともに自由に動き回ることは難しい。その上、外界への影響力もほとんど及ぼすことができない。グラヴァードは抜身の剣を下げたまま...
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DC-19-02:成敗

 イレムの纏っている威圧感は凄まじいものがあった。その眼力に、さしものバレスも身が|竦《すく》んだ。しかしそれでもなんとか机の後ろに逃げ込む。クォーテルの死体を踏みつけながら。「|神帝師団《アイディー》の一人として、この事態は看過できやしね...
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DC-19-01:罪咎の源泉

 ディケンズ領の領民および兵士たちは約百万にもなる。その尽くが数時間のうちに消えた。しかし、対価としてはまだ足りぬ――魔神ウルテラはそう言ったというのか。 クォーテルは応接用ソファに腰を下ろしているバレス高司祭を睨む。「百万だぞ、バレス高司...
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DC-18-06:魔神光臨

 空は一面の白だった。白い空が|罅《ひび》割れ、その亀裂からは赤い光が漏れ出ていた。凶々しいとも神々しいとも言えない。だが、畏怖すべきものであることは確かだった。ファイラスもイレムも言葉もなくただ空を見上げている。 その空の下で、ケーナとエ...
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DC-18-05:タイムリミット

 その瞬間、夜の闇が駆逐された。それほどの光が空を焼いた。「させません!」 ケーナがエリシェルの剣を受け止め、弾いた。完全に虚をつかれたこともあり、エリシェルはやむなく二歩後退する。ケーナはそれに合わせて進み、エリシェルを押していく。「ファ...
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DC-18-04:再戦

 エリシェルの赤黒く輝く剣は、イレムの白銀の刃を的確に|往《い》なす。だが、エリシェルの攻撃もまた、イレムには通じない。純粋な戦闘技術という点では、二人は全くの互角だった。常人の目では、その手|捌《さば》き足|捌《さば》きを追うこともできな...
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DC-18-03:斬り込み

 イレムはファイラスとケーナを従えて、ひたすらに突き進む。敵の抵抗はもはや微弱だった。思い出したように矢が飛んでくるが、そんなものは不可視の防御壁で守られたイレムたちには通用するはずもない。大型の攻城兵器も持ち出されてきたが、それらはすべて...
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DC-18-02:見物席

 |神帝師団《アイディー》はたったの一騎で本陣を潰す――なるほどな。 眼下で大殺戮劇を繰り広げている騎士を見て、バルコニーに立つグラヴァードは少しだけ表情を緩めた。隣で興味深げに下界を覗き込んでいるカヤリを伺うと、カヤリは呆れたように肩を|...
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DC-18-01:俺が勝つと言ったら勝つ

 帝国軍の本陣は、もはや百人にも満たない規模にまで縮小していた。負傷者を尽くエウド、或いはそれ以南の都市へと送ったためである。後送された負傷者たちの多くは、物資の流通に携わる。それにより、戦で滞っていた輸送経路が復活し、必要な医薬品や食料の...
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